平成もあと1か月。新元号が「令和」と発表されたきょう4月1日、東京・浅草の靴クリーム・用品メーカー本社内には、シュッシュッシュッと靴をみがく音―――。
あのコロンブスで47回続く、靴みがき入社式。
1919(大正8)年創業、ことし創業100周年をむかえるコロンブスに入社する新人は3人。
新卒入社は松尾茜音さん。「大学で化学を専攻し、大学院ではなく民間企業の研究開発分野で活躍できる場を探していた。コロンブスでは松戸LABOの研究開発部門に就く」という。
そして、中途入社は山田瑛人さん(製造部門配属)と、山田浩彦さん(営業部門配属)。3人は、コロンブスの「1日に2度ある入社式」の1回め、2019年度入社式にいどみ、昨年8月に就任した服部暁人代表取締役から訓示を受けると、いよいよ……。
平成最後の靴みがき入社式は、平成づくし
来月から新元号 令和。「平成最後の靴みがき」にいどむ新人3人を待ち構えているのは、なんと平成元年入社の先輩社員たち。
平成最後の入社組が、平成元年入社の先輩社員と、互いに靴をみがきあう。
「お父さんの靴しかみたいがことがない。履いたままで他人の靴をみがくのは、きょうが初めて」という松尾さんは、平成元年入社、つまり入社30年というベテラン女性社員とまずは握手。やっと緊張がほどけてきたところで……。
先輩から新人へ、新人から先輩へ……互いの想いがシュッシュッシュッ
松戸の製造・仕上げ部門に勤める中島さんは、緊張する松尾さんの靴を、雑談を交えながらみがいていく。
「わたしも30年前に、この靴みがき入社式を経験して、いまこうして新人の靴をみがいていたら、あのときの緊張がよみがえった」
「実は初めて、先輩側で靴みがき入社式に参加した。『もうコロンブスに勤めて30年が経つのか』という想いと、同じ会社に入ってきてくれた新人にエールを送りたいという気持ちで、忘れられない一日になった」(中島さん)
平成最後の靴みがき締めでもあり、令和への靴みがき初め
中島さんの30年というキャリアが伝わる靴みがきを体験した新人・松尾さんは、「靴をみがいてもらっているとき、『30年間、一生けん命、仕事してきたんだろうな』って感じました」としみじみ。「この初心を忘れず、これからがんばりたい」と、松尾さんは前をむく。
そして現場にいた社員のこんな言葉に、ブラジルのギタリスト、トニーニョ・オルタの名曲「僕らの終わりはただの始まりだった」というタイトルが、なんとなく重なる……。
「きょうは、平成最後の靴みがき締めでもあるし、令和への靴みがき初めでもある」
―――大正時代に産声をあげた老舗靴用品メーカーが、令和という新しい時代にむけて、走り始めた。