「アホらしくなったらやめる。これが普通」
「でもやめられない。やめたいという思いと、やり続けたいという思いが衝突している」
「前日(前回)の損失を取り戻すために、また勝負する。これは依存症」
―――ギャンブル依存症をどう理解し、どう医療が介入していくか。
5月14~20日は、ギャンブル等依存症問題啓発週間。
競馬、競輪、ボートレース、オートレースといった公営競技の全国公営競技施行者連絡協議会は5月17日、東洋大学 白山キャンパスで「ギャンブル依存症」についての特別セミナーを開催。
同セミナーには、日本中央競馬会総合企画部経営企画室 木村幸樹氏や、精神科専門医の河本泰信医師(よしの病院 副院長)らが登壇し、「ギャンブル等依存症の理解と対応」などについて講義。
東洋大学の学生ら257人が、ギャンブル依存症の現実と課題、治療にむけた取り組みについて聞き入った。
河本医師はまず、依存症へとむかうきっかけについて「本来の欲求とは別の欲求が横から入ってくると、制御できなくなってくる」と説明し、ギャンブル依存症の人たちの共通する考え方についてこう伝えていた。
「前日(前回)の損失を取り戻すために、またギャンブルで取り戻そうとする。アホらしいと思ってやめるのが普通だけど、やめられない。やめたいという思いと、やり続けたいという思いが衝突している」
こうした状態を「両価性」といい、ギャンブル依存症の人たちは「負けた(損失した)あと、おいしいものを食べていればよかったと思う」「負けた(損失した)あと大事な人の交際費にあてればよかった」と思ったりするという。
ギャンブル依存症に、医療がどう介入できるか
河本医師は、ギャンブル依存に医療が介入するには7つの仮説があるという。
医療の分野では、認知、欲望、疾患、力動、環境の5つのモデル。非医療分野としては、道徳、宗教という2つのモデル。
そのなかでも、今回のセミナーでは欲望モデルに着目。まず、「なぜ損失を出しながらまたギャンブルで取り戻そうとするか」といった、戦略の矛盾を指摘。
そして、ギャンブルの何が魅力か? といった隠れた欲望を探り、最も直接的な満足したい行為を探すといったプロセスを経て、代替行動による充足感を満たしていく……と。
河本医師は最後に、「ギャンブル依存症で困ったときは、無料相談 ヘルプラインや、公営競技ギャンブル依存症カウンセリングセンターの専門スタッフ(臨床心理士)によるカウンセリングを受けてみて」と伝えていた。
―――新生活がはじまるこの時期。消費者庁、内閣官房、金融庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の8省庁などは合同で、「投資などの勧誘には慎重に」「キャッシュレス決済を適切に」「ギャンブル依存症に陥らないように自制を」などを呼びかけている。
<全国公営競技施行者連絡協議会>
http://www.koeikyogi.jp/