動物との共生によってヒト(人類)の健康が得られるのか。
あらためて人間をとらえ直し、細菌叢、共生、免疫という切り口で、動物と人間の関係性をみつめなおす―――。
獣医・動物・健康・食品・環境の領域を研究する麻布大学は、2019年7月29日に同大学初の国際シンポジウムを開催。
文部科学省私立大学研究ブランディング事業「動物共生科学の創生による、ヒト健康社会の実現」をテーマに、午前は麻布大学の教授陣による研究レポート、午後は海外からの招待講演(英語セッション)などが行われ、500人を超える学生・一般市民らが聴講した。
午前の部は、同大獣医学部(微生物学第一研究室、ブランディング事業副統括者)阪口雅弘教授が司会を務め、麻布大学 獣医学部(野生動物学研究室)南正人准教授「野生動物の資源化・有効活用による共生システム構築のための微生物研究」、同 獣医学部(病理学研究室)上家潤一准教授「比較病理学から考えるAAアミロイド症研究」、同 生命・環境科学部(環境衛生学研究室)関本征史准教授「ペットフードから変異原が検出される?コンパニオンアニマルの発がんとの関わりを探る」、同 獣医学部(伴侶動物学研究室)茂木一孝准教授「犬との共生は細菌叢を介してヒトのメンタルヘルスを促進している?」の4講演を実施。
講演は、阪口雅弘教授の司会によって進行。各講演後には、発表者者に熱心に質問する聴講者の姿があった。
南准教授らによる研究チームは、長野県小諸市の野生動物捕獲・有効利用プロジェクトに参画し、麻布大学 微生物研究チームの知見も活かした新たな野生鳥獣管理システムの支援を紹介した。
上家潤一准教授らは、動物と人間の病気の違いを探る比較病理学の視点から、ナイロン似の線維状の異常蛋白質が全身のさまざまな臓器に沈着し機能障害をおこすアミロイド症についての研究成果を紹介。
また関本征史准教授らは、「イヌは発がん物質に対する感受性がヒトと類似してるのでは」という仮説をたて、「ペットフードに含まれる変異原性物質の定量」「動物種間での発がん感受性の検討」「異物代謝酵素の遺伝子多型とがん発症の相関解析」などを研究していることを伝えた。
さらに茂木一孝准教授らは、思春期児童の心の発達とイヌ飼育との関係を調査。人間の糖尿病や肥満、社会的行動にまで影響するといわれる細菌叢(最近の集合)に着目し、「イヌの飼育経験が児童のメンタルヘルスに関連することを見出しつつある」と報告した。
「動物との共生がもたらすヒトの心身の健康」を探求
また午後の部は、国内の先端科学者や海外の著名な研究者を招いての招待講演を英語セッションで実施。
午後の講演では、同大獣医学部(介在動物学研究室、ブランディング事業統括者)菊水健史教授が司会を務め、東京都医学総合研究所 心の健康プロジェクト 西田淳志プロジェクトリーダー、カナダ マックマスター大学 Paul Forsythe 氏、アメリカ テキサス大学 医学部 Shelly A. Buffington 氏、理化学研究所 生命医科学研究センター 粘膜システム研究チーム 大野博司リーダーの講演を案内した。
―――麻布大学は今後、全2学部5学科の全学連携による「動物との共生がもたらすヒトの心身の健康」をテーマにした先進的な研究を推進し、その研究成果を社会に還元していくという。
麻布大学 浅利昌男学長
麻布大学 獣医学部 阪口雅弘教授 ブランディング事業副統括者
麻布大学 獣医学部 南正人准教授
麻布大学 獣医学部 上家潤一准教授
麻布大学 生命・環境科学部 関本征史准教授
麻布大学 獣医学部 茂木一孝准教授
麻布大学 獣医学部 菊水健史教授 ブランディング事業統括者
東京都医学総合研究所 西田淳志プロジェクトリーダー
マックマスター大学 Paul Forsythe 氏
テキサス大学 医学部 Shelly A. Buffington 氏
理化学研究所 大野博司リーダー