1年次後期から研究に参画できるプログラムを、国内のどこの大学よりもいち早く導入した麻布大学。

麻布大学 獣医学部 動物応用学科で、ことし9月から始まった「実践的ジェネラリスト育成研究プログラム」には、23人の1年生が参画の意思表示を示し、前期の成績など一定の条件をパスした14人が同研究プログラムに合流。大学に入ってまだ半年という1年生が、担当教官のもとで研究活動に取り組んでいる。
その14名の学生中、12名の女子学生が選ばれている。

これは、授業時間以外の時間で、しかも単位が得られない専門研究分野に。同研究プログラムに参画する1年生は、どんな想いで研究室の門を叩いたか。どんな気づきや発見、将来像が描かれ始めたか。バイトやサークル活動と両立はできるのか―――。

獣医学部 動物応用学科の1年生女子ふたりに聞いてみた。

将来は警察犬の訓練士、バイトやサークル活動とも両立できる

「イヌのネオテニー様行動と内分泌の関連」という研究分野に1年次後期から飛び込んだのは、Iさん。

「もともと『犬の行動学』を学びたいと思い、犬の専門研究がある麻布大学に入学を決めました。1年次から研究に関われるという期待でこのプログラムに参加しましたが、正直、思ってたより、たいへん(笑)」

「でも菊水先生などから『新しい発見は、研究に関わる人が第一発見者になるんだよって』ってメールが届いて、励みになります。将来、警察犬の訓練士になりたいので、その訓練学校に進学するか、いまいる麻布大学の大学院に行くかは、今後の研究成果などをみて決めたいと思います」

―――ここで麻布大学「実践的ジェネラリスト育成研究プログラム」のユニークな点をひとつ。同研究プログラムに参画した学生は、大学院修士課程を5年間(修士2年を1年に短縮)で修了することも可能となり、これにより実践力、応用力のある学生を早期に社会に送り出し活躍させるというビジョンがある。

「いま関わっている研究は、未知の世界ばかり。自分が『大学でもっと研究したい』と思っていた環境が、麻布大にはある。すごくありがたいです。もっと深く知りたいなと思っています」

「実際に研究室に入って先輩たちの活動を目の当たりにしていると、小さなひとつの事象に1年も2年もかけて深く突き詰めるという姿勢を目の当たりにし、いろいろなアプローチと視点、研究に取り組む姿勢などを学んでいます」

―――具体的には、どんな研究の時間を過ごしているか。

「1週間に3回、授業が始まる前の8~9時に、朝ゼミで先輩が論文を日本語で発表する時間があります。あと週1・2回、授業後に自分の空いてる時間を先生に伝えて動画解析やホルモンなどの測定の練習をしています。だから、バイトやサークル活動とも両立できています」

「最近、『うわーっおもしろい!』って感じたのは、『ラットと人が隠れんぼする』という内容の英語論文。ラットが人の気配を感じて隠れて、それでも人に見つけられてしまうと、こんどは見つけられたくて違うところに隠れる……という習性があることが記されていました。ラットにも感情があるんだって思って、わくわくしました」

―――彼女は「同じ研究室に入りたい」という高校の後輩を応援。その後輩も麻布大学に入学を決めたとか。「動物と触れ合って勉強したい」という共通の想いが実を結び、こんどは大学でまた好きなことに打ち込む時間を共有する―――。

1年次から学会へ、鳥類研究の最先端を日々体感!

次は、「求愛発声を解析しよう」というテーマのHさん。

「わたしは鳥が大好きで、麻布大学に入学しました。鳥類研究の第一人者 戸張靖子先生といっしょに早く研究したいという想いから、この「実践的ジェネラリスト育成研究プログラム」に参画しました」

「幼いころから身近にいた鳥が好きだったのと、鳥の行動学や相手の声を覚えたり、父親のさえずりを学習するといった鳥類それぞれにある独自の求愛発声に興味があったことから、この「求愛発声を解析しよう」プロジェクトを選びました」

「いま、戸張先生や先輩たちに教えてもらいながら、研究に関わっている毎日です。このプロジェクトを通して、音声解析ソフトを使用する技術や研究者としての基本的なスキルを身につけていきたいです」

―――具体的には、どんな研究の時間を過ごしているか。

「月曜日の14時から、研究室で1時間のミーティングがあります。そこで先週までの音声解析成果を報告します。その後には鶏舎でうずらとキンカチョウの掃除を1時間、先輩といっしょにやります」

「この、うずらの音声解析も、地道な作業が続きます。単調な作業にみえて、研究者それぞれに視点やアプローチ方法が違って、刺激になります。そのうえで、ゴールがいっしょになるとき、地道にコツコツと研究を重ねて成果が出るときに、このプログラムに参画してよかったって実感します」

―――この研究プログラムに参画していると、1年次から学会へ参加するチャンスもあるというからびっくり。

「先日、鳥の学会に参加しました。1年生はわたしだけでした。そこで、ひよこの刷り込み行動について研究している内容が発表されました。ひよこは親を追いかける日にちが決まっていて、その間に親鳥を見つけられないと、その後、親鳥に愛情がわかないことがわかりました。たとえば、親鳥を追いかけたりもしない」

「こうした事実は、人間の親と子、幼児虐待といった課題解決にも応用できるんじゃないか」――――そんな期待を抱く彼女も、大学院修士への最短距離を走るかどうか、この研究プログラムで自分を試して決めるという。

―――いよいよ動き出した、1年次から研究に参画できる麻布大学「実践的ジェネラリスト育成研究プログラム」。研究員としての彼女たちの姿は、2020年3月のオープンキャンパスで垣間見れるというから、気になる人は公式ホームページをチェックしてみて。

麻布大学 動物応用科学科
実践的ジェネラリスト育成研究プログラム
https://sites.google.com/view/azabugeneralistprogram/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0

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