水だけを排出して走るホンダ「クラリティ フューエル セル」やトヨタ「ミライ」「FCバスSORA」―――これらぜんぶ、水素エネルギーで駆動するクルマ・バスたち。
いま、クルマだけでなく一般家庭から産業コンビナートまで、低炭素化と循環型社会にむけて水素エネルギーが注目されている。
日本の水素年間需要は、2017年 200トンから、2020年には4000トンに拡大すると予測。また2030年には30万トンまで増加し、長期的には年間500~1000万トンまで拡大する見通し(経済産業省2017年試算)。
エネルギー総合工学研究所(IAE)は国内水素需要について、2050年には5300万石油換算トン(toe)、一次エネルギー供給の13%を占めると予測している。
こうした背景のなか、ドイツ ベルリンに本社をおき、高効率の水電解水素製造装置を設計・製造しているエナプターは、同社が特許を有する陰イオン交換膜(AEM)式水電解装置の最新モデル『EL 2.1』を「水素・燃料電池展 FC EXPO」(2月26~28日 東京ビッグサイト)で発表した。
最新EMSを実装した「EL 2.1」 小型化・最適化を実現
この陰イオン交換膜(AEM)式水電解装置 最新モデル『EL 2.1』は、1年前に投入された初代モデルの後継モデル。消費エネルギーは従来比8%削減、デザインを大幅改良し小型化を実現。設置スペースは従来比で20%も縮小できた。
標準的・拡張可能・フレキシブルな水電解装置を通じた独自水素製造システムを採用するエナプター陰イオン交換膜(AEM)式水電解装置 最新モデル『EL 2.1』は、大幅な小型化で、エネルギー貯蔵や「Power to X」(電力の燃料化)、補給、産業向けなどあらゆる分野のシステム構築で、モジュール式水電解装置が展開可能に。
動作・待機時の消費電力も削減し、エネルギー効率やコストパフォーマンスが向上。さまざまな顧客のニーズに対応し、ソリューションを実現させるモデルへと進化した。
また「EL 2.1」は、ソフトウェア制御によるエネルギーマネジメントシステム(EMS)の最新バージョンをデフォルトで搭載。モジュール統合をさらに簡素化・迅速化する EMS が実装されていることから、あらゆるシステム構築で水電解装置を組み込むことが可能に。
同EMSは、エナプター専用クラウド「Enapter Cloud」を通じて産業グレードのセキュリティを実装。より高度なコネクティビティ・データ解析力・フロー管理で、エネルギーシステムの効率性・信頼性・継続性を向上させる。
WEBサイトやモバイルでチェックできるダッシュボードは、水電解水素製造装置の監視・制御だけでなく、エネルギーシステムの総合的なデータ解析にも対応。
このEMSで、水素製造システムのエネルギー消費やコストを削減、効率を最適化してくれる。また、通常と異なる動作が生じた場合はSMSやメール、電話で教えてくれるアラート機能も装備。
また、内蔵されたIoT通信モジュールで遠隔監視も可能。ソーラーパネルや水素貯蔵タンク、バッテリー、センサー類などとワイヤレス接続できる。
化石燃料が完全に代替される転換点をめざして
水素1キロあたりの製造コストを1.5ユーロ以下に引き下げることをめざし、そこが化石燃料が完全に代替される転換点となると考えるエナプター。
同社は今後も、研究開発(R&D)と価値ある知的財産の構築に重視した、AEM式水電解技術の開発を継続。継続生産を通じて生産能力を増強し、大量生産へと移行させ、ソフトウェアに引き続き注力。
同社は今後、日本の大手企業に向け、AEM式水電解装置を OEM販売していく構え。
「エナプターは、日本の経済産業省が掲げる2030年のエネルギー効率目標をほぼ10年前倒しで達成できるレベルにあり、すでに1立法メートル当たり4.4キロワット時の電力量で水素ガスを供給することが可能」
「水素需要は2030年までに1000倍以上に拡大すると予測され、輸送コストが不要な分散型のオンサイト水素製造システムは、大きな効率改善につながる」
「日本の Society 5.0 構想と『水素』は、切っても切れない関係。水素エネルギーインフラは、ビッグデータ・AI・IoTを基盤とした自律運用で今後も促進されるだろう。エナプターのモジュール式水電解装置とソフトウェアを組み合わせたアプローチは、この流れの一翼を担うはず」(セバスチャン=ユストゥス・シュミットCEO)