アーチ型の扉やボールト天井の階段室、外壁に凸型で押し出した柱型……。
これぞ、大正時代末期に設計された「復興小学校」の表現主義や分離派の傾向が機能的にインストールされた、大正・昭和の建築遺産。
ここは東京メトロ日比谷線 入谷駅 2番出入口すぐ。東京都台東区下谷にある、旧 坂本小学校。
この旧 坂本小学校 は、関東大震災で被災した小学校を、復興事業の一環として鉄筋コンクリート造(RC造)で再建した「復興小学校」として現存する、貴重な建築遺産のひとつ。
最古の復興小学校、100年の歴史に幕…3月に解体へ
1926(大正15)年、入谷尋常小学校を改築し、現在に至るこの坂本小学校は、復興小学校のなかでも、講堂も含めすべて現存している最古の校舎であり、当時のようすを伝える貴重な財産といえる。
エントランスや講堂、階段室などの意匠に価値があり、講堂とトイレのあり方にも、同時期の復興小学校に見られる空間的特徴をよく備えている。
そんな坂本小学校も、ことし3月に解体が決まり、100年の歴史に幕を閉じようとしている。
この貴重な大正・昭和建築遺産を、最後に体感できる“儀式”が、2月26・27日に行われる。
それが、最後のお別れ式「棟下式」2月26・27日開催
1926(大正15)年に誕生した「復興小学校」、大正・昭和の建築遺産ともいえる旧 坂本小学校が、3月に解体・撤去・更地化されるのを前に、誰でも無料で参加できるお別れ式「棟下式」を2月26・27日に開催する。
両日とも、13:00~17:00には、建物内外の見学会や奉謁所、地下室映像も公開。講堂や理科室では上映会なども行われ、校庭で最後の明かりを灯すライトバルーンなども上がる。
<坂本小学校 棟下式(誰でも無料参加OK)プログラム>
13:00~17:00
◆校舎内最後の見学式(27日は10:00~12:00にも見学会を実施)
◆同窓会お別れ式後に調査して、一般見学できなかった奉謁所、地下室映像公開
◆講堂にて「さらば坂本小学校」福島泰樹絶叫コンサート(平成8年)上映会
◆理科室にて劇団唐組座長代行 久保井氏と法昌寺 福島泰樹住職の対談映像「唐十郎さんと坂本小の思い出」上映会
◆戯曲「黄金バット」の朗読劇
18:00~19:00
◆最後の明かりを灯すライトバルーン(校庭)
27日は「坂本町会音楽倶楽部ラストコンサート」「福島住職によるお別れセレモニー」もあり
空き家問題の解決や地域コミュニティ醸成へつなぐ
「リノベーションでリユースできる建物は良いが、耐震や老朽化で取り壊さざる得ない建物に、ちゃんとお別れする式典があってもいいのではないか」
そんな発想から生まれたのが、棟下式。長年お世話になった建物を労い、最後に感謝を伝える式典で、埼玉の住宅メーカー ポラスグループの中央グリーン開発が2017年に初開催し、現在、合同会社パッチワークスと式典のセルフキット化をはじめ、文化として全国に根付かせていくべく取り組んでいる。
ポラスとパッチワークスは、「お別れを言うことで気持ちの整理がつき、次に進む。空き家問題の解決や地域コミュニティの醸成につながる」という考えから、今後も各地で棟下式を展開していくという。
◆入谷の記憶を未来に繋ぐ会
https://iriya-commons.studio.site/