国内外で活躍する画家・現代美術家の井田幸昌が、ピカソ生誕地ミュージアム「Museo Casa Natal Picasso」で、個展「Yukimasa Ida visits Pablo Picasso」を4月26日から開く。
この Museo Casa Natal Picasso は、ピカソの生誕地であるスペインのマラガにあり、同美術館で展覧会を実施するアジア人アーティストは、井田幸昌が初めて。
誰もが知るパブロ・ピカソは、スペインの生んだ20世紀最大の芸術家。1881年スペインマラガのこの地に誕生し、初めての油彩は8歳、この場所で描かれたとされている。
画家としてはもちろん、彫刻家、版画家、陶芸家、舞台デザイナー、詩人、劇作家としての顔も持ち、生涯で14万点の作品を残したことでも知られている。
絵画・彫刻作品・ドローイングで構成、その多くが未発表の新作
井田幸昌 自身初となる美術館での個展で、偉大な作家ピカソに向けてトリビュート(賛辞・称賛の意)するという初めての挑戦でもある、この個展「Yukimasa Ida visits Pablo Picasso」。
ピカソは生涯で14万点を超える作品を残すと同時に、現代美術に通じる新たな様式を生み出した。ピカソの時代ごとに変化する作風、新しい表現への貪欲さ、そして芸術に対する考えに至るまで、ひとつ一つを井田なりに解釈し、自身の作品へと昇華させてきた。
同展で発表する合計45点となる作品は、絵画だけでなく彫刻作品、ドローイングで構成され、その多くが未発表の新作。
井田の代名詞ともなっているPortraitシリーズにも取り組み、幼少期〜晩年までのピカソ自身の肖像画も含まれている。
「今」を表現者として捉えながら、描き、生きていたい
井田幸昌は、この展覧会に向けてこう伝えている。
―――私は、夕日を見て、海を見て、空を羽ばたく鳥を見て、その美しさにはっと息を呑むことがあります。このように、あらゆるものごとに出会い「美しい」という言葉を頭の中で紡ぐ一瞬前。この瞬間に、普遍の美が潜んでいるのではないかと、私は考えます。 そして私は、表現者として、世界や、人々との出会いの中にある美を作品にしようと努力してきました。ゆえに、これまで「一期一会」を一貫したテーマとして持ち、作品を制作してきました。
今回の展覧会に対して、私はこの20世紀最大の芸術家、パブロ・ピカソに向けてトリビュートした作品も多く制作しました。作品制作を通して、彼が何を考え、何を感じ、アウトプットし続けていたのかを、自身の経験や制作に重ねてきました。
「自分には過去も未来もない。ただ現在に生きようがために絵を描くのである。」これはピカソの言葉です。「一期一会」は、彼の残したこの言葉とも通底する概念です。私は変化し続ける「今」を表現者として捉えながら、描き、生きていたいと願っています。
最後に、ピカソが残したこの言葉にも、触れておきたいと思います。
「昔、母は私にこう言った。お前が軍人になれば、将軍となるでしょう。修道士になれば、法王となるでしょう。そして私は画家となり、ピカソとなった。」
幼少期、私の母もピカソの母と同じように言いました。「あなたがなろうと思えば、あなたは何にでもなれる」と。
「私は画家となり、井田幸昌になる。」これを実現するための長い旅が今始まるのです。
くしくも私が最も尊敬する、偉大なる芸術家が生まれた地から―――。
ピカソ生誕地ミュージアム「国際的な衝撃と影響を与えた」
また、ピカソ生誕地ミュージアム「Museo Casa Natal Picasso」は、この井田幸昌 個展「Yukimasa Ida visits Pablo Picasso」について、こうコメントしている。
―――井田幸昌は、ピカソ生誕地ミュージアムにアジア人として初めて招聘するアーティストです。
この栄誉は、井田が同世代で最もダイナミックで重要なアーティストの一人であり、さらに彼の作品が国際的な衝撃と影響を与えたという評価によります。
同展は、パブロ・ピカソの生誕から130年以上の時を経て制作された絵画、ドローイング、彫刻の貴重なコレクションであり、井田氏の出身国である日本の文化や人々とのゆるぎないつながりをたどることができるものです。
井田は「ICHI-GO ICHI-E(一期一会)」のコンセプトで知られ、「今この瞬間は一生繰り返されない」という信念のもとに制作しています。
彼の作品は世界中の個人コレクションに収蔵され、国際宇宙ステーションにも設置されています。また、彼はソーシャルメディアを通じて、一般の観客と定期的にライブで交流し、その思想的リーダーシップを発信しています―――。
井田幸昌 プロフィール
1990年鳥取県生まれ。2019年東京藝術大学大学院油画修了。16年、現代芸術振興財団(前澤友作設立)が主催する若手作家のアワード「CAF賞」にて審査員特別賞受賞。17年、レオナルド・ディカプリオ財団主催のチャリティオークションに史上最年少参加。18年にはForbes JAPAN主催「30 UNDER 30 JAPAN」に選出。国内外のコレクターからも支持を得ている。個展「Portraits」(銀座蔦屋書店、2019)、「Here and Now」(マリアン・イブラヒム・ギャラリー、シカゴ、2021)をはじめ、国内外で展示歴多数。直近ではDiorとのコラボレーションを発表した。2022年は4月末にスペインのピカソ生誕地ミュージアム、10月にパリのマリアン・イブラヒム・ギャラリーで個展が決定しているほか、さまざまなプロジェクトが控えている。