渋谷の街なかでも、地方の老舗デパートでも、ミュージアムや博覧会の現場でも、人の姿を代わりに務めてくれる大事な役割をもつのが、マネキン。
いま世の中にあるマネキン人形は、ガラス繊維とポリエステル樹脂の複合素材である FRP(強化プラスチック)でつくられているものがほとんど。
この従来製マネキンを廃棄するとなると、金属部分はマテリアルリサイクルし、FRP部分はセメント製造時に燃料・原料として循環させている。
こうした製造・リサイクル工程で必要なのが、有機溶剤。
有機溶剤は、揮発性が高く、蒸気になると作業者の呼吸を通じて体内に吸収されやすく、油脂に溶ける性質もあるため、皮膚からも吸収されやすいという特質がある。
有機溶剤を取り扱う職場で就業する作業者にとっては、中毒性やシックハウス症候群などの疾病を引き起こす弊害もある。
―――こうしたマネキン業界の課題を解決し、さらに SDGs 実現にむけて前進させた画期的なマネキンが、いま異業種からも注目を集めている。
異業種も注目する、トーマネ和紙製マネキン Waltz ワルツ の環境性能
こうした課題を解決すべく、マネキンを主軸にファッション・アパレル業界をけん引するトーマネがレンタルと受注生産で展開する和紙製マネキン「Waltz」(ワルツ)が、いまアパレル業界の枠を飛び越え、異業種でも注目を集めている。
まず前述のような有機溶剤による労働環境課題を解決。
Waltz(ワルツ)は、茨城県常陸大宮市にある無形文化財「西ノ内和紙」(那須楮 100%)を素材にして開発。
その製造過程では、和紙のほか、ナチュラルなものを基本材料とし、有機溶剤の使用はいっさいなし。
作業者は安全な労働環境のなかで製造が可能に。さらに「Waltz」(ワルツ)が、注目するのが、圧倒的な軽量化。
脱プラ&労働環境改善、さらに超軽量・高リサイクル
トーマネの和紙製マネキン Waltz(ワルツ)は、従来比 80%減という圧倒的な軽量化を達成。
この圧倒的な軽量化により、輸送コスト・組み立てに関わる労働時間の削減にも貢献できた。
さらに成形した「Waltz」は、再び和紙に戻すことができるうえ、廃棄の場合は従来の FRP を素材としたマネキンの廃棄方法とは違い、可燃物として廃棄できる。
そしてもうひとつ。トーマネの和紙製マネキン Waltz(ワルツ)にしかできない“柔軟性”がある。
マネキン以外のどんなカタチにも成形できる
また同社では、和紙造形に着目し、この造形技術において特許を取得。
同社技術と型があれば、さまざまな形の造形制作が可能なため、マネキン人形に限らず、さまざまな形の製品を開発していく。
さらに「Waltz」を普及させることで、無形文化財「西ノ内和紙」の雇用・文化の継承も支援していくという。
トーマネ執行役員 岩下沢子 社長室 室長は、「ワルツの製造方法は、形のあるものだったらすべてに対応できることから、マネキン人形だけではなく、あらゆる造形に置き換えることにチャレンジし、環境に配慮した造形を、ものづくり企業として提案しいきます。また海外にも Made in Japan としトーマネの技術をアピールしていきたいと思います」と伝えていた。