お正月の代表的な料理と言えば、お雑煮。古くは室町時代から食されてきた日本の伝統料理だが、地域ごとに具や出汁などに大きな差があり、多様性に富んでいる。

そんなお雑煮の豊かな世界を知ってもらおうと、素材のいしさを生かした調味料・食品ブランド「茅乃舎」が24日の「和食の日」、お雑煮をテーマにしたトークライブ&お雑煮食べくらべ会を開催した。

御料理 茅乃舎 初代料理長・岡部健二による「あごだし」を使った博多雑煮の紹介に始まり、食べ比べでは関東風雑煮・関西風雑煮・博多雑煮・出雲雑煮(島根)・鮭雑煮(新潟)が振舞われた。

並べてみると違いが分かりやすい。たとえば関東風雑煮は「勝負に味噌をつけない」ことからすまし汁を使い、関西風は甘い白味噌に金時人参・里芋で合わせる。博多雑煮では今や全国区となった「あごだし」を使い、ぶりやかつお菜、干しシイタケを入れる。

出雲雑煮は餅の上に乗った十六島(うっぷるい)海苔が主役。奈良・平安時代から献納品でもあった希少な海苔で、獲るのも命がけだそうだ。新潟の鮭雑煮は東日本らしい鮭といくらで華やかな見た目もさることながら、かんぴょうが名脇役として触感を加えていた。

トークライブでは料理家・長谷川あかりさん、フードライター・白央篤司さん、お雑煮専門家・粕谷浩子さんをさんをゲストに迎え、雑煮の歴史や日本各地の雑煮の様態を発表。各自の好きな雑煮や今後の雑煮の行く末について大いに語られた。

たとえば粕谷さんは「雑煮は500年以上前からある。武家や貴族のもてなし料理として食べられており、信長が家康を安土城に招いたときも最初の料理としてお雑煮を出していた。お雑煮は信頼関係を築く際に振舞われる料理」とその歴史を紹介。各地の具材や汁の差異にも触れ、その多様性を解説した。

皆さんの好きなお雑煮は?という質問には、これも多種多様な答えが出た。白味噌イリコ出汁の香川雑煮や丸餅に牡蠣を入れた広島雑煮、ペースト状にすり潰したクルミを入れる新潟の雑煮、牛肉を使ったお雑煮などの回答が集まった。

牛肉雑煮を挙げた長谷川さんは、祖父のために祖母が牛肉だけを使った雑煮を作ったというエピソードを披露。地域だけでなく各家庭にも独自の味がある。雑煮の豊かさを象徴するような事例だ。

新しくオリジナル雑煮をつくるなら?という問いかけでは、白央さんがトムヤムクン雑煮を紹介。三が日で雑煮も飽きてきた頃に口を満たしてくれる味だという。他にもクリーム雑煮(長谷川さん)やリンゴジュース雑煮(粕谷さん)など、お雑煮の自由さを感じさせてくれるアイデアが続出した。

実に豊かで複雑で、多様性に富んだお雑煮の世界――

とはいえ、その未来は希望に満ち溢れているわけではない。おじいちゃん・おばあちゃんの家でお雑煮を初体験したという小学生たちの経験談は親世代のお雑煮離れを象徴するものだし(粕谷さん)、「味を受け継ぐ前に母や祖父母が亡くなってしまった」といった声はSNS上でも多数見られる(白央さん)。実際の生活とどうバランスを取っていくかが雑煮の課題、と長谷川さんもコメントを添えた。

正月には欠かせない「お雑煮」という奇跡の料理。その素晴らしさを今一度立ち止まって確認したい。再び日本の伝統的な食文化を見直したい、そんな気持ちになるイベントだった。

茅乃舎がお雑煮の世界を紹介する特設コンテンツを公開

茅乃舎はこのイベントにあわせ、11月24日(金)に全国のご当地雑煮を考察した特設WEBコンテンツ『お雑煮という奇跡』を公開した。お雑煮を“奇跡の料理”と呼ぶのに相応しい料理と捉え、様々な角度から紹介する。

サイトの公開にあわせ、全国の茅乃舎15店舗にて、お正月の営業に合わせてお雑煮の試食会を実施。茅乃舎だしにも使われている焼きあごが特徴の「博多雑煮」や、「関東風雑煮」「関西風雑煮」など、店舗ごとに各地域のお雑煮を振る舞うという。

茅乃舎『お雑煮という奇跡』
https://www.kayanoya.com/ozouni/

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