公益財団法人PwC財団は、初となる「インパクトレポート」を発刊した。3月14日には都内でレポートに込めた思いや同財団が目指す世界について共有する発表会を開催。また、「助成事業2024年度春期」の公募テーマも公表された。
PwC財団は、2020年5月に一般財団法人として設立。同年10月より助成事業を開始し、21年5月からは公益財団法人へ移行した。「経済成長と地球環境保全が両立し、サステナブルなエコシステムの構築を通じて、持続的に社会が発展する世界の創出」という理念を掲げ、設立以来、テクノロジーの活用により、社会課題の解決に取り組む団体に公募助成事業を行っている。この事業では解決すべき社会課題テーマを同財団自らが設定し、テーマ解決に取り組んでいる団体を募り、採択した団体に助成金を交付する。
助成先H2L株式会社のFirstVR装着実験の様子
PwC財団では、これまで延べ14団体と助成事業を行ってきた。現在は人間拡張、地方医療、地球環境、食料システムの分野の助成事業を推進。年2回の公募を開催し、1団体(1事業)あたり1000万円の助成金を交付している。
助成先株式会社ハイドロヴィーナスの香川用水での実証実験の様子
今回の発表会では、最初に登壇したPwC財団代表理事・選考委員の安井正樹氏が今回の「インパクトレポート」発刊に対するきっかけを「設立より成果を重ねて、運営も安定してきたこのタイミングで、当財団としてのユニークネスを活用し、何を目指すかを可視化・公表することで認知度向上とインパクトの拡大を狙いたいと考えました。また、サステナブルな財団の成長を実現するためには、運営体制の整備が必要だと実感しています。このインパクトレポート発刊をきっかけとして、同じ志を持つ仲間や協力者が増えることも狙いの1つです」と明かした。
安井代表理事の言うPwC財団のユニークネスとは、株式会社にも助成していることが挙げられる。続いて登壇したPwC財団事務局長の日向昭人氏は、その理由について次のように話す。
「私たちは株式会社への助成も重視しています。社会を変えうるようなインパクトを生み出すには、助成対象に株式会社も含めることが必然だと考えるためです。株式会社は営利企業である以上、利益を生み出す必要がありますが、そのことに捉われてしまうと、本来取り組みたいことから徐々に離れていき、悪循環に陥る恐れがあります。そのため私たちでは、申請事業が非営利目的であり、解くべき課題テーマの解決に寄与するなら、法人格の種類を問わず、株式会社であっても助成しています。昨今サステナビリティへの意識が高まり、インパクトファーストが必要な場面もある中、経営の根幹にインパクトを持たせることに繋がると考えています」。
2024年度春期公募テーマは福祉・介護・医療
また、PwC財団の今後の展望について日向氏は「解くべき社会課題テーマの設定を行い、課題の全体像を俯瞰した上でレバレッジポイントを明確にしていきたいと考えています。このタスクに向き合うことでプログラムオフィサー(助成事業担当)自身が大きく成長する姿が想像できるため、人材育成という意味でもここにリソースを投資することには意味があると考えます。理想を実現できる能力がある人に関わっていただき、具体的な議論を続けていきたいです」とまとめた。
発表会の最後には助成事業2024年度春期公募テーマの紹介が行われた。今回のテーマは「ウェルビーイング(孤独・孤立の予知・予防)」、「人間拡張(介護支援)」、「地方医療(がん発生予測モデル構築)」の3つ。公募期間は3月11日〜4月30日で、採択先の発表は6月下旬に行われる予定になっている。