スウェーデンではタコスが人気、と聞いてびっくりする人もいるだろう。代表的な料理といえばミートボール、それに隣国ノルウェーで獲れるサーモン、詳しい人ならザリガニを挙げるかもしれない。
しかし、本当はタコスなのだ。スウェーデン人が情熱を燃やすのは。
スウェーデンには「フレーダースミィース(まったりフライデー)」という文化がある。金曜日は早めに仕事を切り上げ、自宅で家族や友人とまったり過ごす。日本で提唱された「プレミアムフライデー」は半ば死語と化しているが、スウェーデンではそのような習慣が息づいている。
そこで選ばれるのが「タコス」なのだ。調理が簡単で、野菜もたっぷり摂れる。そんな理由から「Tex-Mex」(テックス・メックス、英語でテキサス風メキシカンの意味)が定着した。スウェーデン人の85%が定期的にタコスを食べており、55%は金曜日に食べるという傾向があるという。
気になる人はSNSなどで「スウェーデン タコス」とでも入れて検索してみるといい。現地のスーパーにずらりと並ぶタコス関係商品の写真が見つかるだろう。
北欧ナンバーワンのテックス・メックスブランドが日本に上陸
そんなタコス大国スウェーデンから、北欧ナンバーワンのテックス・メックスブランド「Santa Maria(サンタ・マリア)」がやってきた。
日本に上陸させたのは、創業110年以上の歴史を持つ食品商社のWismettacフーズだ。2024年6月から国内流通が始まっているから、普段から成城石井などで目を光らせている方は、もう見つけたかもしれない。見慣れない赤いパッケージを。
サンタ・マリアはスウェーデン第二の都市ヨーテボリで、1911年に誕生した。ブランドネームの由来はコロンブスのサンタ・マリア号。最初は小さなスパイスの店としてスタートしたという。
企業姿勢として大事にしていることは、食の安全と品質・味に対するこだわり・社会貢献の3つ。子供でも安全に食べられて、美味しく栄養も摂れるのがサンタ・マリアのテックス・メックス商品ということになる。
7月に都内で行われたメディア向けの日本初上陸パーティーでは、サンタ・マリアのミニタコタプやサルサディップなどが振る舞われた。
一般的に「タコス」というと、具材を薄い生地で包み込んだものをイメージするだろう。
しかし、今回振舞われたのはもう少しカジュアルに楽しめるタコスだった。参加者らはお皿のような形をしたタコス用ハードシェル(タコタブ)に肉や野菜類を詰めてトマトディップで味付けをしてみたり、チップスに具材を乗せて楽しんだ。
記者個人の印象として、美味しかったのはトマト含有率が80%を超えるというフルーティーなサルサディップだ。ケチャップを想像していたらそれを裏切るみずみずしさに、「正直、飲める」という感想を抱いた。
タコタブは形が面白いが、味はついていなかったので、具材の味付けを考えながら盛り込む楽しみがある。一方でチップス類は最初から塩気があり、その形状も日本人の手になじむ。これにビールでも付けてやれば、完璧な午後になる。
実食してみて感じたのは、スウェーデンにとってタコスは「手巻き寿司」ではないか、ということだ。タコスのスタイルは手巻き寿司に似ている。海苔と酢飯の代わりにタコタブやチップスを用意し、その上に具材を乗せて楽しむ。ある程度の用意は必要だが、作る過程は親しい人たち同士で楽しめる。そう考えると、日本人とタコスも案外親和性があるのではないか……そんな気持ちにもさせられる。