科学技術や社会技術の革新を促し、目まぐるしく変化する社会の中での税制などの制度の在り方について調査・研究する、政策改革・イノベーション研究所(IIPR:Innovation Institute for Policy Reform)は、第1回「政策改革・イノベーションシンポジウム 技術革新とハームリダクション-たばこ税制の観点から」と題したシンポジウムを開催。

中山展宏 衆議院議員(自民党・ルール形成戦略議員連盟(甘利明会長)事務局長)や、蔵研也 政策改革・イノベーション研究所 代表理事が登壇し、技術革新が社会制度に与える在り方・インパクトをはじめ、日本における政策改革、イノベーションを進める税制・規制改革について、たばこ税制を軸に共有した。

「加熱式たばこの増税に反対」

今回の前段として、政策改革・イノベーション研究所では、公式サイトで「加熱式たばこの増税に反対する署名を」と訴え、こう伝えている。

「たばこの消費者はすでに約2兆円もの税を負担している。たばこのみが嗜好品として重く課税される根拠もなく、健康面等での技術革新が期待される加熱式たばこのみを増税対象とする増税案には合理性がない。

したがって、経済的合理性、租税負担の公平性、ハームリダクション・技術革新の観点から、2024年に可能性がある加熱式たばこの増税に対して反対する署名請願を実施する。賛同いただける人は、ご署名をお願いします。

本署名請願は自由民主党所属の税制調査会出席議員に提出するものとし、国政の意思決定に反映されることを求めます」

―――同研究所 蔵研也 代表は、こうした考えのもと、今回のシンポジウムでこう説明した。

「ハームリダクションの考え方を」

「たばこに対して特別な課税を行う理由は、たばこは食料品などのような生活必需品とは異なる特殊な嗜好品としての性格を有することにあるとされています。

しかし、数あるその他の嗜好品のなかから たばこ のみを本来過剰な課税対象とする合理的な根拠はありません。

また、2010(平成22)年度 税制改正大綱では「たばこ税については、国民の健康の観点から、たばこの消費を抑制するため、将来に向かって、税率を引き上げていく必要がある」とし、たばこ増税が行われる理由として健康目的のニュアンスが盛り込まれています。

ただし、喫煙をいますぐ一律に禁止することは、たばこ消費者が日本に数千万人単位で現実に存在している以上非現実的で、その有害性を低減するためのハームリダクション※の考え方を積極的に採用することが望ましいと考えます。

実際、2010年度以降に急速に紙巻たばこの消費が低減している理由は、加熱式たばこが普及していることが原因のひとつです」(蔵研也 代表)

※ハームリダクション(危害削減)とは、その使用を中止することが不可能・不本意である精神作用性のあるドラッグの使用に関連するダメージを減らすことを目的とした政策・プログラム・その実践を意味する。ドラッグの使用そのものを避けることよりも、ダメージを防ぐことと、ドラッグを継続して使う当事者に焦点を当てることが明確な特色である(国際ハームリダクション協会)。

「イノベーションが医療費低減にもつながる」

「紙巻きたばこにはすでに発がん性が明確に確認されています。

いっぽう、加熱式たばこも健康に対するリスクの存在が指摘されていますが、多くの研究機関がさまざまなエビデンスを蓄積している最中であり、ハームリダクションに寄与する技術革新に向けた取り組みが積極的に行われています。

加熱式たばこの技術革新によって、健康被害を低減するイノベーションが起こり、将来的な医療費低減にもつながる可能性があります。

2022年12月自民党税制調査会にて、防衛費増額の財源を法人税・所得税・たばこ税の3つの税目を組み合わせてまかなうという増税案でいったんの決着を見ましたが、同調査会でも拙速な議論を避けるべきとする声も強く、『2024年以降の適切な時期に増税を行う』とされています。

実際、2024年のたばこ税は加熱式たばこの税率が引き上げられて、1本あたり3円程度の段階的な値上げが行われる可能性があります」(蔵研也 代表)

「ハームリダクション・技術革新の観点から反対」

「しかし、上述の通り、たばこの消費者はすでに約2兆円の税負担を実施し、たばこのみが嗜好品として重く課税される根拠もなく、健康面などでの技術革新が期待される加熱式たばこのみを増税対象とする増税案には合理性がありません。

まして、防衛費増額を加熱式たばこの消費者に極めて偏ったかたちで負担させる理由も見出せません。

また、平時の防衛費を安易に増税に頼ることは、一国の経済力をいたずらに毀損(きそん)することにもつながります。

したがって、経済的合理性、租税負担の公平性、ハームリダクション・技術革新の観点から、2024年に可能性がある加熱式たばこの増税に対して反対します」(蔵研也 代表)

「有識者・専門家といっしょに議論を」

こうした蔵研也 代表の考察・訴えに対し、中山展宏 衆議院議員(自民党・ルール形成戦略議員連盟(甘利明会長)事務局長)は、「愛煙家がニコチン依存症へと向かわないように、加熱式たばこへと移行を促すのは政府としてもさらにやるべきだと思います。いっぽうで、加熱式たばこが健康被害がないというエビデンスをとれてないのが実情です」とし、こう伝えた。

「明治時代から約150年も続く たばこ税 は、一定量の財源確保としていまも在り続けています。今後は、国民の健康とどうやって組み合わせていくか、加熱式たばこの健康被害についてのエビデンスもしっかりとって、議連でも議論を推し進めていきたい。

紙巻たばこの価格の約6割もが税金ということで、不公平感があるとも感じています。

いっぽうで、国民の健康を維持するという視点から、さらに紙巻きたばこの税を上げて、加熱式たばこの税を下げるべきという議員もいます。

加熱式たばこ増税の内容については、まだ詳しく決まっていないので、蔵研也 代表をはじめとする有識者・専門家といっしょに議論を進めていきたいと思っています」(中山展宏 衆議院議員 自民党・ルール形成戦略議員連盟(甘利明会長)事務局長)

―――政策改革・イノベーション研究所(https://iipr.jp/)では、田中和徳 衆議院議員(自民党税制調査会副会長・国民の健康を考えるハームリダクション議員連盟会長)とともに、「第2回政策改革・イノベーションシンポジウム」を都内で 9月6日 15時~に開催予定。さらに議論を深めていくという。

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