2月2日は「承継を考える日」。
―――生命保険を通じて日本の中小企業を応援するエヌエヌ生命保険と、「女性のための事業承継ステーション」(女性社長.net)は、増加傾向にある女性の事業承継について、より包括的で効果的な支援の在り方を探る「女性事業承継者×支援団体×自治体トークイベント」を開催。
女性事業承継者、支援団体、自治体という三者それぞれの視点からともに考える無料イベントで、女性の事業承継について現状と課題、その解決に向けてのヒントを共有した。
アーカイブ映像を公開中、2時間10分のプログラム・ディスカッションをチェック
今回の「女性事業承継者×支援団体×自治体トークイベント」はアーカイブ映像を公開中。2時間10分のプログラム・ディスカッションがチェックできる↓↓↓
―――女性事業承継者、支援団体、自治体それぞれの現状および課題
◆女性事業承継者:女性事業承継者には、相談相手、知識を学ぶ場、横のつながりが必要。
◆支援団体:女性の事業承継への偏見の払拭。および、支援担当にも女性を配置する配慮が必要。
◆自治体:行政では事業承継の相談窓口やセミナーを開催するなどの支援を行っているが認知が低い。
◆女性事業承継者には身近に相談相手、ロールモデルが少ない
―――課題解決に向けてのヒント
ここでは、各登壇者のそれぞれの経緯と想い、ヒントをここでチェックしていこう↓↓↓
ケース1 太陽運輸 太田豊子 代表取締役「札幌で運送業を父親から承継」
父親の会社で10年間、さまざまな業務を行っていた。
運送業という男性が多い業界のため、父親は女性である娘に会社を継がせようという意思が少なく、父親の引退と共にM&Aの相談を受けた。
しかし、母親が M&A に大反対し、自分が事業を継ぐことになった。
承継当初は、「男性社会で何が出来るんだ」という周囲からの声もあった。
知識も乏しかったため、運送に関するあらゆるセミナーにひたすら参加し、営業知識を身に着けるということをくり返し、ようやく周囲からも認められるようになった。
男性が多い中でも身なりを整え、自分らしくいるようにしている。
ケース2 古田商会 古田千賀子 取締役「岐阜で事務用品・OA機器の販売を夫から承継」
夫が立ち上げた会社で経理を担当し、二人三脚でやってきたが、夫が突然亡くなって、事業承継する人がいないため自分が承継するしかなかった。
考える余裕もないなかで、社長としてすべて自分で決断するしかなかった。
「社長としてやっていく」と自分を納得させて、あらゆることを自ら決断している。
女性経営者として時折理不尽なことに直面することもあるが、“ヒステリック”と思われないよう、感情の出し方に注意している。
ケース3 山崎製作所 山崎かおり 代表取締役「静岡で板金加工の製作所を父親から承継」
妊娠中から父親の会社の経理だけを手伝い始めた。
父親が廃業を考えた時は、ちょうどリーマンショックも重なり不景気だった。
そのまま廃業するならと、自分から事業承継を決意。
「男性社会の中で、できるはずがない」と父親は反対だった。
承継した後、社員が他社の男性社長を見て「いいな」と思わず口にしていた言葉を聞いて、「私らしくやるしかない」と開き直って強くなった。
さまざまなセミナーに参加し、色々な人に出会いヒントをもらった。
女性ならではの悩みとして、家庭との両立、特に子どもとの時間については、どこで折り合いをつけるかという点が大きい。
自身の事業承継体験から、女性経営者団体「A・NE・GO」を立ち上げ、代表を務め、同じ女性事業承継者のサポートを行っている。
女性事業承継者からは、他に相談できない、心理的安全性を保ちながら経営の勉強をできる場所が少ないという悩みが多い。
高知県事業承継・引継ぎ支援センター原浩一郎 総括責任者「偏見の払拭で後継者は倍増」
少子高齢化で県内の企業が毎年約650社減少し、このままでは県内のインフラ事業者が消滅してしまうという危機感がある。現在、親族承継は約3割。
親族承継では、娘を承継対象として考えていない父親(経営者)が多く、そのアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)を払拭しなければいけない。
また、支援団体の相談窓口の職員14名は全て男性。
経営者、支援団体共に男性が多く、後継者対象を長男や男性だけと考えている傾向が強い。支援する側にも女性の職員が必要ではないか。
娘(女性)を後継者にすると承継候補者は倍になる。男性の意識改革を行っていく必要性を感じている。
最終的には、事業承継の男女比が同じになることが理想。
まずは、偏見の払拭、理解が必要。時間はかかってもやっていこうという覚悟がある。
中小企業庁 薮内亮我 財務課「コミュニティについて考える必要がある」
日本の経営者の平均は60.5歳で、他国に比べて年齢が高く、後継者不在が多い。
女性の事業承継者が抱える周りに相談者がいない孤独感へのサポートとして、心理的な安全性のある相談窓口、無料で参加できるコミュニティについて考える必要があると感じている。
未来の事業承継予定者を育成するためのピッチイベント「アトツギ甲子園」には、女性の応募者も増えている。
東京都台東区 産業振興課 三澤一樹 課長「民間企業を含めてサポートの強化を」
区内に約23,000の企業ある中、約6割は従業員が1人~4人と小規模。
目の前の問題に追われて、事業承継の問題は二の次になっている。事業承継は事前の取組みが大事だが、経営者には響いていない、または、そこまで手がまわらないという現実がある。
令和5年に実施した区内事業者向けの実態調査では、約28%が事業承継を予定、約16%が廃業予定。
事業承継の支援として、商工相談、セミナー開催、助成制度を行っている。
女性の事業承継の課題として、男性が多い中での居づらさやセミナーへの参加しづらさの払拭、相談先やコミュニティづくりのサポート、また、ロールモデルを見せることでハードルを下げていきたい。
自治体では限界があるため、民間企業を含めてサポートの強化をしてく必要があると感じている。
明治大学商学部 浅井義裕 教授「時代に逆行した“おせっかいさ”が必要」
事業承継のポイントは、「家族・親族かどうか」ということと、「会社の経営状況を知っているか」という点が大きく、会社の内側を知らないと承継にはつながりづらい。
また、相談先としての行政や支援団体の認知が低く、そこから事業承継が必要な企業へ押しかけて行くくらいの、時代に逆行した“おせっかいさ”が必要ではないか。
課題解決に向けて共有した 5つのヒント
こうしたディスカッションが行われた「女性事業承継者×支援団体×自治体トークイベント」では、課題解決に向けたヒントについて、次の 5つをピックアップした。
◆ 経営者、支援団体によるアンコンシャス・バイアス(後継者は男性が当たり前という偏見)の払拭と、行政によるその周知拡大。
◆ 女性の事業承継者が悩みを相談したり、経営について学べたりする場、事業承継をした女性同士が情報交換できる場の提供。
◆ 女性承継のロールモデルを増やし、その周知をすることで女性のモチベーションをアップさせる。(承継経験者の言葉には説得力があり、当事者にとって力強い応援になる)
◆ 支援団体側への女性スタッフの配置。(女性だからわかること、女性にしかわからないことがある)
◆ 支援を受けた人をロールモデルにした、後継者を育てていくための制度づくり。
中小企業サポーター エヌエヌ生命が事業承継を多角的に支援
イベント参加者からは、「起業よりも、事業承継に関しては女性という要素がネガティブに出る場面が多いと感じた」「事業承継された方はそれぞれ努力されているから成功していると思う。男性だから女性だからと言わなくてもよい環境になることを願う」などの意見も。
エヌエヌ生命は「中小企業サポーター」として、これからも事業承継のサポートにつながるさまざまな支援を行い、中小企業の“大切なもの”をともに守る活動を続けていくという。
◆「継ぐ」を語る。“事業承継支援”の今とこれから~事業承継した女性経営者の現状、先進支援事例や地域の実情を紹介。これからの支援について、ともに考える。~
主催:女性のための事業承継ステーション Supported by エヌエヌ生命保険
https://joseishacho.net/jigyoshokei-station/
協力:中小企業庁