政府による備蓄米の売り渡し先が公表され、購入各社からもその販売方法などが随時明らかにされています。備蓄米をどんな企業が購入し、このような場所で消費者が購入できそうなのかをまとめてみました。5月29日からは、インターネットでの販売受付が開始になり、短時間で売り切れになっているようです。
約22万トンの備蓄米が民間へ
お米の価格の値上がりを抑制するために、農林水産省が政府備蓄米の随意契約による売渡しを決めました。2025年5月28日に確定した政府備蓄米の売渡しでは、計61社が合計約22万トンの米を購入しました。
購入企業は、主にスーパーマーケットやドラッグストアといった大手小売チェーンが大部分を占め、これにEコマース事業者が続きます。

お米のイメージ (写真:PIXTA)
大規模な購入企業と販売・活用戦略
ここで、公表された売り渡し企業のうち、大規模なものをご紹介しましょう。
・イオン(20,000トン)
イオングループの全国的な店舗網(イオン、マックスバリュなど、18,086
店舗/カ所)を通じて、販売されるでしょう。6月1日(日)からイオンスタイル品川シーサイド、6月2日よりイオンスタイル幕張新都心、イオン熱田店、イオン大阪ドームシティ店の4店舗での先行販売開始が発表されています。
・コスモス薬品(20,000トン)
九州を拠点に、関東よりも西の地域で展開しているドラッグストアチェーンで、1,596の店舗があります(2025/4/30日現在)。食品販売を強化しており、ドラッグストアが日常の食料品購入店として定着する流れを加速させるでしょう。
・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(15,000トン)
ディスカウントストア「ドン・キホーテ」(5/21現在国内641店)各店で扱われると予測されます。転売防止のため、同社のアプリ会員限定で販売すると明らかにされています。
・サンドラッグ(12,866トン)
全国のサンドラッグ店舗(直営・子会社・FCで1542店/3月末現在)のお米取り扱い店で、販売されるようです。
・オーケー株式会社(10,500トン)
「高品質・Everyday Low Price」を掲げるディスカウントストアで、首都圏・関西を中心に160店舗以上で販売されます。まず先行販売として、本社に併設するみなとみらい店で6月6日から販売され、速やかに全店舗で販売できるよう調整中されるようです。
・アイリスアグリイノベーション(10,000トン)
アイリスオーヤマグループで、精米業、販売業、農業関連商品の販売をおこなっています。アイリスオーヤマ公式通販サイト「アイリスプラザ」で、5月29日から販売が開始されており、グループのホームセンター2店舗(千葉・ユニディ松戸ときわ平店、宮城・ダイシン幸町店)では5月31日から、神奈川・ユニディラゾーナ川崎店では6月2日の販売開始が報道されています。
・楽天グループ株式会社(10,000トン)
備蓄米を「楽天生活応援米」として、楽天市場内の直営店舗(楽天24、Rakutenグルメ館)および楽天マートを通じて、5月29日から販売しています。オンラインでの販売ということで、消費者が迅速に手軽に申し込めるような選択肢を提供しています。
・OICグループ(10,000トン)
主にグループ傘下の食品スーパーマーケット(ロピア、スーパーバリュー)で販売されます。
・アスクル(10,000トン)
LINEヤフーが運営するオンラインショッピングサイト「Yahoo!ショッピング」内の「LOHACO by ASKUL」にて、5月29日より予約受付を開始しています。アスクルの物流網を活用し、全国各地に送料無料で6月中下旬から出荷を開始するとしています。
・ヤオコー(9,944トン)
埼玉県を中心に首都圏で展開している食品スーパーマーケットチェーンで195店舗あります(3月末時点)。
・イトーヨーカ堂(5,000トン)
2025年5月31日午前10時よりECサイト「イトーヨーカドー ネット通販」での販売を開始し、6月15日以降に順次届けられる予定です。今後は、イトーヨーカドーやヨークフーズなどグループの全197店での店頭販売も調整されています。
(表:農林水産省のWebページより)
受け渡し先の業種別分類
61社を、主な業種別でみてみましょう。
・スーパーマーケット・生活協同組合
イオン、イトーヨーカ、ベイシア、オーケー、タイヨー、三和、マルアイ、ベルク、生活協同組合コープこうべ、など(35社、約10.4万トン)
お米は日本の食卓の基盤であり、価格高騰が消費者の購買行動に直結するため、備蓄米確保での安定供給と価格競争力の維持が目的だと考えられます。
・ドラッグストア
サンドラッグ、ゲンキー、クスリのアオキ、コスモス薬品など(7社、約4.3万トン)。近年、医薬品販売が主軸ですが、食品や日用品の品揃えを強化し、日常の買い物拠点としての役割を拡大しています。備蓄米は集客の目玉となり、顧客の「ついで買い」を促す狙いがあります
・オンラインストア
楽天グループ、アスクル(LINEヤフーグループ)、アマゾンジャパンが購入。(3社、約2.2万トン)
インターネットを通じて商品を販売することで、地理的な制約なく顧客にリーチできます。新規顧客獲得、既存顧客のロイヤルティ向上を目指しての参加でしょう。
ディスカウントストア・ホームセンター・会員制倉庫型店舗
ミスターマックス、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、カインズ、コストコホールセールジャパンが購入しています。(4社、約2.6万トン)
低価格戦略を核とし、大量仕入れ・大量販売によって顧客に「価値ある安さ」を提供する業態での備蓄米の購入は、低価格戦略をさらに強化する絶好の機会となり、顧客満足度を高めます
・米穀卸売/精米業者
アイリスアグリイノベーション、諸長、タカラ米穀、東穀、百萬粒など(7社、約1.7万トン)
米の集荷、精米、卸売を専門とし、生産者との連携や品質管理に強みを持つため、安定的な原料確保と市場価格の変動リスクヘッジが主な目的でしょう。
(※その他に、上記で上手くまとめられない企業もあります)
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今回の政府備蓄米の民間企業への売渡しは、多様な流通チャネルと各企業の戦略的な活用によって、国内の米需給の安定化、価格の適正化、そして消費者へのアクセシビリティ向上に多大な貢献を果たす可能性があります。
総購入量のうち約91%にあたる199,868トンが比較的新しい令和4年産米で、令和3年産米は19,823トンに留まっていることにも注目です。企業や消費者は、より新しい、高品質な米を求めており、単なる「安価な古米」ではなく、「手頃な価格の良質な国産米」としての市場投入が期待されているようです。
主要な小売業態からEコマース事業者まで幅広い企業が参加し、それぞれが持つ強みを活かして備蓄米を市場に投入することで、米価格高騰に対する消費者の不安を和らげ、安心して良質な国産米を手にできる環境が整うことに期待しましょう。
(ごはんの写真:PIXTA)
※この記事は、2025年5月30日午後時点の情報で構成しています。5月30日から、中小小売業者などからの、新たな備蓄米購入の申請受け付けが始まっています。
TokyoChips
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