
◆今後10年間で、自律型 AI は専門家の能力をどう強化するか
◆自律性が高まるAIに対応すべくキャリア開発プログラムはどう進化すべきか
◆自律型 AI システムと効果的に協働すべく専門家はどのような独自のスキルや能力を開発すべきか
―――そんな自律型 AI 普及拡大期に気になる話題について、世界最大専門家組織 IEEE(アイ・トリプル・イー)の会員たちが示した見解に注目。
10年前「AI は多くのタスクを代替する」

2016年、AI分野の著名な研究者らが、「AI が今後100年間に人類に与える影響」について報告書をまとめ、当時としては衝撃的とされた労働の未来像が示されていた。
「AI は仕事そのものよりも、多くのタスクを代替する」と。
IEEE は、「それからほぼ10年が経過した現在、この見解はおおむね正しかった」とみている。
「しかし職場環境は変化しています。職場における自律型AIの台頭は、機械の自律性と人間の判断力を融合させた新たなプロフェッショナルの機敏性が形づくられつつあることを意味します」(IEEE)
IEEE サプタルシ・ゴーシュ 会員、IEEE エレノア・ワトソン上級会員、アルピタ・ソニ 上級会員、トーマス・コフリン 2024年度IEEE会長は、「職場における自律型 AI がキャリア形成に与える影響と、プロフェッショナルが適応するための戦略」について考察し見解をこう伝えている。
今後10年間で自律型 AI は専門家能力をどうアップデートするか

(ゴーシュ)
自律型 AI は、最小限の人間による監視で複雑な多段階タスクを遂行することに優れています。
これらのシステムは長期目標を維持し、複雑なプロセスを管理し、時間の経過にともなう進捗を追跡しながら、変化する状況に継続的に適応できている。
自律的に動作する AI エージェントは、専門家を日常的なプロセスの常時監視から解放し、より高付加価値の戦略的活動に集中できるようにします」
自律型 AI に対応するキャリア開発プログラムはどう進化すべきか

(ワトソン)
キャリア開発は、AIの進歩速度にあわせるかたちで進化する必要があります。
まず、プログラムは創造性、感情知性、批判的思考といった人間固有のスキルの構築に焦点をあてるべきです。
また、単発の資格取得ではなく、生涯学習を支援する必要があります。
学際的なトレーニングも重要なアプローチです。
たとえば、マーケティング専門家はデータ分析を学ぶことで恩恵を受けられ、エンジニアは AI倫理を学ぶことができます。
このようなクロスオーバー研修により、専門家は人間の判断と AI 駆動の洞察を融合させた役割に対応できるようになります。
これにより、専門家は AI と密接に連携する戦略的パートナーとして影響力を維持できます。
自律型 AI システムと効果的に協働すべく専門家はどんな独自スキル・能力を身につけるべきか

(ソニ)
キャリアプログラムでは、AIシステムとの協働、とくに AI リテラシーの統合と促進に重点を置くべきです。
専門家は、AI 機能を支えるために、データ分析、問題解決、要件分析といった技術トレーニングを依然として受ける必要があります。
自律型AIの役割への誤解 その注意点
(コフリン)
最大かつ最も危険なのは、AI が思考を代行できるという誤解です。
人々は批判的思考スキルを養う必要があります。
批判的思考は非常に価値があり、AI が誤りを犯している状況を認識する能力も同様に重要です。
職場で AI が普及拡大し懸念されることは

(ワトソン)
アルゴリズム管理への懸念が高まっています。
AI システムが職場活動を制御・指示する度合いが増すことで、労働者の自律性が損なわれる可能性があるのです。
企業は業務のロボット化や意図せぬ人間の主体性の奪取を慎重に回避しなければなりません。
代わりに、AI は人間の意思決定を代替するのではなく、強化・支援する形で導入されるべきです。
この課題に対処するには、AI の限界や潜在的な誤りを率直に議論し、人間の監視の必要性を明確にすることが重要です。
これにより現実的な期待と信頼が築かれます。
―――世界最大級の技術専門家組織 IEEE は、人類のための技術の発達に注力。
頻繁に引用される論文、会議、技術規格、専門活動、教育活動を通じて、IEEE は航空宇宙システム、コンピューターと情報通信、バイオメディカル工学、電力、家電製品など、多種多様な分野について信頼のおける「声」となっている。
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