がんなどの悪性新生物、心疾患、老衰、脳血管疾患に次ぎ、日本人の死因の第5位にあるのが、肺炎(誤嚥性肺炎を除く)。
しかも、肺炎で死亡する人の 97.9%が 65歳以上の高齢者が占めている。
ここ数年は、新型コロナウイルス感染による肺炎に注目が集まるが、日常でかかる肺炎の原因としてとくに多い細菌が肺炎球菌で、高齢者にとっては肺炎球菌による肺炎も見逃せない怖い疾患といえる。
新型コロナウイルス感染症の第9波への警戒感も強まり、7月に入ってからもインフルエンザの流行が報じられるなか、医療用医薬品・ワクチンの製造を手がける MSD は、このほかにも高齢者にとって深刻な呼吸器感染症である肺炎球菌性肺炎の怖さを知り、これら3つの疾患の感染対策を考えるセミナーを開催。
国立病院機構 東京病院 感染症科部 永井英明 部長・医師が登壇し、「人生100年時代、いま改めて65歳以上が注意しておきたい肺炎対策」と題し、高齢者の肺炎の特徴や原因、予防方法などを解説した。
死亡・後遺症のリスクが高い肺炎球菌感染症
小児の鼻や喉に存在する肺炎球菌は、肺炎で最も多い病原菌で、感染経路は咳やくしゃみ、しぶきに含まれる飛沫感染が主流。
身体の抵抗力(免疫力)が低下している人などが、肺炎球菌に感染すると、肺炎球菌感染症を患い、さらに菌血症や髄膜炎などを患うこともあり、死亡・後遺症のリスクが高まるという。
また、季節性インフルエンザ流行時に肺炎で入院した患者の原因菌のなかでも、肺炎球菌が半数以上を占めた病院例もあり、「過去のパンデミックでは、二次性の細菌性肺炎の死亡例が多く、原因菌として肺炎球菌が多い」(永井医師)という。
肺炎予防のためにできること
永井医師は、肺炎を予防するための習慣・行動について、「感染防止」「身体の免疫を高める」「予防接種を受ける」の3点を挙げる。
まずはうがい・手洗い・マスク着用を習慣づけ、歯磨きなどで口腔ケアも。また飲み込む運動がうまくいかなくなり、誤って唾液や食物が気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)を防ぐことも大事という。
また、身体の免疫を高めるには、規則正しい生活、持病をしっかり治療すること。たばこは免疫力を低下させ気管や肺にも悪い影響を及ぼすことから、禁煙も大原則。
そして、予防接種。永井医師は、高齢者に推奨するワクチンについて、「インフルエンザワクチン」「肺炎球菌ワクチン」「帯状疱疹ワクチン」「新型コロナワクチン」の4つを挙げた。
ワクチン打ち控えと肺炎球菌ワクチンの接種率の低さ
こうした確立されたワクチンの有効性があるにもかかわらず、高齢者は「ワクチンを打ち控えている」と永井医師は警鐘を鳴らす。
「新型コロナが発生したころは「死に至る病」という認識が広まり、先を争いワクチンを接種した。ところが、その疾患が自分にどれほど深刻な状況を引き起こすかわからないと、ワクチンを接種しない」と永井医師。
健康に自信がある高齢者ほど、ワクチンを打ち控えているという。
さらに深刻なのは、肺炎球菌ワクチンの接種率の低さ。
永井医師によれば、2023年5月までの、65歳以上の新型コロナワクチン累積接種率(1〜3回目)は、90%以上あるのに対し、2021年度のインフルエンザワクチン接種実施率は55.7%、肺炎球菌ワクチン接種実施率は14%にとどまったという(ただし、これらの実施率の数には、解釈に留意が必要と補足された)。
高齢者を対象とするワクチン接種の重要性
永井医師は、高齢者を対象とするワクチン接種の重要性について、次の4点を挙げた。
◆日本は超高齢社会に入り、高齢者の医療費は増大
◆高齢者にとってインフルエンザ・肺炎球菌性肺炎・帯状疱疹・新型コロナは大きな疾病負荷で、社会に与えるインパクトが大きい
◆高齢者に積極的にワクチン接種を行い、上記疾患の受診、入院、死亡などのリスクを減らすことは、医療機関の負荷の軽減、医療費削減につながる
◆健康寿命の延伸は高齢者の社会活動・経済活動を促す
―――さらに永井医師は、「肺炎球菌ワクチンの接種は、医師の勧めが後押しになる」と伝え、講演を終えた。
肺炎予防のために必要な、肺炎球菌ワクチン接種。その詳細は、MSD公式サイトにも公開されている↓↓↓
https://www.haien-yobou.jp/vaccine/