玉川大学(東京都町田市)は現在、緑豊かなキャンパスを活かして地球環境の保全を目指す学内プロジェクト「Tamagawa Mokurin Project」を展開しています。その一環として開催されているのが、工学部マネジメントサイエンス学科マネジメント・コントロール研究室(担当:小酒井正和教授)の産学連携による共創プロジェクトの成果発表となる「光と森の追憶」と題された展示です。そこでは、間伐材を使用したスピーカー内蔵スクエア型ウッドチェアーの展示とプロジェクションマッピングが行われています。

展示スペースとなっているのは同大学STREAM Hall 2019の5階。工学部の教室や研究室をはじめ、芸術学部や農学部との学部横断連携授業なども行われている校舎です。20分に1回、約2分間のムービーがプロジェクションマッピングに投影されます。同じ空間には“積み木”をコンセプトとしたデザイン性の高いイス型スピーカーがあり、ムービーに合わせてBGMが流れる仕組み。小酒井教授は「あえて人の往来が少なくても味わいのある余白のスペースに展示した。プロジェクションマッピングやウッドチェアーに使われている素材に注目し、クールダウンできる空間演出を感じてもらいたい」と述べました。

「掲示物に対する意識調査」からスタート

ムービーが投影される壁面には4枚の木材。これはキャンパス内で採取された「玉川産間伐材」を活用したものです。同研究室のゼミ生で今回の展示プロジェクトに参加した4年生は「テーマはTamagawa Mokurin Projectを多くの人に知ってもらうこと。そのためには現物を見てほしい。質感が豊かな木材に動画を投影するというアイデアは学生の発想から生まれたもの」と語ります。

ウッドチェアーも玉川産の檜が採用されており、芸術学部の木工室や工学部のメーカーズフロアの協力により、学生が実際に電動ノコギリやカンナで加工して組み立てまでの製作作業を担当。できあがったイス型スピーカーの音響なども検討し、振動スピーカーがベストポジションになるように調整して配置されています。

このプロジェクトに参加した学生は、展示に使う木材選びから「Tamagawa Mokurin Project」との連携により、成果物を自ら製作する作業を体験しながら取り組みました。

マネジメント・コントロール研究室はデータの視点から因果関係を突き止め、社会の課題を科学的に解決していく活動をおこなっています。プロジェクションマッピングについても全学部の学生を対象とした「掲示物のアンケート」がスタートでした。「建物ごとに掲示物を確認するか」、「共有スペースに満足しているか」といった意識調査を独自に実施し、366件のデータを取得。そのデータを基に分析を重ねて「玉川産木材を活用した憩いの空間演出」というコンセプトが学生たちの自主的な活動により発案されています。

プロフェッショナル集団と産学連携

アートを基調とした映像コンテンツの企画・制作、スクエア型ウッドチェアーのデザイン、スピーカーの設計などは空間演出のプロフェッショナル集団、東洋メディアリンクス株式会社が担当しています。同社との共同研究「空間デザインセールス研究プログラム」において、この共創プロジェクトが展開。学生たちの提案から生まれた「玉川産の木材を活用し“玉川らしさ”がある魅力的な空間にしたい。玉川学園の自然環境の豊かさを実際に目で見て知ってほしい」という想いを実現するプロダクトが制作されています。

商業施設などの空間演出も手がける同社は現在「テナント空き地の有効活用」といった課題解決に取り組んでおり、まさに今回の展示はそのヒントになり得る企画。小酒井教授は「味わいのある木材を商業施設で使うことで改めて木材という素材への注目を促すことが可能。また、間伐材の利用率を高めることにもつながるので、SDGsの観点からも有効なのではないか。玉川大学発のプロダクトを目指していきたい」と、発展性の高い産学連携共創プロジェクトに手応えを感じています。

展示は6月26日まで

データ収集と解析から始まった企画による成果物を展示したプロジェクト。空間演出のプロフェッショナルによるサポートもあり、価値のある企画内容となっています。玉川大学STREAM Hall 2019の5階に誕生した憩いの空間は6月26日(水)までの期間限定で開催しています。

関連リンク:玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科
https://www.tamagawa.ac.jp/college_of_engineering/management/

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