先日、「ひみ寒ブリ宣言」が出されたことで「そろそろブリが美味い季節だ」と思い出した人も多いだろう。富山県の氷見に限らず、長崎県の五島列島、京都府の伊根町など、ぶりで有名なまちも多い。
ところで、「かぼすブリ」はご存知だろうか。
これは大分県で養殖されているブランドブリで、大分特産の柑橘類「かぼす」を餌に加えて育てている。大分といえば「豊の活ぶり」が有名だが、「かぼすブリ」は2010年から生産が始まった新ブランドだ。
一般にブリの切り身はヒラマサやカンパチに比べて血合い部分が早く変色(褐変)する。そのため、ブリという魚は「味は問題ないのに見た目が悪い」という問題がつきまとい、商品価値が落ちてしまうという問題を抱えていた。
「かぼすブリ」はその問題に対する回答とも言える存在だ。餌のかぼすに含まれるポリフェノールやビタミンCなどの抗酸化作用により、「かぼすブリ」では色鮮やかな状態を20時間伸ばすことに成功したのである。
しかも香り成分のリモネンのおかげで臭みの少ない肉質になることまで分かった。脂もしつこくなく、一般的な養殖ブリと違って包丁を入れた時の感覚が軽い。かぼすの搾りかすに使い道も生まれる。SDGsの観点からも、文句のつけようがない養殖魚なのである。
大分では、ブリのほかにも様々な魚にかぼすを与えている。現在は「かぼすブリ」を筆頭に、かぼすヒラメ、かぼすヒラマサ、かぼすフグの4兄弟が市場に出回っているという。首都圏ではベルクやマックスバリュなどで「かぼすブリ」を購入できる。
そんな「味よし、香りよし、見た目よし!」な「かぼすブリ」の認知向上や販路拡大対策として、大分県はフェアやイベントを通してPRを行っている。その一環として、県は21日、有楽町の「坐来大分」で「日本一のおんせん県おおいた 味力も満載かぼす魚づくしコースを味わう会」を開催した。
坐来料理長の桜井政義さんは、「かぼすブリ」について「本当に美味しい魚なので無駄に手を加えず、シンプルに味わってもらえれば」と語り、素材の良さを伝えるコース料理を提供した。
大分県広報広聴課の柴北友美さんは、「大分ファンの獲得につなげたい」と話す。おんせん県を名乗って10年が過ぎ、2023年度は県や市町村の支援策を使って県内へ移住した人が過去最多を更新した。その魅力は徐々に、全国に浸透しつつある。
湯布院や別府温泉など有名な温泉地は広く知られ、大分の「とり天」などをチェーンの飲食店などで目にする機会も増えた。かぼすで育ったブランド魚も、そう遠くない内にその「味力」を広く知られるようになりそうだ。
記事:一橋正浩