若い女性が多く参加し、地球温暖化対策や気候変動対策にむけたイノベーションを活発に議論し、世界同時配信したたことしのエネルギー・環境 イノベーション国際会議 Innovation for Cool Earth Forum 第8回年次総会(ICEF 2021)。
今回の ICEF 2021 では、政府、国際機関、産業界、学術界から、87カ国・地域の2000人以上が参加。2050年に社会でリーダー的存在となって活躍すると見込む、30代・40代の女性たちが半数も参加し、活発に議論した。
「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」
世界120以上の国と地域がこの「2050年カーボンニュートラル」にむけて動き出しているなか、10月6・7日に行われたこの ICEF 2021 では、具体的かつ現実的な議論に焦点を置いて議論。
さらに2030年までの短期的、2050年への長期的タイムスケールにおけるイノベーションを共有し、議論した。
そして ICEF 2021 最終日には、会議後のステートメント(指針・声明)が発表された↓↓↓
5つの特定技術分野に課題と可能性
ICEF 2021 では、カーボンニュートラル実現に向けた具体的、かつ現実的なイノベーションのステートメント(指針・声明)を発表。
ICEF 2021 ステートメント(指針・声明)では、2050年のカーボンニュートラル実現にむけ、いま議論するべきテーマとして、現実的な議論の必要性、様な道筋、イノベーションの役割と提示した。
今回のICEF 2021 では、デジタル技術、エネルギーシステム統合、原子力、食品システム、ネガティブエミッション技術という5つの特定技術分野に焦点を当て、それらの課題と可能性について具体的な道筋を示す議論が行われた。
1.現実的な議論の必要性
これまでに120カ国以上がカーボンニュートラルを達成する意向を表明している。ICEFは、このような国家主導の脱炭素化への動きを歓迎する。
しかし、国際エネルギー機関(IEA)によれば、COVID-19 の感染拡大によって2020年の二酸化炭素の排出は一時的に減少したが、再び増加し始めている。
野心的な目標は、グリーンイノベーションとともに、政策、社会経済と行動の変化によってのみ達成することが可能である。
カーボンニュートラルを実現するためにどのような技術を導入すべきか、それらの技術は、どのような時間軸で、どのように産業や社会に組み込まれるべきかについて、さらに多くの深い議論が必要である。
またそれを実現するには、企業や個人の考え方を変える努力や政府の政策のイノベーションも必要となる。
2. さまざまな道筋
経済構造や自然環境は国や地域によって異なっており、それらに影響されるエネルギー需給システムも多様である。
そのため、各国に適した政策やエネルギーミックスを実現することが重要であり、国や地域によってカーボンニュートラルを達成する時期が異なることもあり得る。
したがって、国際協力は、国や地域の違いについての理解に基づいて、相互に有益となるように推進される必要がある。
この点に関して、先進国は途上国を支援する上で重要な役割を担っている。
市民社会では、カーボンニュートラルを達成するうえで、誰も取り残されてはならない。
3. イノベーションの役割
ICEF では、上記の1と2の重要性を念頭に置いて、カーボンニュートラルを達成するための実用的な道筋へ導く技術と社会のイノベーションについて、短期と長期の時間軸で議論を行った。
私たちは政策、ビジネス、行動という多面的なイノベーションを加速させる必要がある。
政府は、民間セクターにおけるゲームチェンジやパラダイムシフトを促進するために、従来のエネルギーと環境政策を超越する必要がある。
民間セクターは、技術、製品、サービスの創出に対してだけでなく、サプライチェーン全体を変革し、産業構造の変革を導く行動を取る責任を負っている。
カーボンニュートラルを達成するためには、人々の意識や行動の変化が必要となる。
相互に関連する各分野に目に見える革新的な傾向が数多く見られることは励みとなる。
すべての利害関係者は、カーボンニュートラルを達成するために行動を起こさなければならない。
私たちは再生可能エネルギーや水素など、カーボンニュートラルへの道筋において重要な役割を果たすさまざまな技術分野について議論してきた。
ICEF 2021 は、デジタル技術、エネルギーシステム統合、原子力、食品システム、ネガティブエミッション技術という5つの特定技術分野に焦点を当て、それらの課題と可能性について議論を行った。
デジタル技術、エネルギーシステム統合、原子力、食品システム、ネガティブエミッション技術の課題と可能性
◆デジタル技術とエネルギーシステム統合の2つの領域は、カーボンニュートラル社会において強く関連している。「グリーン・バイ・デジタル」は、短期・長期的にエネルギー管理システムとサービスの両方のゲームチェンジャーとして大きな可能性を秘めている。同時に、エネルギー需要を削減する半導体などの「グリーン・オブ・デジタル」が必要となる。エネルギーシステム統合は、さまざまなエネルギーキャリアやセクターを相互連接するセクターカップリング技術の進歩により、社会全体のエネルギー需給を最適化することが可能となる。
◆原子力も既存および将来の原子炉のための革新的技術の開発で役割を果たし、とりわけ小型モジュール炉(SMRs)などの柔軟性のある先進的な原子炉が注目を集めている。
◆食品システムからの温室効果ガス排出は、情報通信技術(ICT)を用いた農業だけでなく、生産流通の技術や手続き上の変さらによっても軽減が可能であり、長期的には消費者の食行動も大きな影響を及ぼしていく。
◆炭素直接空気回収・貯留(DACCS)、バイオマス炭素除去・貯留(BiCRS)、炭素鉱物化などのネガティブエミッション技術は、削減が困難なセクターにおける温室効果ガスを中和するために不可欠であり、これらの技術コストを削減するために継続的な投資が必要となる。ジオエンジニアリングに関するコストや利益、関連リスクを研究する必要性も指摘された。
4. 終わりに
ICEF2021は、2050年の社会で中心的な役割を果たす若い世代を議論の場に招待した。
その意図は、世代を超えた対話と包摂を強調し、異なる見解をより良く理解するための次のステップを踏み出すためのものである。
ICEFは、多様な利害関係者の関与を促す議論に若い世代の参加を引き続き歓迎する。
こうした活動を継続することで、カーボンニュートラルの実現に向けて現実的な議論が一層広がることを期待している。
―――ICEF 2021各セッションは10/15までオンデマンド配信中。Youtubeでも順次配信する予定だ。
◆ICEF公式サイト:https://www.icef.go.jp/
◆ICEF公式YoutubeCH:https://www.youtube.com/channel/UC7ouNL9NbvDomDTfiubi8iw