1973年創立、新生児医療から周術期、在宅医療といった分野で、日本の医療ニーズに対応した医療機器・サービスを提供する米国カーディナルヘルス傘下の日本コヴィディエンは、ことし4月、社名を「カーディナルヘルス」(CardinalHealth K.K.)に変更。

カーディナルヘルスブランドと日本の商号を一致させることで、製品・サービスのほかカーディナルヘルスブランドの価値向上を図るという。

この社名変更にあわせ、同社は都内で「カーディナルヘルス ビジョン記者発表会」を都内で開催。カーディナルヘルス 野田良 代表取締役社長、静岡社会健康医学大学院大学 浦野哲盟 副学長(浜松医科大学 名誉教授・特命研究教授)が登壇した。

今回、浦野哲盟先生は、「静脈血栓塞栓症の予防についての現状と今後の展望」と題し講演し、静脈血栓塞栓症に関する最新トピックスや予防法などを、次の5つのポイントに絞って説明した。

1. 血栓症の原因は、血管・血液・血流の 3 要因に集約できる

日本の死因の1位はがん、2位が血栓症などの心疾患、3位が肺炎、4位が動脈硬化などの脳血管疾患です。

心疾患・脳血管疾患を患うと生活も人生も一変してしまうほどの大きな病です。脳梗塞・心筋梗塞・深部静脈血栓症等々の血栓症は、がんに併発し、予後、クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)を悪化させ人生を狂わせます。

また、新型コロナ感染症を患うと、敗血症や外傷後の臓器障害(微小血栓)なども引き起こします。

なぜこうした血栓症になるかというと、動脈硬化などで血管の内側の細胞(内皮細胞)が障害されたガタガタな血管や、固まりやすい溶けにくいドロドロの血液、流れが不規則で遅いトローリ血流の、3つの原因が挙げられます。

2. 肥満、生活習慣病、感染症、がん等は共通するリスクである

ガタガタな血管は、動脈硬化・メタボリック症候群・糖尿病等の血管炎症のリスク因子に。

ドロドロの血液は、糖尿病・肥満・感染症・歯肉炎・生活習慣病、他にはがん、妊娠・経口避妊薬、血栓性素因、ストレス等々の慢性炎症のリスク因子になります。

また、避難所や飛行機内(下腿を下げた姿勢を長時間続ける)長期臥床、ギブス装着、妊娠などでは、血流が悪くなります。

3. リスクの評価と適切な予防法(tailor-made の対応)の実施が必要である

血管・血液・血流を健やかに保ちリスクを軽減するには、まず生活習慣の改善。

具体的には食べすぎない、甘いものやコレステロールの多いもの(卵類、バター、生クリーム等)を控えめに、野菜・果物(ビタミン A, E, C)や青魚を多く摂るなどで改善していきます。

また薬の内服は重要です。

さらに、20〜30 分のウォーキングなどの継続運動(有酸素運動)を習慣化し、体重を落とし、高脂血症の改善、血栓を溶けやすくする、慢性炎症の改善などを図ることで、血管・血液・血流を健やかに保つことが大事です。

4. 高リスク者には出血の危険性に配慮した薬剤による抗凝固療法が必要である

医療関係者の皆様へは、「新型コロナウイルス感染による血栓症発症リスク増大」を伝えています(日本血栓止血学会、2020/05/12)。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に際して、重症例において D-dimer 値が高値を示すこと、深部静脈血栓症(DVT)/肺血栓塞栓症(PTE)を含む血栓症の併発が多いこと等々、凝固・線溶系の異常あるいは制御障害を示す事実が当初より指摘されてきました。

現時点で確固としたエビデンスを求めることは困難ですが、これらの異常が症状の増悪、あるいは臨床転帰にまで影響を及ぼすことが示されており、このような情報を医療者が共有する事は大変重要と考えています。

また、重症患者では血栓症を高率に発症するので、出血リスクを勘案した上で、抗凝固療法を実施することを推奨します。

軽中等症では血栓症の発症は多くないですが、臨床症状、D-dimer 値等の経過を注意深く観察し、必要に応じ速やかに抗凝固療法を実施することを推奨します。そして血栓症合併症例では、退院時の抗凝固薬服用を推奨します。

5. 低リスク者、および出血リスクを有する人には、間欠的空気圧迫法あるいは弾性ストッキング等の理学的予防法を用いる

低リスク者、および出血リスクを有する人には、間欠的空気圧迫法あるいは弾性ストッキング等の理学的予防法を用いることを推奨します。

「日本の医療に欠かせない存在へ」カーディナルヘルス 野田良 社長

カーディナルヘルス 野田良 代表取締役社長は、「日本の医療に欠かせない存在を目指して」と題し、カーディナルヘルスのミッション、売上規模、会社沿革、日本国内における事業展開、血栓症予防への貢献などについて紹介。

また、カーディナルヘルスの新たなミッションについて「私たちは、人々の日々の生活を向上させる製品とソリューションを提供しています」と伝え、次のように説明した。

―――カーディナルヘルスは、米国オハイオ州ダブリンに本社を置き、50年にわたり、世界30か国以上で総合的なヘルスケアサービスおよび医薬品・医療製品を提供するグローバル企業として、全米の90%に近い病院にサービスを提供、世界中で2万9,000以上の薬局にサービスを提供、1万施設以上の専門クリニックにサービスを提供。300万人以上の患者さん・6,500以上の研究所に、4万6,000点もの在宅ケア製品を提供し、5万1,000点の検査用製品を提供してきました。

日本法人であるカーディナルヘルス株式会社は、1973年に三井物産株式会社と米 Sherwood Medical の合弁会社である日本シャーウッド株式会社として設立され、米国カーディナルヘルス傘下の日本コヴィディエン株式会社を経て、2022年4月1日に社名を「カーディナルヘルス株式会社」に変更。

設立以来、約50年にわたって日本の医療従事者のニーズに基づいて医療機器を国内で開発・生産してきました。

新生児医療から周術期、在宅医療まで幅広い分野をカバーする製品は日本の病院のおよそ90%にあたる7,000を超える施設で使用されており、製品の60%以上を静岡県袋井市のR&Dセンター・工場で開発・製造しています。

また、「世界血栓症デー(World Thrombosis Day)」への協賛をはじめ、医療従事者向け VTE(静脈血栓塞栓症)セミナーの開催、DVT(深部静脈血栓症)予防用フットポンプ、弾力性ストッキングの提供を通じて血栓症予防に取り組んでいます。

今後も医療用カテーテル分野はじめ国内トップシェアを誇る業界リーダーとして、安全にこだわった製品を開発・提供し、日本の医療に欠かせない存在となることを目指して、成長していきます―――。

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