加齢にともなう食事量や食欲の低下で、慢性的な低栄養や筋肉量が減少した状態―――それがフレイル。
フレイル状態になると、疲れやすくなり、筋力が低下するため身体機能が低下し、活動量も減少。消費エネルギー量の減少によりますます食欲が低下し、低栄養やサルコペニアが悪化する負の循環「フレイルサイクル」へと陥る、怖い流れ。
こうしたフレイルサイクルに陥る前に、フレイルの兆候となる「食欲がない」や「疲れやすくて、体力がない」などの症状に、漢方をすすめるのが、昭和大学病院 相良博典 病院長(昭和大学医学部 呼吸器・アレルギー内科学部門 主任教授)。
「漢方では、エネルギー(気)や栄養(血)が不足した状態ととらえています。このような消耗状態の方には、不足している要素を補う漢方薬(補剤)を用います」(昭和大学病院 相良博典 病院長)とクラシエ薬品セミナーで伝えた。
食欲や体力が落ち、回復させたい人への漢方薬が↓↓↓
食欲や体力が落ち、回復させたい人への漢方薬が「人参養栄湯」(にんじんようえいとう)。
「人参養栄湯(にんじんようえいとう)は、消化器のはたらきを高め、栄養をすみずみにいきわたらせ、「気」と「血(けつ)」の両方を補う処方です。
また、『有形の「血(けつ)」は自生することあたわず、無形の「気」より生ず』といわれるように、同時に「気」を増やすことで、補血を助ける作用があります」(昭和大学病院 相良博典 病院長)
そして補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は胃下垂傾向、食後に眠くなる、寝汗などがある人に。十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)は比較的やせ型、栄養状態不良、皮膚の感想萎縮、貧血傾向にある人におすすめという。
昭和大学病院 相良博典 病院長はさらに、「高齢者の術後や退院後の体力増進のためにも、こうした漢方をすすめたい」ともいう。
喫煙者はCOPDからのフレイルにも注意!
また昭和大学病院 相良博典 病院長は、喫煙者にみられるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)からのフレイルにも注意と伝える。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、おもに長年の喫煙習慣などのために肺に炎症が起きる病気。厚生労働省の2017年の統計によるとCOPDによる死亡者数は18,523人で、男性では死亡原因の8位に。
肺に炎症が起きると空気の通り道である気道や気管支が狭くなったり、気管支の先のぶどうの房状の肺胞が壊されたりして、呼吸機能が低下していく。
また、壊れた肺は治療してももとに戻ることがないという点も知っておきたい。
まずは禁煙、そして薬による治療を
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療は、禁煙が基本。禁煙と薬による治療で、症状や呼吸機能の低下を抑えられる。
また、悪化させないためにインフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種も重要。
薬による治療は、炎症を抑える薬、気管支を広げる薬、痰を出しやすくする薬が使われる。その他に運動療法、栄養管理、酸素療法などがある。
こうしたCOPD患者について、昭和大学病院 相良博典 病院長はこうアドバイスする↓↓↓
漢方薬(補剤)でフレイル対策を
「COPDの患者さんの肺は、息をうまく吐き出せず膨らんでいるため、その下にある胃が圧迫され食欲があまりわきません。
また、胃が食事で膨れると、肺を圧迫するため苦しくなり、十分な量を食べられなくなります。
さらに、COPDの患者さんでは、呼吸に消費するエネルギー量が健康な人より約10倍も多いため、ますます栄養状態が低下していきます。
一度に多くは食べられないので、1日3回の食事以外に、果物やチーズ、ゆで卵など手軽なおやつで上手に栄養補給しましょう。ただし、食事の直前や就寝前は避けてください。
COPDの患者さんは低栄養や活動量の低下に陥りやすいため、近年、フレイルとの関係が注目されています。
フレイルとは、体重減少や疲労感、歩行速度低下、身体活動低下などからなる虚弱の状態です。
COPDの患者さんではフレイルを併存すると呼吸機能がより低くなり、生命予後に影響を与えると考えられているため、フレイルへの対策も必要です」(昭和大学病院 相良博典 病院長)
―――ということで、フレイル対策として不足している要素を補う漢方薬(補剤)を使うのをすすめる相良先生のアドバイスを参考にしてみて。
左から、昭和大学病院 相良博典 病院長、クラシエ薬品 草柳徹哉 代表取締役社長。