デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中で、遅れをとっている医療業界。医療費の高騰や医療従事者の労働環境、地域による医療提供の格差といった山積みの課題を解決するために、医療DXは必要不可欠な施策と言えるでしょう。
1972年に日本初の医事コンピューター「メディコムMC-1」を発売するなど早期から医療革新に携わっているPHCグループはこのほど、デジタルヘルスソリューションを提供する新会社「ウィーメックス株式会社(東京都渋谷区:大塚孝之代表取締役社長)」を設立。4月13日に都内で「事業戦略発表会」が実施されました。
PHCグループだから可能なビジョン
壇上に立った大塚社長は「PHCグループは診療所向けの電子カルテシステムとレセプトコンピューター、電子薬歴システムでシェアナンバー1を獲得している医療DXのパイオニア。この強みを生かして医療業界の諸問題を解決していく」と、新会社設立の背景を語りました。
同社の事業戦略は「健康経営」、「クラウドサービス連携」、「医師向けソリューション」、「医療ビッグデータ分析」の4つにフォーカス。「健康経営」においては健康管理ポータルサイト「WellsPort Navi(ウェルスポートナビ)」や特定保健指導支援サービス「WellsPort Step(ウェルスポートステップ)」などを提供し、企業の従業員活力向上を支援します。「クラウドサービス連携」ではロケーションフリー、デバイスフリーを可能としたハイブリッドクラウド製品「Medicom-HRf Hybrid Cloud」をリリース。大塚社長は「診療所ではリモートのニーズが高まっていた。院外からカルテの閲覧ができるなどの利点があり、業務の効率化を図ることができる」としています。
「医師向けソリューション」についてはヘルスケアITやクリニックの開業・経営に関する
情報を発信しているオウンドメディア「メディコムパーク」を活用して情報分析から人材派遣、BPOサービスの展開で業務を包括的にサポート。また、先述の「WellsPortシリーズ」、「Medicom-HRシリーズ」、「メディコムパーク」などで蓄積された情報は「医療ビッグデータ分析」として課題解決の貢献に活用する方針です。
早急に解決すべき課題は
発表会当日は厚生労働省室長補佐の経歴を持ち、現在はデジタルハリウッド大学大学院特任教授や東京医科歯科大学医学部臨床教授などを兼任している加藤浩晃医師も登壇。「日本の疾患構造は感染症から生活習慣病や老化に伴う疾患中心に転換している。特に医療費は3分の1が糖尿病や高血圧性疾患と言った生活習慣病」とし「勤務医の働き方に関しては、2024年4月から医師の働き方改革が本格化するため、早期に対策が必要」と語りました。
「医療提供の格差、高騰する医療費、医療者の労働環境を医療DXによって変革すべき」と加藤医師。多彩なネットワークや高い技術力、政策への対応力に知見のあるウィーメックスへの期待も大きくなるでしょう。
同社デジタルヘルスケア事業部で事業部長を務める池田孝史氏は「遠隔医療ソリューションの利用」について言及。現在100件以上の大学病院などと関係を構築しており「僻地医療における巡回の実証実験」、「感染症対策」、「周産期・新生児遠隔医療」などの取り組みを紹介しました。
長きに渡ってブラックボックス化していた日本の医療業界。蓄積された課題に対して一石を投じるには、新しい技術が必要です。確かなエビデンスを持つPHCグループの新会社「ウィーメックス」が展開する医療DX事業は、医療業界のトレンドとなるのではないでしょうか。