「松江方1番線出発」「出雲方1番線出発」という信号表示。全国でも珍しい平地スイッチバック駅。
―――といったら、もう鉄道好きはピンとくるかも。
そう。ここは島根県出雲市小境町。一畑電鉄(一畑電車)の松江・出雲の両観光地から宍道湖(しんじこ)の北岸を伝ってアプローチする駅―――一畑口。
前述のとおり、松江方面と出雲方面が平地でスイッチバック配線で接している珍しい駅。
宍道湖からくる穏やかなオンショアと、どこまでも抜ける青い空、小鳥の鳴き声、稲穂が揺れる音―――途切れるレールの向こうをながめて、極上のリラックス。
「島根に来て、よかった」と思うワンシーンのひとつ
新幹線で岡山へ。岡山から特急 やくも に乗って、島根県の県庁所在地、松江駅へ。
松江の「TRIP SPICE」なるレンタサイクルでチャリを借りて、一畑電車 松江しんじ湖温泉駅で自転車持込OK「レール&サイクル」きっぷを手に入れて、電車にチャリを載せて、一畑口駅へやってきた。
駅構内には「小境」という文字があちこちにある。
そう。ここ一畑口駅はもともと小境灘(こざかいなだ)という駅名だった。しかもこの先、北へ3kmほど、さらにレールが延びていた。
ここから北3kmにあるのが、一畑寺(いちばたじ/一畑薬師)。
高台にある一畑薬師は、ただただ最高
一畑薬師(いちばたやくし)は島根半島のほぼ中心部に位置する、標高200mの一畑山上にある古刹。
一畑口駅から3km北までレールがあった時代は、終着駅は一畑駅。
この一畑薬師の参詣客需要に応えるべく敷かれたレールは、1944(昭和19)年、戦中の鉄材を確保すべく路線を営業休止し、そのまま1960(昭和35)年に廃止されてしまった。
いまはここ一畑口駅から出雲市生活バスのかわいいバスが、一畑薬師まで結んでいる。
電車でいっしょに乗ってきたチャリで一畑薬師に行ってもいいし、このマイクロバスで行ってもいい。
ちょっと異国の雰囲気。社殿のむこうには、きらきら水面の宍道湖もみえる。一畑寺の高台からのながめも、ただただ最高―――。
島根の空気にあたりながら宍道湖畔まで……
一畑口駅から宍道湖畔側をみると、両渡り線のクロスの先で、松江方(画像左)、出雲方(画像右)へと線路がわかれている。
この背後には、一畑薬師へとむかう線路が、ぷつんと途切れている―――。
この画像をみていると「出雲方が若干上り勾配、松江方がやや下りなんだな」とも思う。
―――実はこのあと、山側の一畑薬師から、一畑口駅をいったんスルーして、気持ちいい島根の空気にあたりながら宍道湖畔までチャリでゆっくりのんびりダウンヒルした。
湖畔で出会った人たち、うまいローカルご飯たちとのあれこれは、またこんど……。