鳴り止まない拍手喝采、胸高鳴る感動、無限の可能性を感じ、希望と勇気をくれる瞬間―――。
東京 サントリーホールで12月21日に開催された『だれでも第九』で、これまでにないこんな感極まる瞬間を目の当たりにした。
音楽に向き合う勇気と喜びを世界中の人々に
ヤマハは、指一本から弾ける自動伴奏追従機能付きのピアノ「だれでもピアノ」を使って、ハンデや経験、年齢に関係なく「第九」を演奏したいという熱い気持ちを持つピアニストの夢の実現をサポートし、音楽に向き合う勇気と喜びを世界中の人々に届ける『だれでも第九』コンサートをサントリーホールで12月21日に開催。
この模様はライブでも配信し、多くの人の心を打つ「人間とテクノロジーの無限の可能性」を届けた。
この『だれでも第九』コンサートでは、「ピアノを弾きたい」という熱い想いを持ちながらも障がいのために難しさを抱える3名が、「だれでもピアノ」で、ひとりでピアノを弾くことから一歩踏み出し、“だれでもピアニスト“として出演、オーケストラ・合唱団とともに「第九」を見事に披露した。
素晴らしい演奏を披露し、夢をかなえた 3 名へ温かく大きな拍手が送られ、会場は感動に包まれました。
東野寛子さん「やっとベートーヴェンを楽しめた」
「オーケストラとこの空間とお客さまとだれでもピアノと、四位一体となって初めて混ざったときに、やっと(これまで弾きたかった)ベートーヴェンを楽しめたなと思いました。
それまでは、初めてのピアノの挑戦だったので苦しいことも多かったのですが、今日はこの雰囲気を楽しむことができました」(東野寛子さん)
古川結莉奈さん「練習通り強く弾けるように」
「今日はとても緊張しましたが、練習通り強く弾けるように頑張りました」(古川結莉奈さん)
宇佐美希和さん「最後終わって拍手がすごかった」
「今日は自分の出番が来て終わるまであっという間でした。
最後終わって拍手がすごかったので、それだけは記憶に残っています。なんとか(練習の成果が)出ました」(宇佐美希和さん)
高橋P「渾身の音色がひとつに響き合ったとき」
『だれでも第九』コンサートで音楽プロデュース・編曲を担当した高橋幸代氏は、こう語っている。
「だれでもピアニストたちが奏でる 1 音から伴奏やオーケストラの音が紡ぎ出されたり、全員で壮大なアンサンブルを奏でる場面、さまざまな響きに願いを込めて今回編曲しました。
それぞれの挑戦、思い、そして渾身の音色がひとつに響き合ったとき、どのような音楽が生まれるのか。
皆様と分かち合えることを願い、また皆様にもこの『だれでも第九』コンサートを創りあげるお一人となっていただければ嬉しく思います」
「だれでもピアノ」がくれる可能性
「だれでもピアノ」は、ショパンのピアノ曲「ノクターン」を弾きたいと願う手足の不自由な高校生のために、2015 年にヤマハ研究開発統括部と東
京藝術大学 COI 拠点インクルーシブアーツ研究グループ(新井鷗子特任教授)により共同で改良・開発した、ヤマハの自動演奏機能付きピアノ「DisklavierTM(ディスクラビア)」を使った演奏追従システムとペダル駆動装置をいう。
一本の指でメロディー(右手パート)を弾くと、そのメロディーのタイミングや速度に合わせて伴奏(左手パート)とペダルが自動で追従するため、ハンデや経験、年齢に関係なく、だれでも、奏者のイメージする演奏を楽しめる。
オリジナル編曲の伴奏による、だれもが親しみのある楽曲を搭載し、インクルージョンの意味も込めて新井鷗子特任教授により「だれでもピアノ」と名付けられ、2020 年に同演奏システムは特許を取得(特許 6744522)している。
当初は、一人の障がい者のために開発されたシステムですが、今ではピアノを弾いてみたいと思う初心者など、障がいの有無に関わらず誰もが楽しめるシステムとして世界中から注目を集めている。
東野寬子ピアニスト
神奈川県横浜市在住。生まれつき右手に欠指の障がいがあり、過去にピアノを習おうとしたが手の障がいを理由に諦めた経験がある。現在もピアノに触れることはあるが、思ったような演奏ができない。
音楽の道を諦められず、大学在学中よりバレエ、ジャズダンス、声楽を学び、卒業後は、働きながらミュージカルやダンスの舞台、SLOW CIRCUS のトレーナーとして活動している。東京 2020 パラリンピック開閉会式に出演。
古川結莉奈ピアニスト
神奈川県横浜市出身。先天性ミオパチーという筋肉の難病で身体を動かすことが難しく、平素ベッドに横になって過ごしている。小さい頃から音楽が好きで、右手の親指で電子キーボードを弾いていた。
2021 年 8 月、「だれでもピアノ遠隔演奏実証実験」で自宅の電子キーボードから横浜市庁舎の「だれでもピアノ」で「威風堂々」を演奏し、いつかオーケストラといっしょに演奏したいと夢みていた。
力が弱く、本物のピアノの鍵盤を弾くことは難しいが、すてきな音楽を届けられるように心を込めて演奏したいと情熱を燃やしている。
宇佐美希和ピアニスト
東京都杉並区出身。生後まもなく脳性麻痺と診断され、両手足に障がいがあり車椅子を使用している。右手は多少動かせるが、左手に不随意運動がある。
小学校 2 年生の時、姉がピアノを習う姿をみて、ピアノを習い始める。2015 年、筑波大学附属桐が丘特別支援学校在学中の彼女のピアノ演奏にインスピレーションを得て、東京藝術大学とヤマハが「だれでもピアノ」を共同開発。
以後、「障害とアーツ」(2015)、「渋谷ズンチャカ」(2017)、「みんなで楽しむコンサート」(2022)などさまざまなコンサートに出演。
また、サークル「ひとさし指のノクターン」で、ピアノの練習に励み、定期的にコンサート活動も行っている。