神奈川県川崎市、東急線「元住吉駅」東口から歩いてすぐの好立地に見慣れないパスタ屋が出来ていた。「ビジネスホテルすがた」の1階にある、その店の名は「麦のトリコ」――生パスタ専門店だ。
実はこのお店、驚くべきことに松屋フーズの新業態なのだ。牛丼チェーンの「松屋」やとんかつの「松のや」、カレーの「マイカリー食堂」など様々な飲食ブランドの中に、高級感のある生パスタの店が加わったというわけだ。
開店は2024年1月末、出店から間もなく半年が経とうとしており、評判は上々。開業当初はSNSのXで「松屋の面影ないどころか、その辺のイタリアンより抜かりない」といった声もあがっており、意外性に注目した方が多かったようだ。別メディアの取材で元住吉を訪れる機会があったので、実食してみることにした。
生パスタのもちもちした食感がたまらない!
11時、開店と同時に店内に入る。ほぼ同時に2組のグループがやって来た。店内は「おひとり様」でも気軽に入れるよう、21席中9席がカウンターになっている。カウンター席の間隔は松屋より広く、ゆったりとしていた。
注文は各席のタブレットから行える。電源やUSBのコンセントもあり、フリーWi-Fiも利用できる。シルバーやおしぼりは引き出しにしまわれている。
メニューはどれも美味しそうだが、最近人気なのはクリームソース系らしい。朝霧高原卵の乗ったカルボナーラ、ポルチーニときのこクリーム、どちらも美味しそうだが、今回は「富士山盛りチーズのボロネーゼ」を頼んでみた。山盛りのチーズに惹かれたからだ。そのふわふわとした見た目は純白のカツオブシを思わせる。
生パスタらしく、食感はもちもちしている。もっちもちである。個人的には生パスタより乾麺のわずかに芯の残る茹で具合が好きではあるが、もちもちの方が濃厚でアツアツのパスタソースには合う。
せっかくなのでトッピングに「朝霧高原の卵」を追加した。ビタミンEが普通卵の5~10倍あるそうで、なんだか健康に良さそうだ。卵液を麺と絡める。美味い。卵のまろやかさとチーズ、味の濃いパスタソースとくれば、何となく味の想像は付くだろう。
なお、生パスタにはデュラム小麦と北海道産の小麦を使用し、食物繊維を含む全粒粉を配合しており、店内で製麺しているそうだ。
水にはほのかな甘みや清涼感、なめらかさが感じられる富士山麓の軟水を使用するなど、材料にはかなりこだわっているのが分かる。お値段はサラダ・スープもつけて1,188円(取材時)。ランチとしては十分な満足感があった。
松屋フーズに色々聞いてみた
とはいえこの「麦のトリコ」、まだ1号店しかない。ひょっとしたら実験的な店舗なのかと思い、松屋フーズ広報に色々聞いてみた。
最初に記しておきたいのは、この店舗が実験店ではないということだ。将来的には拡大を予定しているが、「まずは1店舗目を1つのブランドとしてしっかり確立していくことが重要」と考えているそう。今はまだ地固めの段階と言える。
ターゲットは松屋フーズ業態では取り切れていない層。「東横線でも女性が多く住む町であり、働く女性の食卓になれるのではないか」と考え元住吉に出店したという。
パスタを選んだ理由は、まだ松屋フーズにない「ご飯以外」を視野に入れたため。ご飯に合うソースはパスタにも合うということで、ソース作りのノウハウを生かせる。
思えば、松屋フーズはここ数年、東欧の伝統メニューなどを松屋の期間限定メニューとして打ち出している。そうした商品展開を取材する中でも「ソースが美味い」という意見を多数見てきた。伝統料理本来のテイストを残しながら「松屋流」にアレンジすることで日本人の舌に合わせる、そういった商品開発のノウハウがパスタ業態でも生きるのだろう。
店内はゆったりとした設計で、女性やおひとり様でも入りやすい。また元住吉駅周辺はランチ時間帯以降に空いている店が少ないため、午後のカフェ利用にも向いている。元住吉には素晴らしい店がたくさんあるが、東横線や目黒線で訪れた際はぜひ足を運んでほしい。
麦のトリコ 元住吉店
【住所】神奈川県川崎市中原区木月2-8-1 ビジネスホテルすがた101
【電話】090-9227-4357
【営業時間】月から土:11時から23時、日:10時から23時、ラストオーダー45分前
※営業時間は前後する場合がございます。
記事:一橋正浩