喫煙者は減ってるのに、肺がん患者数は増えてるって、知ってた?

「肺がんの原因は、タバコの能動喫煙・受動喫煙をはじめ、石綿・ラドンなどの環境・職業によるもののほか、PM2.5などの大気汚染も肺がん細胞の遺伝子異常を起こすといったデータもある。とくに腺がんが増えている」

―――そう語るのは、米バリアン社製 陽子線がん治療装置「ProBeam 360」を日本で初めて導入した中部国際医療センター(岐阜県美濃加茂市)の肺がん治療センター 樋田豊明 呼吸器内科部長(センター長)。

「肺がんと診断されても、あきらめないで」

「肺がんがあっても自覚症状が無いことが多く、検診は重要。腺がんはタバコとの関連性は低く、非喫煙者や若い人でも罹患する」

そんな、がんのなかでも部位別の死亡数で男性トップ、女性2位の肺がんについて、樋田医師は「肺がんと診断されても、あきらめないで」と唱える。

免疫チェックポイント阻害剤

肺がんの治療は、薬物療法・放射線療法・手術療法の大きく3つがある。

樋田医師は、薬物療法のなかでも「近年の進化が著しい分子標的薬」についてこう伝えた。

「分子標的薬は、がんの増殖に関わるタンパク質などの特定の分子にだけ作用するようにつくられ、異常な遺伝子タイプごとに対応する薬がある。

また、がん細胞は免疫の働きにブレーキをかけるが、がん細胞からの信号を遮断し、免疫の攻撃力を取り戻す『免疫チェックポイント阻害剤』などの新薬は、肺がんの生存期間を延ばしている」

陽子線治療も一部保険適用へ

また放射線療法については、2024年6月から早期肺がんI~IIA期(切除不能なものに限る)について、陽子線治療が公的医療保険が適用できるようになった。

「放射線療法の一種である陽子線治療は、正常組織への影響を最小限におさえながら、がん病巣に最大のエネルギーを当てることができる。

中部国際医療センター・陽子線がん治療センターでは、高線量の陽子線をがんの形状や大きさに合わせて照射する強度変調陽子線治療(IMPT)が可能な世界最新・米バリアン社製 陽子線がん治療装置 ProBeam 360 を導入した。

これまで肺がんの陽子線治療は、先進医療対象だったが、ことし6月からは早期肺がんI~IIA期(切除不能なものに限る)が公的医療保険適用となった」(樋田医師)

薬物と陽子線の併用治療へ

樋田医師は、こうした陽子線治療をはじめ、分子標的薬・免疫治療薬などを併用した治療で、生存率を上げることができるという。

「中部国際医療センターでは、患者の状態にあった治療法や治療期間を計画し、治療後は経過をみながら、再発がないか、副作用がないかなどを外来診療でフォローする。

最新鋭の機器とチーム医療を組み合わせた陽子線治療が、多くのがん患者の“希望の光”となることを確信している」(樋田医師)

また、陽子線と放射線で、心臓と肺への影響を比べると、ピンポイントに照射できる陽子線が優位であることからも、樋田医師は「肺がんと診断されてもあきらめないで、中部国際医療センターに相談してほしい」と伝えていた。

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