いまや、エンターテインメント企業やコンテンツ関連企業をはじめ、企業のプロダクトやプロジェクトを広く発信するシーンで、TikTok(ティックトック)を活用しない手はない―――。

300名を超える企業のキーパーソンたちが集結した、日本初開催「TikTok Publisher Summit Japan 2024」(11/5@ヒルトン東京)の4時間で、そう実感した。

そのなかでも、注目トピックスをここでチェックしていこう↓↓↓

TikTok独自 循環型エコシステム
「Endless Cycle」

「TikTok Publisher Summit Japan 2024」セッション1では、TikTok Japan 佐藤友浩 執行役員が、TikTok 独自の価値、循環型エコシステム「Endless Cycle」について解説。

この「Endless Cycle」とは、TikTok 上でユーザーが「おすすめフィード」を介して新しいコンテンツを発見し、それをきっかけにコミュニティが形成され、ディスカバーとコミュニティの循環が続くことで、トレンドや流行など、新たなカルチャーが誕生するという、TikTok 独自の流れ。

2024年に TikTok が日本ユーザーを対象に実施したアンケートでは、67%のユーザーが「TikTok上で自分に合ったコンテンツを見つけることが多い」と回答。

また、82%のユーザーが「TikTok上でいままで知らなかったコンテンツやブランド、商品を発見したことがある」と回答するなど、TikTok の「おすすめフィード」は、ユーザーが新しいものに出会うきっかけをつくっているという。

TikTok でのディスカバーの先で巻き起こるコミュニティは、ユーザーがコンテンツを発見した後、その投稿へのコメントやシェアをしたり、共通のハッシュタグや音源からさらに多くの動画を視聴・投稿するなど、発見だけでなくユーザー自らがコンテンツに参加し、同じコンテンツを視聴したユーザー同士によるコミュニティが自然と形成されていくのも特長。

72%のユーザーが「TikTokで他のユーザーとのつながりや一体感を感じる」と回答するなど、コミュニティの誕生、盛り上がりによって、ユーザー同士の「つながり」が深まっていることがわかる。

さらに、TikTokの「ディスカバー」と「コミュニティ」が生み出す循環は、TikTok発の音楽トレンドや、TikTok 上での流行や盛り上がりが売り上げに好影響をもたらす「TikTok売れ」など、社会的、文化的インパクトをもたらす新たなカルチャーへと成長する可能性がある。

ディスカバーを起点にコミュニティが生まれ、それらの循環を経て、新たなカルチャーが形成されていく―――。

これが TikTok 独自の価値「Endless Cycle」だ。

―――次は、コンテンツ企業やエンタメ企業が、TikTok を積極活用し成功を導いた事例をチェックしていこう。

コンテンツヒットの裏側に TikTok

「TikTok Publisher Summit Japan 2024」セッション2では、実際に「ディスカバー」をきっかけに、TikTok で話題を呼んだ3社の企業アカウント担当者がトーク。

ドラマ「夫の家庭を壊すまで」で「#松本まりかチャレンジ」など新たなトレンドを巻き起こしたテレビ東京 マーケティング局 プロモーション部 前田有花氏、「本日も絶体絶命。」をはじめ、数々のTikTokアカウントをプロデュースする QREATION 社 米永圭佑 代表取締役、また漫画『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』などの TikTok アカウントを運用するコアミックス社 コーポレート本部 伊藤拓也氏に、「ディスカバーされるコンテンツ」をテーマに、コンテンツ制作のこだわりやコンテンツヒットの裏側を明かしてくれた。

切り出し動画の選出や編集にこだわり

ドラマ「夫の家庭を壊すまで」の TikTokアカウント 「夫の家庭を壊すまで【テレビ東京公式】」を運用するテレビ東京 前田氏は、TikTok でディスカバーされるコンテンツづくりについて、ユーザーの共感を強く意識し、新たな視点で切り出し動画を投稿することが重要という。

切り出し動画の選出や編集においては、TikTokユーザーのインサイトをとらえた専門の動画編集者をアサイン。ユーザーの共感を呼ぶシーンの切り出しにこだわった。

とくに2024年8月に投稿した、松本まりか演じるみのりが義母を論破するシーンの切り出しは、TikTokユーザーの間で「スカッとする」と多くの支持を集め、TikTok での再生数が1,500万回を上回るなど記録的な再生数を達成。

切り出し時には「誰目線か」を意識し、その際は復讐するサレ妻側の目線も意識したテロップをいれることでユーザーの共感を集め、この共感性がコンテンツの拡散やユーザーのエンゲージメントにつながり、さらに、「#松本まりかチャレンジ」などのユーザー発信のトレンドを生む要因にもなったという。

冒頭2秒への徹底的なこだわり

TikTok コンテンツ「本日も絶体絶命。」でユーザーにディスカバーされるためにこだわっていることについて、QREATION社 米永氏は、(1)冒頭2秒への徹底的なこだわり、(2)見続けてもらうための裏切り、(3)TikTokの「マス」をとらえたテーマ決めが重要という。

「娘の参観日に脱獄してきた父」の回では、TikTok ユーザーをはじめ、若年層から親世代まで“自分事化”しやすい「授業参観」をテーマに、囚人服を着たボロボロの男性(かが屋・加賀翔)が授業参観中の教室に入ってくるというインパクトあるシーンを冒頭2秒で演出。

視聴者が流れをつかんだところで、囚人番号と娘の出席番号が同じなど、視聴者の想像を裏切る展開を用意。

その結果、TikTokで約650万回再生され、アカウント開設から4か月で、SNS総再生数が3億回を上回った。

さらに多角的な視点から多くのコンテンツを投稿し、コメントを含むユーザーの反応を見ながら思考錯誤することでコンテンツをブラッシュアップしているという。

続きを読んでもらうきっかけに

コアミックス社 伊藤氏は、漫画『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』の TikTok アカウント「アンサングシンデレラ【公式】」で、数あるエピソードのなかでも、ついユーザーがコメントしたくなる共感を抱きやすいエピソードを選ぶという。

投稿するエピソードも冒頭からではなく、あえて最も惹きこまれる途中のシーンを投稿1枚目に置くことで、TikTok ユーザーに続きを読んでもらうきっかけをつくっている。

また、作家へロイヤリティを還元することが最終的なゴールと語り、TikTok アカウントでは、楽しく読み進められて、続きが気になるシーンで幕を閉じ、ユーザーが本編へ移動したくなるような絶妙なバランスでの投稿を心がけている。

結果として、TikTokアカウントでの投稿を通じて、以前と比較し若い世代の読者が新たに加わり、投稿開始前後の30日間と比較して漫画の売上が3.5倍増加するなど、TikTokアカウントでの投稿がきっかけの具体的な成長事例を教えてくれた。

TikTok コミュニティ活性化事例も

2024年に TikTok が日本ユーザーを対象に実施したアンケートでは、71%のユーザーが「TikTokをきっかけにドラマやアニメ、映画、漫画を見始めたことがある」と回答し、そのうち58%は「TikTok内のコミュニティによる投稿がきっかけだった」と回答するなど、TikTokのコミュニティは、ユーザーが新しい作品に出会うきっかけになってきた。

「TikTok Publisher Summit Japan 2024」セッション3では、2024年に TikTok で大きな盛り上がりをみせたアニメ「しかのこのこのここしたんたん」アカウントでの TikTok コミュニティ活性化事例を、アカウント運用を担当するツインエンジン社 取締役 企画プロデュース部 藤山直廉 部長 と、ツインエンジン社 岡野亜耶 宣伝プロデューサーが解説。

オリジナルイラスト投稿が急増

アニメ「しかのこのこのここしたんたん」のTikTokアカウント「【公式】しかのこのこのここしたんたん」では、アニメ3話の一部シーンと、主題歌のイントロダクションを組み合わせた【OPテーマイントロ耐久】を5月28日に投稿。

その後【OPテーマイントロ耐久】の音源を使用した振り付け動画が TikTok で急速に広まり、リズミカルで耳に残るメロディが TikTok で20億回再生されるなど大きな話題に。

音源を使用した振付動画だけでなく、オリジナルイラストの投稿が急増し、新たなトレンドとして注目を集めている。

参加型投稿を意識

仕掛け人であるツインエンジン社は、このヒットについて、視聴型ではなく、コミュニティと対話する参加型の投稿になるように意識したという。

また、ユーザーの反応を特に大切にし、各投稿のコメント欄のほぼすべてに目を通し、ユーザーのコメントを確認しながら対話的にコンテンツを制作・投稿し、コメント欄が活発になるようつねに意識していたとも。

さらに、コミュニティに参加したユーザーの投稿を実際に視聴し、さまざまな投稿が日々誕生していることをキャッチ。

公式アカウント側もコミュニティの新しい投稿にスピード感をもって応えられるよう、アニメ映像だけでなく着ぐるみを活用することで、スピード感をもって新たなコンテンツを制作し投稿することに成功した。

また、再投稿機能もフル活用し、ユーザーの投稿を応援することでコミュニティを盛り上げ、国内だけでなく、国外にまで話題を呼ぶ成長につながったとも伝えていた。

映画の TikTok 活用プロモ展開事例も

「TikTok Publisher Summit Japan 2024」最終セッションでは、昨年12月8日に日本初公開を迎えた映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のTikTokでの盛り上がりを事例に、ペイドメディアとオウンドメディアを組み合わせたトレンドを、映画配給元のワーナーブラザース映画 マーケティング本部の足立鈴氏と八木悠水氏が紹介。

ワーナーブラザースジャパン公式 TikTok アカウントで行った映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』プロモーションでは、ジャパンプレミア開催前からジャパンプレミア当日、ジャパンプレミア開催後から公開日、公開日以降と、プロモーションを3つのフェーズにわけて戦略的に実施。

ジャパンプレミアのようすを生配信

フェーズ1では、オウンドに注力し TikTok LIVE を活用してジャパンプレミアのようすを生配信。

この日のために来日した主演のティモシー・シャラメやヒュー・グラント、監督のポール・キングらがレッドカーペットを歩いたり、交流したりするリアルなようすをユーザーに配信。

それによりユーザーがコンテンツに参加するようになり、映画やジャパンプレミアに関するユーザー投稿が増加。コミュニティの形成が加速したという。

TikTok 活用で話題の最大化、継続

次に、公開日にかけてはTikTokの起動画面広告「TopView」を活用。また、ユーザーがつい参加したくなるチャレンジ企画をアップするなど、コミュニティを活性化。

公開日以降は、映画本編の紹介動画やクリスマスシーズンを意識した投稿を心がけるなど、オウンドメディアとペイドメディアのコラボレーションを実施。

映画公開前から公開の1か月後まで、TikTok を活用しフェーズに沿ったプロモーションを戦略的に実施することで、話題の最大化、そして継続に貢献したという。

―――「TikTok Publisher Summit Japan 2024」ではこうしたビジネス事例のほか、TikTok Head of Publisher Growth & Development の Dennis Papirowski が登場し、グローバルにおける TikTok のエンターテインメントコンテンツの需要の高まりについて、ハリウッドの事例をもとに解説。多彩なセッションを展開し、閉幕した。

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