「近年、ロボットのための生成 AI開発が勢いを増し、AI・DL × ハードウェアの掛け算は、非常に大きな可能性を持っています。

この領域に、ポテンシャルの高い高等専門学校(高専)の学生たちがチャレンジして活躍することは、日本の産業界にとって重要なことだと考えています。

また、文部科学省による『高等専門学校スタートアップ教育環境整備事業(2023 年度)』など、高専での起業家教育も定着し、技術で社会課題を解決するための人材育成が進んでいます。

全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON)は、日本の産業界にとって重要な、AI・DL×ハードウェア × 起業家マインドを持つ人材育成を象徴するコンテストとして、社会的意義が大きいと考えています」

―――そう語るのは、東京大学大学院 工学系研究科 松尾豊 教授 DCON 実行委員長。

高専生が日ごろ培った「ものづくりの技術」と、AI(人工知能)分野でとくに成果を出す技術「ディープラーニング」を活用した事業アイデアで、企業評価額を競うコンテスト「第6回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2025」(DCON2025)の本選が5月9・10日、全国東京・渋谷ヒカリエで行われ、本選(決勝)にすすんだ10校の高等専門学校チームが、企業評価額 高価獲得をめざして最後のプレゼンテーションに挑んだ。

そのアーカイブ映像をチェック↓↓↓

本選(決勝)に出場した高等専門学校チーム(プレゼン順)

仙台高等専門学校 広瀬キャンパス「Properio Al」

富山高等専門学校「Smart Care Al」

大阪公立大学工業高等専門学校「Worm Farmer」

一関工業高等専門学校「Flexi-fit」

群馬工業高等専門学校「アバタードーム」

豊田工業高等専門学校「ながらかいご」

鳥羽商船高等専門学校「めたましーど〜海苔洋食を食害から守る〜」

茨城工業高等専門学校「Locker.al:ほったらかしAI遺失物管理サービス」

岐阜工業高等専門学校・福島工業高等専門学校「巡視」

沖縄工業高等専門学校「海難事故防止の必須アイテムRiCAS」

最優秀賞は豊田工業高専、企業評価額 7億円

第6回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2025(DCON2025 @東京・渋谷ヒカリエ 5/9 5/10)で見事、企業評価額 7億円という高額評価を受け、最優秀賞を受賞したのは、豊田工業高等専門学校「ながらかいご」に。

豊田工業高等専門学校「ながらかいご」は、腕に装着することで介護中の会話から記録に必要な情報をマイクを用いて抽出し、自動で記録を作成・共有ができるウェアラブル端末↓↓↓
https://dcon.ai/teams/toyota2025/

「介護という社会課題の大きさに加え、圧倒的な現場感が伝わってきた」

DCON2025 本選技術審査員の尾形哲也 早稲田大学 教授、佐々木雄一 Spiral.AI CEO、松尾豊 東京大学大学院工学系研究科 教授、DCON2025 本選審査員の、川上登福 先端技術共創機構(ATAC)代表取締役、佐藤真希子 iSGS インベストメントワークス 代表取締役 代表パートナー、仁木勝雅 ディープコア 代表取締役社長、松本真尚 WiL General Partner & Co-founder、村上由美子 MPower Partners Fund L.P ゼネラル・パートナーは、こう評価した。

「介護という社会課題の大きさに加え、圧倒的な現場感が伝わってきた点を高く評価しています。ITに不慣れな現場でも音声入力は親和性が高く、両手がふさがる状況にも適した実用性の高いソリューションだと感じました。今後さらに現場に寄り添った磨き込みを期待しています」

豊田工業高等専門学校チームには、起業資金 100万円と、副賞 EXPO 2025 大阪・関西万博イベント「XROBOCON」出場権利などを手した。

2位は鳥羽商船高専、企業評価額 1.5億円

また2位(起業資金 50万円ほか)には 企業評価額 1.5億円の評価を受けた鳥羽商船高等専門学校「めたましーど〜ノリ養殖を食害から守る〜」(音とレーザーを活用し、海苔養殖を食害から守るプロダクト)、3位(起業資金 30万円ほか)には企業評価額 8000万円の評価を受けた富山高等専門学校 本郷
キャンパス「Smart Care AI」(育児の負担軽減を目的としたAIカメラシステム)が受賞した。

「海苔の養殖はプレゼン段階ではニッチに見えるが、海の危険や害虫から身を守るというテクノロジーは全然足りていないので、すぐに売上を作ることができそうですし、本当に困っている方を支えるようなプロダクトなので、すぐにスケールするのではないかと期待をしています」

「今まで見守りカメラは幼児をメインとしていたが、今回は6歳までということで新しく需要が見出だせるのではないかと思いました。さらに高齢者を含め大人の見守りに応用できるのではないかと思い、今後の成長に期待を込めてこの評価をさせていただきました」

そのほかの受賞プロジェクトは、下記のとおり。

<経済産業大臣賞>
鳥羽商船高等専門学校

<農林水産大臣賞>
大阪公立大学工業高等専門学校

<文部科学大臣賞>
沖縄工業高等専門学校

<企業賞>
アクセスネット賞:鳥羽商船高等専門学校
NECソリューションイノベータ賞:富山高等専門学校 本郷キャンパス
トピー工業賞:茨城工業高等専門学校
トヨタ自動車賞:仙台高等専門学校 広瀬キャンパス
日立産業制御ソリューションズ賞:茨城工業高等専門学校
フソウ賞:沖縄工業高等専門学校

松尾豊 教授「主役となるのは高専生」

「技術力の高さに加え、ビジネス構想の練り込みも素晴らしく、非常に完成度の高いプレゼンテーションでした。

現在、日本国内にはAIやディープラーニングの活用が進んでいない分野が数多く残されており、世界のビッグテック企業もこのような市場への参入を進めています。

だからこそ、日本から世界に向けて新たな技術を生み出していくことが重要であり、その主役となるのは高専生だと思っています。

ぜひスタートアップ基金を活用して起業に挑戦し、多くの学びや社会貢献を実現していただきたいと思います。

我々も、その挑戦を全力で応援してまいります」

(東京大学大学院 工学系研究科 松尾豊 教授 DCON 実行委員長)

5/29 オンライン説明会、8・9月にはAI実践ブートキャンプも開催

全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON)実行委員会は、「DCON Start Up 応援1億円基金」を設け、DCON 1次審査を通過したすべての高等専門学校生を対象に、1社につき合計200万円の資金を出資・寄付し、会社設立時のバックオフィス支援や、設立後の事業メンタリング支援などのサポートを展開していく。

また、5月29日 17時~17時30分には、オンライン説明会・質問会も開催。さらに8月27~29日+9月3~6日にはデータサイエンスとAIスキルを6日間で習得できるAI実践ブートキャンプも開催が決定したから、気になる人は公式サイトをチェックしてトライしてみて↓↓↓
https://dcon.ai/

「高等専門学校生は貴重な存在」

「AI・ディープラーニング(DL)の技術を実践的に活用するためには、カメラ、通信、アクチュエータ等のさまざまなハードウェアの知識が必要になります。

AI・DL を学んだ人がハードウェアを学ぶのには時間がかかりますが、ハードウェアを学んだ人が AI・DL を学ぶのは早く、半年〜1年で習得できます。

日本の高等専門学校生はハードウェアの技術を実践的に身につけているため、高専生が AI・DL を身につければ、機械・電気・DL という三種の神器がそろった 20代の人材がいきなり日本に誕生することになり、世界的に見ても非常に貴重な人材となるでしょう。

AI・DL および起業家教育の重要性が増すなか、DCON への応募数が大きく増えています。

2019 年プレ大会以降の6年間で、DCON へのエントリー実績がある高専は全国 58 高専のうち 50 高専、約9割と裾野が広がっています。

エントリーされるアイデアや技術のレベルも年々上がっており、工夫も見られますし、毎年初エントリー校が本選に出場しているのは素晴らしいと思います。

また DCON のメンター陣は、上場を経験されている方、官公庁委員会へ識者として参加されている方、Forbes 30 Under 30 Asiaに選出されている方、経済産業省・GENIAC に採択されている方など、非常にレベルが高い起業家が集まっています。

スタートアップ業界の先頭を走っている起業家から直々にメンタリングしてもらえるのは、高専生にとって貴重な機会です」(DCON 実行委員)

DCON 主催 後援 協賛 協力

主催:日本ディープラーニング協会、全国高等専門学校連合会、日本放送協会、NHKエンタープライズ

後援:デジタル庁、文部科学省、農林水産省、渋谷区、情報処理推進機構(IPA)、日本経済新聞社

協賛:〈ゴールドパートナー〉アクセスネット、NECソリューションイノベータ、トピー工業、トヨタ自動車、日立産業制御ソリューションズ、フソウ

協賛:〈シルバーパートナー〉アイング、伊藤忠テクノソリューションズ、QUICK、さくらインターネット、セブン銀行、ソフトバンク、日本ガイシ、日本電技、ビズリーチ、丸井グループ、三菱電機エンジニアリング、村田製作所、ライオン、ロジスティード

協賛:〈ブロンズパートナー〉NTTコム エンジニアリング、小町 洋(CDLEメンバー)、Biodata Bank、有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所

協力:iSGS インベストメントワークス、ABEJA、イクシス、WiL、MPower Partners Fund L.P、クウジット、connectome.design、さくらインターネット、jig.jp、Shiftall、Spiral.AI、先端技術共創機構(ATAC)、tiwaki Co., Ltd. Japan、ディープコア、東京大学大学院工学系研究科、ドワンゴ、ニューラルグループ、FastLabel、フォトシンス、富士ソフト、フラー、ブレインパッド、ボストン コンサルティング グループ、モルフォAIソリューションズ、Liaro、Ridge-i、早稲田大学

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