関節リウマチ、尋常性乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス……。
これら、重く辛い痛みや負担がともなう難病で、免疫介在性炎症性疾患という病。
この免疫介在性炎症性疾患 患者たちが、病に立ち向かいながら力強く、強い想いを込めて描いた作品を表彰するアワードが、「アッヴィ アートプロジェクト『PERSPECTIVES(パースペクティブズ)』」。
第5回目となる今回は、2024年6月3日~12月13日に作品とそのエピソードを募集し、6歳の潰瘍性大腸炎患者から88歳のリウマチ性多発筋痛症患者まで、過去最多となる126点ものアート作品が寄せられ、厳選なる審査を経て、最優秀賞1点、優秀賞1点、審査員賞3点、佳作5点の計10点が決定。
受賞作品は、アッヴィ合同会社ホームページと、バーチャル空間上に構築した「オンライン美術館」に展示され、パソコンやスマートフォンで鑑賞できる↓↓↓
https://www.abbvie.co.jp/pickup/artproject/05.html
最優秀賞:市川孝子さん「紙飛行機の夢、もっと遠くへ」(絵画)悪性関節リウマチ 長野県在住 82歳
今回の受賞、ありがとうございました。足がだるく膝が大木のようになり、一番最初に受診した病院では“金魚鉢の水くらい水抜きしたよ。
余生はご主人の傍らで心安らかに過ごされるように”と言われて 1時間かかる電車に乗りどのようにして帰宅したのか今でも思い出せません。
その後、近くの病院で有能な医者に巡り合い、きめ細かな診察と医学の進歩もあり 25年以上の年月が経ちました。
が、この病気の姿はまるで両手を広げて襲い掛かる魔物の様で、足も手も関節が腫れ思うように動かず神経障害も出始め、悪性関節リウマチと告げられ、心臓も弱まり複数のステントも入り、間質性肺炎となりすぐ息切れして歩けず、その上利き手の腱は4本も切れ、足の指は小枝のように曲がりくねり手術し、あっちこっちの関節は全て私へ逆らい続けております。
そんな状況の中で絶望していた時、 幼かった息子の言葉 “紙飛行機でも飛ぼうとするよ”の言葉を支えに、 飛べずとも前に進もうと。
私も家の中では太陽になろうと覚悟を決めたものでした。
こうして外見のみは元気な人と思われる私に、長らく付き合ってくださっているリウマチ科主治医にはもちろん 循環器の先生も整形外科、形成外科の先生たちも心注いでくださり、驚くような医学の進歩にも目を見張り 一番辛かった日々、うまく作れなかったお弁当にも文句も言わなかった子供たちや頼まなくても手伝ってくれる夫にも深く感謝する日々です。
簡単に 【人生は一度しかないから】 という言葉をよく見聞きしますが、 アッサリロにするほど軽々しいものではありません。
ギリギリの瀬戸際で、ハッ!と思い知らされる中身を持つ重いセリフであり、この境遇に置かれた者のみが深く感じる言葉です。
この一度しかないのだなと悟ったときに私の心は 体の不調と反比例して遠く広い世界に 宇宙に軽やかに、しなやかに飛び立つことを覚えました。
ここで朽ち果てるのは人生上大きな損失と考えます。
鉛の苦悩を背負って沈むのは嫌です。
加齢も加わり 骨盤も背骨もびりびり痛い日々ですが 自分はもっとなにかできるともっと挑戦することがあると言い聞かせ日々過ごしております。
退屈する日はありません。
このような病人に元気を下さる催しがもっと身近にあれば(今回はかかりつけ医のリウマチ科の先生に勧められました) 病める人たちの励みにもなると思います。
おかげさまで大きな喜びと励ましをいただきました。
(市川孝子さん)
優秀賞:古賀綾乃さん「おなかのなかのうみ」(絵画)潰瘍性大腸炎 神奈川県在住 6歳
このえは「たくさんお水をのんだら、おなかのかじがきえたらいいのになー」とかんがえてかきました。
えの中のわたしはお水をたくさんのんだので、おなかがうみになって、たべたものはさかなになっておよいでいます。
しょうらいはキャラクターをかんがえるしごとをしたいので、オリジナルのイチゴのさかなとかをかんがえました。
この「え」でゆうしゅうしょうがとれてうれしいです。
かいようせいだいちょうえんはおなかがいたくなることもあってつらいけど、これからもがんばります!
先生、アッヴィ アートプロジェクトをおしえてくれてありがとうございます。
あと、みんながよろこんでくれてうれしかったです。
(古賀綾乃さん)
この度は、素晴らしい賞を頂きありがとうございます。
絵を描いたり工作することが好きで、食べることも大好きで、注射や点滴は大嫌いだから違う治療法があればいいのに…という綾乃らしさが詰まった作品を評価して頂けたことを、とても嬉しく思います。
4歳で潰瘍性大腸炎を発症してから1年半ほどは病状が安定せず、腹痛と頻回の下痢で外出もままならないような日々でしたが、現在は合う薬が見つかりほとんど病気を意識することなく生活できています。
病院でも学校でも多くの方々に支えていただいているおかげです。
本当にありがとうございます。本人も本当によくがんばりました!
今回の受賞を励みに、今後もやりたいことにはどんどん挑戦していってほしいと思います。
(古賀綾乃さんの母)
審査員賞:J.Aさん「ぼくだけの光と影」(ワイヤーアート)潰瘍性大腸炎 神奈川県在住 17歳
私は昨年の夏高校2年生にして難病、潰瘍性大腸炎と宣告された。
しかし、患ってから約1年、私自身は難病になって良かったと思う。そう思いたい。
この表現は私より苦しむ同病、難病と闘っている方々に反感を買ってしまうだろう。
だが私は病気のおかげでこれまでのサビのないピカピカな体、そして13年続けてきたサッカーも何もかもが当たり前ではないと気づけた。
そして「なって良かった」と思わなければやっぱり過去に「戻りたい」と思ってしまうし、今の自分を好きになれない。
今のボロボロなサビついた私になんとかかかるビー玉のように小さい光はサッカーだ。
私は幸運にも体調が良ければサッカーができる。人生最後になるかもしれない高校でのラスト1年、チームメイトと同じ気持ちで同じ目標に向けてボールを追いかける。
今なんとかかかっている小さな光を大きく、強く、頑丈にし、今の自分を明るく照らせるようになりたい。いやなる。
同病や難病で悩む患者さんが少しでも前向きに、自分のことを肯定できるようになって頂ければと思います。
この度は、輝かしい賞を頂戴し、誠に光栄に思います。ありがとうございました。
(J.Aさん)
審査員賞:竹原優李さん「希望のかたち」(絵画)潰瘍性大腸炎 宮崎県在住 23歳
この度は、第5回アッヴィ アートプロジェクト「PERSPECTIVES」の審査員賞に選んでいただきありがとうございます。
私は学生の頃、コロナワクチン接種後にからだの不調があらわれて、「指定難病 潰瘍性大腸炎」と診断されました。
今まで何事にも完璧を目指して頑張ってきた私にとって、難病を発症したことにより、これまで培ってきた努力が一気に無駄になったようで、無気力な状態が続いておりました。
心も身体も一気に弱くなっていく自分が嫌になり、否定的な気持ちになる毎日でした。
そして、家族や主治医、学校の先生、友だちなどまわりの方々の支えもあり、諦めかけていた幼い頃から憧れていた職業として就職はできたものの、長期間の入退院を繰り返し、同世代と同じような生活ができないことに憤りを感じていました。
そんなときに医療機関で、アッヴィ アートプロジェクトの応募用紙を見つけ、退院後の自宅療養中に夢中になれるものを見つけたいと思い、作品づくりを行いました。
完治は難しいとされている難病であり、見た目にはわかりづらい内部障がい者は社会から理解されない場面にたくさん出会い、生きづらさを感じてしまうかもしれません。
そして、難病と診断されたことで、一瞬にして普段の生活ができなくなってさまざまなものが制限され、健康な同世代の方々と同じような生活をすることもなかなか難しいです。
私の場合は、食べられるものが制限されるため、自分の好きなものをお腹いっぱい食べることができません。
この先も、悔しい思い、辛い思い、痛い思いをいっぱいすると思います。
「また今度」は、いつできなくなるかわからないのだと身をもって知りました。
だからこそ私は、普段から後悔のないように、できないことに目を向けるのではなく、今できることを大切にしてさまざまなことに挑戦していきたいです。
そして、この作品のように、明るい未来に希望をもって首を長くして待ち、しっかりと自分の体調と向き合いながら今まで以上に人生を楽しんでいきたいです。
改めて、審査員賞をいただけたこと、とても嬉しく思います。本当にありがとうございました。
(竹原優李さん)
審査員賞:岩本紗和さん「扉をあけて ~羽とともに~」(工芸)若年性特発性関節炎(小児リウマチ)、非感染性ぶどう膜炎、痛覚変調性疼痛 茨城県在住 12歳
この度は私の作品を選んでいただきありがとうございます。
私は赤ちゃんのときから病気で手も足も全部が痛いのが当たり前でした。
だけど、私もみんなと同じように歩いたり、走ったり、友達と遊んだりしたいです。
そのためには薬やリハビリをがんばってやらないといけません。
この作品は周りのみんなと同じように遊べるようになった自分自身がトビラの向こう側で歩いたり、走ったりして遊べるようになっています。
今までガマンしていた薬もリハビリもやらなくてよくなり、本当にみんなと同じようなことができています。
そんな未来が待っていたらいいなと思いながら、この作品を作りました。
これからも全力でがんばっていきたいです。
(岩本紗和さん)
佳作:小林侑里香さん「『あなた』という私と『自分』という私との狭間が連れていく場所、私はここで生きる」(絵画)アトピー性皮膚炎 東京都在住 18歳
私にはこの病気の主治医はいませんでした。
薬を処方して下さった先生はいらっしゃいましたが、病院も薬も嫌いで、通うことはせず、薬に頼らないで治そうとしました。
精神的なものから向き合おうと思ったんです。
そしてたどり着いたのがアートセラピーでした。
私自身の無意識へアクセスする行為は、人から見たら意味がないように見えるかもしれませんが、私にとっては人生においてとても重要なことで、生命線です。
今は絵のおかげでだいぶ症状が良くなっています。
なので、このような形で私の絵を選んでいただいて本当に感謝しています。
同じように苦しんでいる方々、私たち人間の中には否定すべきじゃない「個人」がいます。
その人を大事にして思うまま生きてほしいと思います。
(小林侑里香さん)
佳作:久保田結さん「ふたつの心」(絵画)尋常性乾癬 千葉県在住 17歳
この度は、私の作品を選んでいただき本当にありがとうございます。
この賞をいただけてとても嬉しく、何よりも自信につながりました。
私は水泳を続けており、中学3年生の頃、爪がボロボロに変形してしまいました。
毎日の練習でプールに入るたびにしみてしまい、大会でも泳ぎ切るのが精一杯でした。
この作品には、痛みと闘いながら思うように練習できず、希望を持てなかったときの気持ちと、それでも結果を出せた嬉しさの両方を表現しました。
今は体調も良くなり、症状も落ち着いています。
この経験を通して、病気と向き合いながら、自分自身を大切にすることの大切さに気づくことができました。
最後になりますが、主治医の先生方をはじめ、学校の先生方、そして応援してくださる皆さまに心より感謝申し上げます。
佳作:吉田美智さん「ループ」(絵画)アトピー性皮膚炎 東京都在住 22歳
この度は私の作品をお選びいただきありがとうございます。
私の作品を通してアトピーへの理解や私のアトピーへの思いを多くの人に知ってもらえる機会となると思います。
一言にアトピーと言っても症状の重症度は人それぞれですが、みな同じような悩みがあると思います。
痒みで集中ができない、アトピー特有の肌の傷やジュクジュクした肌などで自信が持てないなど、この悩みは完全に治るまでずっと続いていくものだと思います。
最近は医療技術も進歩し、アトピー治療法もたくさん出てきています。
しかし医療の力を借りてもどうしても治りきらないのも事実だと思います。
自分なりにアトピーの治療に取り組む必要があると考えており、今後も試行錯誤しながらアトピーと向き合って行きます。
(吉田美智さん)
佳作:高崎信子さん「孤独なイエロー」(絵画)掌蹠膿疱症 東京都在住 60歳
この度は、私が制作した「孤独なイエロー」を審査していただき、賞までいただけて、この上ない悦びです。
再発を繰り返しており、「一生治らないのかも‥」と、弱気になって家に閉じ籠る日々が続いていた時、受賞の知らせを受け、再び物事に対する意識や興味を取り戻せた気がします。
銅版画の制作も復活しています。そして、疾患も以前よりだいぶ良くなって来ました。二重三重の悦びです。
この素晴らしいプロジェクトのタイトルである「PERSPECTIVES」(パースペクティブズ)日本語に訳すと【展望】に心から感謝申し上げます。
今後もアートを通じて希望と発想と制作意欲を保ちつつ、免疫疾患を持つ皆様方と共に乗り越えて行きたいです。
この受賞により、まさに大きな展望を抱けた事は間違いありません。
その立役者である「アッヴィ アートプロジェクト」がさらに広く認知され、多くの患者さんの励みになる事を願います。
ご尽力くださいました、関係各位の皆様方、誠に有難う御座いました。
(高崎信子さん)
佳作:大槻陽翠さん「わたしはくらげになりたい」(粘土)若年性特発性関節炎(小児リウマチ) 三重県在住 7歳
この度は素敵な賞をいただき、ありがとうございました。
3歳2ヵ月頃のある日、突然足が痛くて歩けないと言い、若年性特発性関節炎と診断を受けました。
しょうをもらえてうれしかったです。
クラゲを作るために水ぞくかんに行きました。楽しかったです。
えのぐをぬるときがとっても楽しかったです。
手がいたくてえのぐがだせなかったのでお兄ちゃんがだしてくれました。
はみがきこをだすのも、けしごむをつかうのも、かいだんをのぼるときもいたいです。
血のけんさもいやだし、くすりをいつものむのがいやです。
でもしょうがないです。
休みじかんにおにごっこをしたいです。
体いくもしたいです。
うんどう会もでたいです。
できないことがいっぱいだけど、いきているだけでしあわせです。
できることもいっぱいあります。
クラゲになったらいたくないから、ぼうけんやおにごっこもしたいです。
みんなのいたいのがなおりますように。
美術家 佐久間あすか審査員 総評
今回もとても素晴らしい作品ばかりでした!
応募数は過去最高となり、また応募者の年齢層も厚く、幅広い方に参加いただきました。
これも、この活動が広く社会に周知されてきた証だと嬉しく思います。
総評としましては、全体的に個性豊かでバラエティに富んだ作品が多かったことに加え、質の高さに驚きました。
作品素材にも工夫があり、従来の絵画技法にとらわれず、斬新な材料による表現が多く見られ、鑑賞者の心を強く打つ作品が多かったです。
病と闘いながらの制作は大変なことだと思います。
しかし、病をバネに力強く誠実に向き合うことで、どれだけの人が感銘を受け、勇気をもらえるか計り知れません。
アートにはそういった力があると、今回の応募作品を通してあらためて学びました。
またいつかどこかで、皆さんの作品に出会えることを願っております。
素晴らしい作品をありがとうございました。
(佐久間あすか審査員)
免疫介在性炎症性疾患とは
免疫応答の調整不全により組織に炎症を生じる疾患の総称。
進行性かつ身体機能に負担・制限がかかる疾患が含まれ、心身に大きな影響を及ぼすこともあると考えられている。
具体的な疾患として、関節リウマチ、尋常性乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデスなどが含まれる。
アッヴィ アートプロジェクト『PERSPECTIVES(パースペクティブズ)』とは
アッヴィ アートプロジェクト『PERSPECTIVES(パースペクティブズ)』は、免疫介在性炎症性疾患の患者が、疾患と向き合いながらも自身の PERSPECTIVES(視点、考え方、物の捉え方という意味)で捉えた心とカラダの変化、日々の想いや感じたこと、新たな目標や希望などを、絵画や彫刻、立体造形、陶芸、写真、書道、手芸などのアート作品に自由に表現していただくアートプロジェクト。
患者の創作活動から生まれた作品を通して、より多くの方に疾患について知っていただくきっかけをつくり、患者さんへの理解につなげることを目的に、2015年より開催している。
アッヴィは、本プロジェクトを通じて、ひとりでも多くの人が患者の想いを理解し、支援できるよう、今後も継続的なサポートを行っていくという。
革新的な医薬品の創製
「アッヴィのミッションは現在の深刻な健康課題を解決する革新的な医薬品の創製と提供、そして未来に向けて医療上の困難な課題に挑むことです。
一人ひとりの人生を豊かなものにするため次の主要領域に取り組んでいます。
免疫疾患、がん、精神・神経疾患、アイケア、さらに美容医療関連のアラガン・エステティックスポートフォリオの製品・サービスです。
日本においては主に、免疫疾患、肝疾患、精神・神経疾患、がん、アイケアの領域、さらに美容医療関連のアラガン・エステティックスのポートフォリオで、製品の開発と提供に取り組んでいます」
◆アッヴィ
https://www.abbvie.co.jp/