「うちの犬はよくお腹を見せるんですけど、そこにわたしたちが触ろうとすると噛みつかれる」
「それは親愛を示しているんだけど、触ってほしくはないという気持ちが犬にあると思います」
―――そんな、動物と人間がいっしょに暮らしているなかでの「なんで?」が、「そうなんだ!」に変わる交流会が、麻布大学で定期的に行われている。
題して「サイエンスカフェ」。中学生や高校生、近隣の住民、ペットが大好きなファミリーなど、誰もが無料で参加できる大学イベントで、麻布大学の最先端研究領域「ヒトと動物の健康社会をめざす動物共生科学」のなかの3つの研究分野を、第一線の教授陣たちが紹介し、参加者みんなで自由に語り合う場として注目を集めている。
冒頭の言葉は、参加した家族の感想。彼女たちの話を聞いてくれたのは、「ヒトとイヌのかかわり方と相互作用のメカニズムを明らかにし、人間の健康を支援する」をテーマにした研究チームの代表、菊水健史教授(獣医学部 動物応用科学科)。
菊水健史教授(獣医学部 動物応用科学科)は、「ヒトとイヌの動きを長期的にセンシングしつつ、獣医医療による人間の健康をセンシングしながら、人間と犬のつながりを支える遺伝基盤を解明する」といった研究テーマを解説。
また、上家潤一准教授(獣医学部 獣医学科)は、「さまざまな機能障害を引き起こすといわれているアミロイド(異常蛋白質)に着目。ほ乳類のAAアミロイド症を比較し、共通する病態からヒトのAAアミロイド症の原因遺伝子を明らかにする」という研究テーマを紹介した。
さらに、阪口雅弘教授(獣医学部 獣医学科)は、乳児期にペットをいっしょに飼っていると、学童期に気管支喘息になる確率が低くなるという研究事例を紹介し、「アレルギー抑制細菌の発見は、アレルギーの新規治療法の開発につながる。また、犬を飼うことで人間の子どもたちの健康を促進していることを“”学的に証明したことで、犬と人間による共生社会がまた前進した」と伝えた。
このように、それぞれの研究分野の最新情報を伝える場でもあるので、一般参加者にはやや難しい話題もあるけど、後半のフリートーク時間にいろいろと教授陣に聞けて、最後は冒頭のように、「うちで飼ってる犬・猫の疑問点、不安点」まで聞けちゃうところが、このサイエンスカフェの人気の理由。
―――この日は麻布大学のオープンキャンパスも開催され、大学受験をひかえた高校生や、「ペット大好き」「将来、獣医になりたい」といった中学生、「うちの犬について聞きたいことがいっぱいある」という近隣住民たちで、会場はほぼ満席。
「この麻布大学のオープンキャンパスとサイエンスカフェに参加したくて、四国からやってきた」という女子高生も「わたしも犬が大好き。きょう菊水先生といっぱい話して、いま飼ってる犬の気持ちがすごくわかりました」と笑顔。
麻布大学の次回オープンキャンパスは、大学祭と同日開催の10月26・27日開催。今回のサイエンスカフェに似たイベントも開催予定というから、気になる人は公式ホームページをチェックしてみて。
tokyo chips 編集部