東京で「生サバ」が食べられるなんて

そんな九州人の歓喜の声が聞こえてきそうだ。あす2023年3月3日、新宿に「博多小皿鉄板べっぴんしゃん」がオープンする。最寄り駅は東京メトロ丸ノ内線新宿御苑前駅。赤坂に本社を置く「やる気カンパニー」が手がける。

同社はこれまで「記憶に残る商品や人財を世界に発信していく」をビジョンに掲げ、ハンバーグ、天ぷら、おでんなど様々な店舗を展開してきた。6店舗目となる「博多小皿鉄板べっぴんしゃん」は、一皿一皿アラカルトで注文できる斬新なスタイルで提供する。店舗は仕事帰りのサラリーマンも家族連れも入店しやすいよう、モダンでカジュアルな雰囲気とした。

使用しているお皿はほとんどが有田焼だという

食材も九州から旨いものを取り寄せる。味噌、醤油、ゆず胡椒、調味料はもちろんのこと、提供する料理も「一口炊き餃子」や「日田焼きそば」など、九州の旨いものを知っていれば「おっ」と思うものばかり。お通しで熊本は天草産のアカモクが出てくるのも驚きだ。

中でも注目を集めたのは「天然ごま鯖」である。福岡の柳橋連合市場にある「右近商店」から取り寄せた天然鮮魚を生、焼、揚と様々な調理法で味わえるのがウリ、ということらしいが、この「天然ごま鯖」は関東ではなかなか食べられない「生サバ」なのだ。

九州の人間が東京に越して来たとき、「生サバ」が食べられないことに驚く――という話を聞いたことはないだろうか。

関東人の感覚はこうだ。サバにはアニサキスがいるので一度冷凍したものを解凍して食べる。それが常識であり、東京のお店で「生サバ」が提供されるのは珍しい。しかし同じサバでも関東と北部九州では事情が異なる。あちらのサバはほぼ内臓にしかアニサキスがおらず、調理過程でほぼ除去できるため、刺身でも安全に食べられる。福岡などでサバの刺身が定着した理由はここにあるのではないか、とも言われる。

「博多小皿鉄板べっぴんしゃん」では、九州の新鮮な天然生サバを鮮度の高い状態で提供することにこだわる。もちろん、どうしても獲れないときは他の魚になることもあるそうだが、基本的には生サバが食べられる。九州の人間でなくともお勧めしたい一品だ。

必ずしも九州産の食材ばかりではなく、たとえば日田焼きそばでは四国の阿波牛が使用され、同じ阿波のたむらのタマゴを載せた。なお、今後九州産の「佐賀牛 なかむら牛」を使ったステーキなども提供する

もちろん、居酒屋というからには酒の充実ぶりも見逃せない。今回は「クラフトマン多田」の麦焼酎を水割りでいただくことにした。博多の麦焼酎専門の蔵元「天盃」が料理との相性をメインに考えたお酒で、食中酒として美味しい料理との組み合わせが楽しめる。

天盃といえば「クラフトマン多田スパニッシュオレンジ」と「コーヒースペシャリテ」が2022年10月15日からJR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」のメニューにも選ばれており、その実力は折り紙付きといえる。今回いただいた麦焼酎もまた水のようにすいっと飲めて、料理の味を一段と美味しく感じさせてくれた。

やる気カンパニーの山本高史代表取締役によれば、お酒のラインナップは季節感を重視して揃えているそうだ。常に同じ酒を置くのではなく、その時々の「美味い酒」が楽しめる。特にワインは福岡のワインショップから送ってもらっているということで、ワイン好きはその品揃えと価格にそそられるかもしれない。

おすすめ記事