未来の賃貸マンションはこうなる―――。

そう想わせる、国内初 建物運用時 CO2 排出量実質ゼロやウェルビーング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)を実現する賃貸マンションが、千葉県市川市本行徳に出現した。

その名も「サステナブランシェ本行徳」。手がけたのは、マンションの設計・施工・管理・リフォーム・大規模修繕・長寿命化・建替えなどを手がける長谷工コーポレーション。

地球環境に配慮した建物改修と、新たな価値を創造するための実験住戸で、まさに未来型マンションの総合展示&試験場。

今回は、この「サステナブランシェ本行徳」(地上5階建 36戸)の“常識を超えた環境性能”に注目してみる。

居住型実験住宅で検証・データ収集し「暮らしの最適化」へ

「サステナブランシェ本行徳」は、既存の企業社宅を長谷工が買い取り、長谷工リフォームが設計施工した「国内初 建物運用時 CO2 排出量実質ゼロ」という賃貸マンション。

全36戸のうち13戸を、未来をつくる居住型実験住宅「RESIDENCE LABO」(レジデンスラボ)として建物内に設置し、それぞれの部屋でさまざまな検証・データ収集を行っていく。

具体的には、建物の長寿命化技術、省エネ技術、ウェルネス住宅技術のほか、IoT 機器や AI 技術を最大限生かし、LIM(Living Information Modeling)を通じた「暮らしの最適化」を実現すべく、実際の居住環境から得られるさまざまなデータを新たな住まい価値創造に向けて研究・技術開発に活かしていく。

電気・ガス併用インフラをオール電化に刷新、太陽光も有効活用

「サステナブランシェ本行徳」の屋上に設置している太陽光発電は、勾配屋根の角度に合わせて南東面、北西面の両面に設置。

発電量の平準化を図るとともに、反射光を利用できる両面受光型の太陽光発電パネルとすることで発電量の増加も図った。

壁面は、太陽光の反射による眩しさを低減するための防眩加工を施した太陽光発電パネルをサイディングと組み合わせて配置し、デザイン面にも配慮。

また、太陽電池モジュールとLOW-E膜をガラスで挟み込んだ合わせシースルー手摺太陽光ガラスを採用。

ファサードデザインに合わせてガラス寸法を調整し、手摺笠木部分に配線を納めている。

最上階のガラス手摺は、光を透過するシースルータイプを採用し、スペースを有効活用した。

純水素燃料電池でCO2 排出ゼロ・電力安定化へ

屋外共用部には、発電時に CO2 排出がない、発電効率56%の高発電効率純水素型燃料電池5kW パナソニック建材エンジニアリング製)を設置。

この水素燃料電池で発電した電気は、共用部・専有部の一部へ電力供給。停電時も水素で発電した電気がフォローしてくれる。

セントラルエコキュートで太陽光発電を自家消費

他要項発電で日中に発電した電気で給湯・貯湯し、夕方から夜に温水を利用することで太陽光発電エネルギーを有効活用。

余剰電力の活用で購入電気も減り、電気料金ダウン・電力供給安定化が実現する。

テレビ朝日との SDGs 施策、サステナブルアート

テレビ朝日が20223年から SDGs 施策として取り組む「art to ART Project」とコラボし、番組廃材と建設廃材(既存樹の松の木など)をアート内装材として採用。

画像のような番組で使用したフェルト材を壁面アートにアップサイクルしたり、松の木建具を設置したりと、廃棄物削減にむけた手法のひとつとしてその有効性を検証していく。

カネカ有機EL照明や調光制御システムも

専有部には、低照度でも視認性が高く、影ができにくいカネカ有機EL照明を採用し、住民の脳波やメラトニン分泌量を測定。その効果を検証していく。

また、共用部の省エネ策として調光制御システムも採用。共用廊下の照明の明るさを、歩行安全性を確保することを前提に、自動制御。周辺への光害対策もめざしていく。

さらに再エネ自立オフグリッドとして、住戸内のエネルギー消費量や温湿度、CO2濃度、日用品の残量、睡眠の質などの生活情報を一元管理し、テレビに投影し見える化し、スマートな暮らしを住民たちと共有しながらアップデートしていく。

―――こうしたスマートホームシステムを導入した未来住宅創造に向けた居住型実験住宅「サステナブランシェ本行徳」には、このほかゲリラ豪雨時の排水管逆流防止システムや、全館空調システム「withair CUBE」、遮音建具効果検証、風環境シミュレーション、構造ヘルスモニタリングシステムなどで、「未来の集合住宅の可能性」をテスト検証していく。詳細は、公式サイトへ。
https://www.haseko.co.jp/sustainabranche/

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