産業界に入り込むインダストリアルメタバースや、世界じゅうのファンを巻き込む観光戦略としてのイマーシブメディアは、いまどこを走り、どこへ向かうか―――。
そんな最新トレンドをキャッチできるイベントが、東京・虎ノ門ヒルズで2月22日に開催され、多くの業界関係者や研究員、学生たちが注目した。
それが、Digital Space Conference 2024
現実空間(リアル)とデジタル空間(バーチャル)の融合で、暮らしはどう豊かになるか。
メタバースをはじめとしたデジタル空間に、生成AI や Web3 といった技術をかけ合わせると、どんな近未来がみえてくるか。
そんな新たな可能性を発見する場が、「Digital Space Conference 2024」(2/22 @虎ノ門ヒルズ)。
主催は一般社団法人日本デジタル空間経済連盟(代表理事:北尾吉孝<SBIホールディングス株式会社 代表取締役社長>)。
当日のセッションでは、時間ごとにトークテーマを設け、国内外で活躍する有識者が登壇し、パネルディスカッションを展開。
企業講演では、各企業の代表者が登壇し、最新ビジネス動向やトレンド、将来予測などを紹介した。
ここで今回、注目したのは、「インダストリアルメタバースの現在と未来」と「電通グループ横断組織「XRX STUDIO」が考えるイマーシブメディアの可能性」。
日立の鉄道メタバースを東武鉄道N100系を例に解説
NVIDIA エンタープライズマーケティング 田中秀明シニアマネージャと、日立製作所 研究開発Gr. 先端AIイノベーションセンタ 影広達彦 主管研究長、日本デジタル空間経済連盟 加藤諒 事務局次長は、「インダストリアルメタバースの現在と未来」についてディスカッション。
日立製作所 研究開発Gr. 先端AIイノベーションセンタ 影広達彦 主管研究長は、東武N100系 スペーシア X を例に、日立が手がけるインダストリアルメタバース(鉄道メタバース)の現在と未来について解説。
日立の現場拡張メタバースは、鉄道(鉄道メタバース)・工場・電力小売(現場拡張メタバース)などに建築物等の現実空間のアセットをデジタル空間上に再現し、さまざまなデータをデジタル空間上に蓄積し、各種シミュレーションやオペレーションの管理等に活用するインダストリアルメタバース。
同一メタバース空間上でデータを共有しながら運用・保全・更新
たとえば鉄道メタバースは、メタバース空間に運用・保守現場を構築し、運用からメンテナンスや復旧・更新作業までをメタバース空間内でAIアバターなどと確認・相談しながらすすめるようなイメージ(画像:日立製作所)。
たとえば日立が製造した東武鉄道N100系スペーシアX も、製造元の日立製作所やサプライヤー、東武鉄道、車両メンテンナンス関係者などと同一メタバース空間上でデータを共有しながら運用・保全・更新していくという近未来を、教えてくれた。
日立 現場拡張メタバースのキーワードは「5D拡張メタバース」
この日立 5D拡張メタバース は、空間3D+時間+セマンティック semantic(意味)を組み合わせたソリューションで、この“5D”をもって現場拡張メタバースを推進していく。
たとえば1月元日に起きた、令和6年能登半島地震の発生直後、周辺を走る新幹線は迅速な復旧を遂げて日本海側の大動脈を維持したことについて、こう伝えた。
「こうした復旧現場でも、人的リソース、人的資源と技術が優れているからできたこと。
この人的資源・技術で蓄えられたノウハウ・データをみんなで共有して、技術継承やボトムアップにつなげるべき。
日立の現場拡張メタバースも、現場の人たちが『これを使ってもっと正確に、より効率的に、アップデートしていくぞ』と思っていただかないと、社会実装はなかなか難しい」
また、日本デジタル空間経済連盟 加藤諒 事務局次長は、「BtoB と BtoC の垣根を低くし、BtoB のインダストリーメタバースソリューションを、C向けに展開していくこともありじゃないか」と語り、こう続けた。
「たとえば、日立の鉄道メタバースを鉄道好き・ファンに公開するとか、逆もしかり。熟練工の技術を、新人や若手現場担当者がVR上で楽しみながら習熟していく。たとえばゲーミングなどで競いながら技術を習得していくのもいい」
電通グループ XRX STUDIO が考えるイマーシブメディアの可能性
次に、電通メディア・コンテンツ・トランスフォーメーション室 イマーシブメディア開発部 三邊立彦GM、電通デジタル トランスフォーメーション部門 野中教恵 ディテクター、公益財団法人東京観光財団 観光事業部プロモーション担当 今井完 課長が登壇し、「電通グループ横断組織「XRX STUDIO」が考えるイマーシブメディアの可能性」についてディスカッション。
電通グループ XRX STUDIO(https://www.xrx.jp/)は、国内電通グループ5社などが合同で立ち上げた、XRトランスフォーメーションを推進する、共創型グループ横断組織。
電通 XRX STUDIO では、事業構想からマーケティングソリューション開発、UI/UX開発、運用、PDCAまでをワンストップで統合的に提供し、企業の事業成長を支援。
国内電通グループ各社が持つ多様な人材と専門性に、先端テクノロジー開発企業などのビジネスパートナーの力も加えることで、ビジネスやライフスタイルのカタチをつくり変えていく XRトランスフォーメーション を推し進めていく。
Roblox や ZEPETO と手を組みメタバースワールド構築&拡張、広告枠を
東京観光財団 が展開する、国内・海外ファン向け東京観光魅力発信サイト「HELLO!TOKYO FRIENDS」は、電通デジタルが手がけたプロジェクトのひとつ。
電通 XRX STUDIO では、TV・新聞・雑誌・ラジオの4マスや、WEBメディア、ソーシャルメディアなどと違う、「ユーザーが主役でいつでもどこでも楽しめる・感動できる」というイマーシブメディアを構築・展開。
そこに大きく入り込むのが、没入型ソーシャルプラットフォーム Roblox(ロブロックス)や ZEPETO(ゼペット)など。
「今後、こうしたプラットフォームを中心に、さまざまなプレイヤーとエコシステム構築を強力にリードし、IP・クライアント各社のメタバースワールド構築と拡張、そしてプラットフォーム側との広告枠バイイングビジネススキーム構築を並行して推進していく」
電通 XRX STUDIO、In GAME トライアルや共同勉強会を開催
電通 XRX STUDIO は、「イマーシブメディアがマーケティングやビジネスに活用できるか」を判断するべく、実際のワールドでブランドコミュニケーションをトライアルできる「In GAME トライアル」や、共同勉強会(リアル実施)を開催。
In GAME トライアルでは、トライアルの場として活用できるワールドを用意し、実際にワールド内で自社ブランドを訴求する実証実験に参加できる。
共同勉強会(計4回)では、In GAME でトライアルし、そこで得られる知見も共有できる。ステージ上では、画像のように参加メニューや参加方法、プラン料金なども公表された。
―――多くの来場者でにぎわった、日本デジタル空間経済連盟主催「Digital Space Conference 2024」(2/22 @虎ノ門ヒルズ)。
その展示・商談ブースでは、SBIホールディングス「Web3・生成AI・メタバース(VR/AR/XR)のCorporate Venturing+Business Matching」、NTTデータ「NTTデータが拓くデジタルスペース新時代(メタバース決済・データ分析ソリューション・分散型ID(DID/VC))」、TOPPANデジタル「デジタルトラストによるリアル・バーチャルを融合させたアイデンティティ管理及びその活用」、トランスコスモス「アバターを活用した接客体験のDX推進サービス」、野村ホールディングス「「今さら聞けないWeb3」 Web3領域学習アプリ「Web3ポケットキャンパス」の展示」、FANY(吉本興業ホールディングス)「エンタメ×テクノロジー展示」、ミンカブソリューションサービシーズ「デジタルツイン技術や、MW3Wが持つブロックチェーン基盤とNFTを組み合わせた新しいプロダクトのご紹介」、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のPR」などに注目が集まった。