何のこっちゃ? と思いますが「快適に過ごす」という人類史上営々と続いてきた「住居の定義」を軽やかに嘲弄する態度が「販売」されています。”ある種の芸術的態度”とでも言うべき”快適に生きることの否定=ダダイズム”を購入することが可能なのです。高度資本主義もここまできたか、と半分呆れ、半分感動します。

MEMU EARTH HOTEL(所在地:北海道広尾郡大樹町芽武158-1)は、隈研吾氏監修による「国際大学建築コンペ」の最優秀作品群の一つ、オスロ建築デザイン大学設計による「INVERTED HOUSE」(コンセプト:厳しい寒さを楽しむ家)の販売を2019年7月1日(月)より開始しました。

《MEMU EARTH HOTEL》
MEMU EARTH HOTELは、環境に配慮した寒冷地実験住宅施設「メムメドウズ」内に建てられたサスティナブル住宅を活用した、“持続可能なくらし”を体験する宿泊施設です。当ホテルでは、リゾートホテルのような、至れり尽くせりのサービスによる非日常的な体験ではなく、地域資源・地域環境との共存をテーマにデザインされた実験住宅=家(home)に、”住まう”ことで得られる感覚や体験をサービスします。

都市生活では気づくことのできない様々な資源(音、香、光など)の再認識を通じて、Sence of Wonder(自然等に触れることで受ける、ある種の不思議な感動、または不思議な心理的感覚)を養うことで、自分を取り巻く環境とくらし方を見直すきっかけをご提案します。

「地球に泊まり、風土から学ぶ」をコンセプトとする、地域資源と人との共生について考え、体験とデータ化を通じて世の中に発信していくプロジェクト型のホテル。

先進的な建築と十勝の無垢なる自然を、原体験として楽しむというサービスの一面に加え、“資源再読”をテーマとしSDGsに向けた様々な研究者との協業し、ホテル利用者から得られるデータを基にした社会実装のプロセスを国内外に向けて発信していく活動を行っています。

公益財団法人LIXIL住生活財団によって2011年から2018年まで続けられていた環境に配慮した寒冷地における実験住宅施設「メムメドウズ」内に点在する、隈研吾・伊東豊雄といった日本を代表する建築家によって手掛けられた様々な建築物や、同プロジェクト内の「国際大学建築コンペ」受賞作品を、宿泊及び体験施設として利活用します。

《建築の特徴》
・季節によって性質を変える4つの空間
まず人びとは交差する壁によってつくられる“Garden Room”と呼ばれる第一の部屋から建築に近づきます。この庭は冬には雪を集め、囲われた雪は壁によって守られ春先まで残り続けます。扉を潜ると、この家の主室である “Outside Living Room” に辿り着きます。床の一連の段差は人びとを暖炉に誘い、大きな屋根は周辺の豊かな環境や夕日への繋がりを作ります。隣接する“Room for Cooking”は急勾配の屋根によって、強い風から守られます。交差する壁に沿って細い廊下を進むと、“Inside Room”という最も外部環境から守られた部屋に辿り着きます。空間は細く、暗く、暖炉によって暖められます。 これら屋内と屋外の空間の性質は季節によって変化します。屋内の空間は、冬場は最も温かい空間となり、夏場は暗く、最も涼しい空間となります。反対に、屋外の空間は冬には最も厳しい空間となり、夏には最も快適な空間となります。

・交差する壁と長い屋根がつくり出す、外部環境を楽しむ体験
“Inside Room”にかかる長い屋根は西と北西から吹き付ける強風から空間を守り、壁の反対側にある“Garden Room”に雪を集めます。交差する壁は南と西に面し、影をつくり、雪を長持ちさせます。寝室は東に面し、日の出を楽しめ、西からの冷たい風から部屋を守ります。“Outside Room” は西に面し、日の入りを楽しめます。
“Inverted House”は地面の上に水平に広がる建築として設計されており、このコンセプトをより明確なものとするために、周辺の地面を切り開き、水平な地盤をつくっています。建築は周辺を取り囲む柵に対し角度を持って配置されることで、敷地境界からも切り離されます。

《暮らし方の提案》
自然と文化(=人の営み)の境界線である壁を取り払い、ほぼすべての家の機能が外に造られた不思議な家。
寝室は東の空に面した何もない空間。朝日に向かって突き出した傾斜のある天井を除けば、外界から身を守るものは無く、ほとんどが自然そのもの。外で「眠る」という体験を通じて、都会では感じられない様々な感覚を研ぎ澄ますことができます。北西に面したリビングでは、夕日が大地に沈んでいく光景に身をゆだねながら、全身で光・風・大地の香りを感じることができます。
また、自然の領域での暮らしに不安を感じる方のために、Inside roomという唯一の室内空間があり、ここでは薪をくべながらコンセプチュアルな窓を通して外の景色を眺めたり、夜にはマットを敷いて快適に眠ることもできます。
「内」と「外」との逆転。不思議な感覚を通じて、自然の暮らしをお楽しみください。

《宿泊に関するご注意》
本物件では、文化(=人間的な営み)と自然を逆転させた体験を通して、Sence of Wonderを養っていただくことを目的としております。屋外生活における、天候・季節の変化による気温の高低、草花の香や虫や野生動物との出会いなど、自然界の中にある様々な事象も体験としてとらえていただきます。ご理解いただける方のみ、ご予約をお願いいたします。

《宿泊メニュー》
【-Less is More- 究極の素泊まりプラン】 30,000円 /人~
自然と文化の境界線を取り払い、名実ともに身も心も屋外で過ごすことで自然との対話を感じる時間を過ごしていただくプランです。通常、セットでご用意させていただいているレストランでのお食事が付かず、お部屋の屋外キッチン(Room for Cooking)、または焚火をご活用いただきご自身で自由な時間にお食事を作り、召し上がっていただきます。(別料金にて地域の特別な食材を販売。無料で料理用具・カトラリーに加え、シェフ監修レシピもご用意しております。)

【Sleep in outside – 建築と野営 プラン】 40,000円 /人~
外で寝る。自然の中に身を置き、守られてない空間をベッドルームに過ごしていただく。野営を通じて、敏感な感覚を取り戻していただきます。ルームサービスとして、季節に合わせた防寒具・寝具・蚊帳などはご用意させていただきます。※お食事はレストランにてお召し上がりいただけます。

詳細はサイト(http://memu.earthhotel.jp)をご覧ください。ふつ〜に暖かい宿泊住居プランも複数用意されています。


ホテルへのアクセスが、空港でレンタカーを借りるか予約時に送迎サービスを頼む以外に無い、という単純な困難もあります。とにかく実験的なホスピタリティーにも驚きました。

いずれにしても、わざわざ十勝の寒風に当たりたい方には「スペシャルなプラン」です。素泊まりが一人30,000円というのは贅沢なのか? 高踏派のラグジュアリーというものの難しさに些か悩みます。

生活を召し使いどもに任せて、生涯を困窮の中に送ったリラダン侯爵に芸術至上主義的コメントを求めたくもなりますが。まぁ、札幌辺りの路上生活者に鼻で嗤われそうな気もします。

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