熊本に本社を構え、養豚プラントの設計施工・コンサルティングを手がけるコーンテックは、畜産現場に AI や IoT を導入し、畜産農家ごとに異なる自家配合プラントの構築と、飼料マネジメントを構築。畜産現場の手間とコストをこれまで2~3割、削減してきた。

同社はこの実績をもとに、家畜の成長に最適な飼料配合の仕組みを開発中。2020年1月から事業を本格化し、「高コストで職人頼り」という畜産業界の課題に取り組む。

「AI の必要性を感じたのは、ある農場で主要な従業員が辞めたとき。畜産が経験則と人に頼らざるえないのは、こうしたことを繰り返しているからだということを知り、愕然とした」と話すのは、コーンテック 吉角裕一朗 代表取締役社長。

「畜産や農業というのは経験や勘にもとづく、最も再現性の低い業界にある。大きな農場だとひとつの市や町の人口に匹敵する家畜数がいる家畜現場で、家畜の体調や餌の配合、病気の早期発見など、ひとつのマニュアルで解決できないうえ、到底、人間が把握できるものでもない」

「こうした現状から、経験と称して人間がやっていたものを、カメラや気温、湿度、気象予測、土や餌の状況などすべてモニタリングし、AI で最適化をめざす。自家配合 AI を完成させることで、そのナレッジを発展途上国をはじめ海外に広めていくことも視野に入れている」

「また世界的な問題、フードロスにも着目し、エサにどれだけフードロスを混ぜられるかなどの社会課題にも取り組み、循環する仕組みを構築していく。われわれのアグリテックは、世界の食料問題や環境問題を解決できる、世界が求める最適解に最も近い存在と考える」(コーンテック 吉角裕一朗 代表取締役社長)

畜産業界が高コストといわれる背景には、海外輸入に依存し、割高な飼料を利用しているという実情がある。畜産業界の餌の大半が配合飼料の輸入に依存し、経営コストの6割以上を占めている。

また、自家配合の飼料を開発するには、高い専門性が必要で実現は難しい。その結果、ベテラン飼育者の経験や勘に頼り、配合飼料に頼らざるをえない。輸入がストップした途端に食料飢餓などの問題を引き起こすリスクを秘め、資源の少ない国内では餌の自給化に迫られている。

同社は今後、この自家配合プラントに、IoT 技術を組み込み、飼料と環境をセンサーで遠隔監視、データを集積させ、餌の最適な配合バランスを AI で分析し、自家配合モデルの構築をめざす。

また、この自家配合モデルの構築で、地域で発生する食品廃棄物を餌に配合し、それを食べた家畜の糞をもとにバイオマス発電や堆肥に活用。さらにそれをもとに作物を育てるといった、地域資源を活用した循環型モデルの構築も創出していく構え。

tokyochips編集部

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