JR北海道やジェイアール東海情報システム、アイテック阪急阪神などの大手鉄道グループをはじめ、自動車メーカー、サプライヤー、重工、流通、食品、建設など、あらゆる企業を相手に各種ソフトウェアを提供するアシスト。

同社(東京都千代田区)は、2012年から2019年までの7年間で、売上高が1.5倍、社員数も1000人増えたうえに、離職率は業界全体の10分の1、2020年には「働きがいのある企業ランキング」で10位にランクインするという偉業を達成した企業として注目を集める。

その驚異的な延びをみせはじめた2012年に社長に就任し、現在もアシストをけん引する大塚辰男 代表取締役社長に、これまでの成長戦略をはじめ、メーカーを超えるサービスで得た評価の理由、働きやすい仕事環境への取り組み、今後のビジョンなどについて聞いた。

売上1.5倍、新規顧客1000社を支えた秘訣とは

大塚社長が2012年、アシスト社長就任から大きくかじをとったのが、投資と待遇。大塚社長は「利益は顧客へのサービス向上にむけた投資」と「社員に還元する」に集中させることで、売上高が1.5倍、既存顧客を維持しながら新規顧客を1000社獲得してきた。

この好調を支えるのが、アシスト全社員が貫く「めげない」「逃げない」「あまり儲けない」という姿勢だ。

「めげない」は、「アシスト社員は顧客からどんな提案を断られてもめげません、という姿勢のいっぽうで、もうひとつの意味がある」と大塚社長。

「それは、『顧客が満足しなければ、アシストの提案をどんどん断ってください。顧客が断るというのも顧客にとってパワーが要る。顧客がめげていくことはリスク。断ってくれることで顧客の悩みがわかって新たな提案ができる。最も断りやすい会社になりたと思っている」(大塚社長)

次の「逃げない」は、「顧客の課題やトラブルから逃げず、いっしょに解決できる会社になりたい、という想いで取り組むこと」(大塚社長)。

そして「あまり儲けない」は、「顧客から得た利益は、長期的な視点で顧客に還元できるよう、さらなるサービス品質向上や新ソリューションの開発などに投資し、さらに社員に還元していくことで『働きやすい職場』の向上をめざしていく。株主配当はない」と大塚社長はいう。

こうした姿勢で、2012年からアシストの風通しがさらによくなり、数々の評価を得るようになる。その特長的な事例が……。

営業トップを2年間、人事トップへ

いまIT業界の平均離職率は、11.8%。そんな就業環境のなかで、アシストの離職率はなんと1%台。

そして「働きがいのある企業ランキング」(OpenWork)で、2018年に14位、2020年には10位にランキングされ、セールスフォース・ドットコム、Google、P&G、A.T.カーニーなどと肩を並べる企業へと躍進。

さらに「新卒入社してよかった会社ランキング」(OpenWork)でも2019年に7位にランキングし、同社の「働きやすい環境への取り組み」が結実した格好に。

こうした実績は、「人事トップの配置にもアシストならではの工夫がある」と大塚社長はいう。

「人事トップに、営業などで最も成績のいい人をすえた。もちろん、現場では『絶対にこいつを離したくない』という声があがった。役員会議でも反対意見が多くあがった」

「いまだからこそ、5~10年先を見越した人材育成をと。来季や来年の売上だけをみるんじゃなくて、10年先の成長をみすえた人事をと説得し、実現させた。そうすると、3年前ぐらいから、『人事トップへ』とオファーがあった社員は、まわりから『おめでとう』といわれるようにまで定着した」(大塚社長)

そして最後、大塚社長は2020年度に強化していく取り組みについて、こう教えてくれた。

2020年は Person to Person で顧客との関係を強化

大塚社長率いるアシストは、第2次中期経営計画「超サポ-2022」を定めて動き出している。そのなかでもことし2020年度は、「大きく3つの施策を達成させ、まい進する」と意気込む。

◆Person to Person で顧客との関係を強化

「顧客との関係強化・フォロー体制を拡充させるべく、BtoB ではなく「PtoP」という姿勢で取り組みたい。Person to Person。顧客担当者とアシスト社員ひとりひひとりが関係性を構築し、それが束になって BtoB につながっていく」

◆さらなる魅力的な提案を

「顧客担当者と個々に向き合いながらも、体現できたソリューションや解決策を、同じ悩み・課題を抱える顧客に横展開し、実績を積んでいきたい。ナレッジを集約し、ほかの事業者などにも役立てるように技術やノウハウを積み重ねていく」

◆クラウド化支援にむけてナレッジを蓄積

「会社のシステムというものは従来、ハードウェアや周辺機器を購入し、関連するソフトを導入して、さまざまな設定を施して使い始めるという『オンプレミス』というプロセスだった」

「ところが現在は、ハードウェアなどオンプレミスで用意しなくても、クラウド化がすすむことでソフトをサービスとして使えるようになった。Adobe CC のようなイメージ。会社の重要なシステムも、どんどんクラウド化しているいっぽうで、個人情報の問題、クラウドへの移行費用などまだまだ課題が多い」

「そこでアシストは、顧客がクラウド化するにしても、オンプレミスで継続していくにしても、どちらが顧客にとって負荷が少ないか、低コストかなど、その会社の計画に沿いながら幅広く支援・提案できるように、ナレッジを蓄積していくことが重要」(アシスト大塚辰男 代表取締役社長)

―――日経コンピュータ顧客満足度調査をはじめ、コンタクトセンター・アワード、Oracle Excellence Awards Partner of the Year Japan、日立製作所 JP1 Partner Awardなど、数々の受賞・評価を獲得してきたアシスト。大塚社長の話しを聞いていると、年間売上400億円超えを達成するのも、そう遠くないはず。

資料:アシスト
画 文:鉄道チャンネル

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