デジタルコンテンツ(静止画・動画・音楽)を世界100か国以上に提供する Getty Images。その日本法人 ゲッティイメージズ ジャパンの島本久美子 代表取締役社長は、連載企画「Kumi’s EYE」で「ゲッティイメージズ史上最も販売枚数の多いビジュアル」を発表。
フォトジャーナリズムの力、ソーシャルメディアの台頭によるビジュアルコミュニケーションの変化を伝えた。
ゲッティイメージズの25年の歴史で最も販売枚数の多い1枚
Gandee Vasan
ガンジー・ヴァサンが撮影したこの写真は、ゲッティイメージズの歴史の中で最も販売枚数の多い写真のうちの1枚。この1枚の魅力について島本はこう語る。
「この写真はシンプルに見えますが、見事に多くのコンセプトのキーワードを表現しています」
「挑戦、自由、機会、突出している、個性、日常から抜け出すなどが挙げられます。ベストセラーにはこの要素が重要であり、プロフェショナルのフォトグラファーのスキルを学ばせてもらった1枚です」
世界を変えるフォトジャーナリズム
Tim Graham / Getty Images
写真は感情に強く訴えかけ、ときには行動さえうながす。ストーリーを伝えるスキルが高いフォトグラファーは、見た人が感情移入してしまう作品を生み出す。
とりわけフォトジャーナリズムとよばれる報道の分野では、世の中に対して重要な情報を伝える上で無くてはならない役割を果たし、政治や社会的課題などについて議論を巻き起こす力を証明してきた。
<世界中に変化をもたらした一枚>
HIV陽性の赤ちゃんを抱えるダイアナ元妃
1991年に撮影された、世界で最も有名な女性がHIV陽性の赤ちゃんを抱っこしている写真は、それまでのどんな手段よりも、エイズに対する偏見をなくすことに貢献した。
スマートフォンの登場と写真の世界共通言語化
スマートフォンの登場により、クリエイティブ業界とビジュアルコミュニケーションの様相は大きく変わった。
コンテンツ入手や写真撮影には新たな方法が生まれ、いまやモバイルデバイスはカメラの一種になったと考えてもいい。
クリエイティブな人たちは、スマートフォンのカメラを新しい制作ツールとして活用し、これまでにない方法で写真をとらえられるようになった。
スマートフォンは、デジタルカメラのレンズに比べてはるかに目立ちにくいため、被写体に非常に近い距離で、リラックスした状態を撮影できる。
このことは、一人称の視点でのストーリーテリングという新しいコミュニケーション方法を生み出した。
現代社会において写真は、国境や言葉の壁を超え、瞬時にメッセージを伝える世界共通言語。
スマートフォンの普及により、情報との関わり方が変わり、これまで以上に写真1枚で世界中にインスピレーションや感情、行動変容をうながせる。
人々はソーシャルメディアサイトやアプリを無限にスクロールし、写真を閲覧・共有し、会話を楽しんでいる。
ソーシャルメディアの台頭により、ビジュアルにリアリズムを求める時代へ
ソーシャルメディアの普及と共に、オーセンティック(本物)なコンテンツが求められる傾向が続く。
レタッチを施した完璧な写真は敬遠され、多様な社会的カテゴリーの人たちが当たり前に存在するリアリティがかつてないほどに求められている。
いっぽうで、広告やメディアで目にするビジュアルが個人の価値観の形成に大きく影響するといわれる。
世の中の偏見を除去し、多様性を当たり前とする世の中に変えていくためにビジュアルが果たす役割の重要性を理解していく。
ゲッティイメージズは、女性の多様な生き方にフォーカスした「LeanIn」や、リアルな女性を女性またはノンバイナリー フォトグラファーが撮影した写真ライブラリ「#ShowUs」、障害を持った方を自然に表現した「The Disability Collection」、50歳以上の方の多様な生き方をまとめた「Disrupt Ageing」、ムスリム女性に対する偏見を是正するための「Muslim Girl」などのビジュアルコレクション、「Masculinity Undone」(脱・男らしさ)というビジュアルトレンド発表などを通し、クリエイティブ業界全体を巻き込み、メディアと広告におけるビジュアル表現の多様性の実現にむけて活動中。
その日本法人 ゲッティイメージズ ジャパンの島本久美子 代表取締役社長は最後にこう語っている。
「オーセンティックなビジュアルコンテンツを意識することはとくに日本において注目してほしいと思っています。『こうあるべき』から解放され、より自分らしく生きられる社会をつくっていくためにも現実を受け止めたビジュアルが採用されることが重要です」
「女性の活躍を推進していくためにも、働く女性がメディアや広告でどのように表現されているか注意が不可欠。男性が抱えている社会的プレッシャーにも同時にリアリティとして取り上げられる必要があります」(島本久美子 代表)