テレワークで3kg太った。
在宅で腹が出てきた。
コロナショックで外出自粛やリモートワーク、在宅勤務などが長期化し、いま新たな問題が噴出し始めている。
そのひとつが、深刻化する運動不足。
その運動不足が原因で、いろいろなリスクを併発することが明らかになってきた。
愛知県名古屋市に本社をおく MTG は、全国30~59歳の男女1800名を対象に、「筋肉と健康に関する意識調査」を3月に実施。その結果、運動不足が原因で、癌や認知症、うつ、心臓病、脳卒中などのリスクが高まることや、ダイエットについての知識不足・誤解、そして経済格差をも引き起こすことが明らかに……。
この調査結果をもとに、運動不足が起因となる病気、運動不足が引き起こす経済格差、ダイエットについての大きな誤解について、順にみていく。
運動不足が引き起こす 糖尿病、うつ、癌、認知症の怖さ
EMS(Electrical Muscle Stimulation=筋電気刺激)のトレーニング効果について、40年以上研究を続ける京都大学 森谷敏夫 名誉教授は、「運動不足による筋肉の衰え、いわゆる「筋欠」は、さまざまな疾患の発症を高めるリスクがある」と警鐘を鳴らす。
「代表的な例として挙げられるのが、いまや国民病とも呼ばれる糖尿病。平成28年度の「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病有病者、予備軍ともにそれぞれ1000万人を超えました」
「筋肉は1日に摂取する糖のうち7割以上を消費してくれますが、糖尿病の人は筋肉が弱く、糖をうまく代謝することができないため、血糖値が上がりすぎないよう、血糖を下げる働きのあるインスリンというホルモンを大量に分泌しようします」
「この量が十分でない、または適正に作用しない状態がいわゆる糖尿病です。糖尿病は合併症を引き起こす可能性が十分にあり、長期治療が必要になるケースもあるため、注意が必要です」
「また、癌の発生率にも運動との関係性が明らかになってきました。国立がん研究センターの統計によると、2017年に癌で亡くなった日本人は約37万人。また、生涯でがんに罹患する確率は、男女ともに2人に1人と、ともに高い割合となっています」
「がん細胞は、免疫がしっかり働くことで体から排除されます。免疫力を高めるのにもっとも効果的だと考えられているのが運動です」
「さらに、運動により筋肉を鍛えることはメンタルにも効果的と考えられています。体を動かすことで脳の働きも活性化され、記憶力が向上し、勉強や仕事などの効率が上がることで、結果、精神的ストレスの緩和につながります」
「ほかにも、筋トレをすることで、インスリン様成長因子(IGF-1)という物質が脳体内に生成されます。これは、筋肉の成長を促す物質でありつつ、アルツハイマー型認知症の原因となる脳内のアミロイドべーターというたんぱく質を減少させます」
「つまり、筋トレをすることで、アルツハイマー型認知症にもなりにくくなるのです。女性の方が男性よりも認知症が多いのは筋肉量が少ないことが関係しています」
「このように、「筋欠」がもたらす将来の健康リスクに対し、日頃から運動を心掛けて筋肉を鍛えることが、今すぐ始められる最善の策と言っても過言ではありません」
こうした事実を7割以上が「知らない」 発症者が急増する恐れ
運動不足による筋肉の衰えが原因で、リスクが高まるおもな病気を8つを提示し、その認知度を調べたところ、認知率は平均で24.2%。
もっとも認知率が高かった「骨粗しょう症」でも半数以下の44.8%にとどまり、癌については7.3%。ほとんどの人が、運動不足による筋肉の衰えとは関係がないと考えていることが明らかに。
また、普段から筋トレの習慣がある人とない人で比較すると、筋トレ習慣がある人の認知率の平均が30%なのに対して、筋トレ習慣がない人は平均で21.3%と、大きな開きがあることもわかった。
このままこれらの健康リスクに対し、正しい理解がされないと、重大疾患予備軍、ひいては発症者が急増することも予想されている。
こうした癌や糖尿病、うつ、認知症のリスクに加え、運動不足はさらに、経済格差までも引き起こすという分析が、これ↓↓↓
運動不足による筋欠が、4,000万円以上の経済格差を生む…
自身のがん経験を生かし、病気時の資金繰りサポート活動にも力を入れているファイナンシャルプランナー 黒田尚子氏は、「運動不足により筋肉が衰え、疾患を発生した場合は多大な経済的な負担をともないます」という。
「30代以降の男女それぞれに多い疾患の連鎖を発生した場合と、発症しなかった場合とを比較したところ、貯蓄残高に大きな差が発生する可能性があることがわかりました」
「たとえば、45歳で糖尿病を発症し治療を続け、55歳で脳卒中(脳梗塞)を発症したという男性Aさんの場合、以前と同様に働くことが難しく年収2割減少と試算。体調不良により58歳で早期退職し、退職金で一時的に残高は上がります」
「男性Aさんは45歳、年収800万円。可処分所得590万円。既婚、子どもひとり。妻(42歳)はパート勤務で手取り年収100万円、子ども(15歳)は高校生で、金融資産は600万円。比較的世帯年収は高いが、住宅ローンや、教育費なども抱えているというケースで、その貯蓄残高比較グラフが↑↑↑です」
「60歳から公的年金繰り上げ受給と、妻のパート代が収入の中心となりますが、依然治療費用がかかるため、たった2年後の60歳には貯蓄は約1,000万円減。65歳に脳血管性認知症を発症し、医療費だけでなく介護費が必要となったことで、70歳には負債額は約1,000万円に」
こうした分析から、「発症しなかった場合と比較すると、約4,300万円の貯蓄残高の開きが出てきます」という衝撃的な結果が明らかに……。
「糖質は悪」の誤解、糖や脂肪を消費する筋肉の働きについての誤解
今回の調査では、ダイエットについてもたずねたところ、「糖質制限は減量に効果的だと思う」と回答した人は53.4%、「糖質制限すると体脂肪が減ると思う」と回答した人は45.3%。約半数の人が、「糖質制限はダイエットに有効」と回答していた。
また、「健康のためにはできるだけ糖質をカットしたいと思う」と答えた人は44.7%もいて、多くの人が「糖質は悪」と否定的にとらえている実態が明らかに。
そのいっぽうで、筋肉は最も大量に糖や脂肪を燃やす「臓器」といわれ、1日にとる糖分のうち、70%以上を筋肉で消費されているといった事実や働きについては、対象的に低い理解度であることも明らかに。
――― 運動不足が引き起こす癌、うつ、糖尿病、認知症、脳卒中、そして経済格差。こうしたリスクを回避するためには、正しいダイエットの知識、筋肉トレーニング法、自分にあった運動方法などを、あらためてみつめ直す、絶好の機会かも。