いまだ確実な収束の気配がみえないコロナ禍で、現代のアニメーション制作は、リモート作業で成し遂げられるのか―――。
そんな疑問に、ひとつの解を示してくれたのが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の制作を手がけたスタジオカラーのキーパーソンたち。
Wacom(ワコム)が開催したコネクテッド・インク2021では、「スタジオカラーによる新しいリモートクリエイティブ」と題したトークセッションを公開。
カラー鈴木慎之介 執行役員 技術管理統括、カラー小林浩康 CGアニメ監督・デザイナー、ワコム井出信孝 代表取締役社長、ワコム加藤龍憲 EMRモジュール/ファームウェア シニアマネージャー、ワコム淺田一 クラウドETコアプロジェクトリーダーが登壇し、それぞれの想いを語った。
まず『シン・エヴァンゲリオン劇場版』にCGIアートディレクターとして参画した小林監督は、「正直、リモートは作業的にも困った。みんながPCとタブレットを持って作業しているなか、道具をそろえるのがまずたいへんだった」と振り返ると、コロナ禍での制作現場で以外な事実も知ったと鈴木氏はいう。
「制作メンバーのなかに、自宅にPCを持ってないという人がけっこういた。そこに時代の流れを感じた」(カラー鈴木氏)
リモートワーク制作環境を変える、ワコム『Project Instant Ink』の貢献度
カラー鈴木氏は「リモート制作に移行したさいに、3DCGなどはマウスとキーボードを使うということで抵抗感なく移行できた」と振り返りながら、リモート制作移行前にはこんな不安もあったという。
「最終的には描くというデジタル作画やドローイングという現場では、遠くにあるPCに対して5G高速回線ネットワークについないで画面転送しながら液晶タブレットで描くって、それまではできるのかなって思った」(カラー鈴木氏)
「通信しながらデジタルで描くというところが肝ですよね。これができたらさらに先にいけるんじゃないかと」(ワコム井出社長)
「たとえばインターネット回線の“ゆらぎ”や、遅延による描きにくさを改善するツールを、ワコムのアプローチでできないかとも考えている」(ワコム淺田氏)
「こんなに遅延というものがいかに人にとって気持ちが悪いものかというのが、今回、はっきりみえてきたところ」(ワコム加藤氏)
「ワコムはコロナ前から遅延を解消するプロジェクトをチームとして取り組んでいる。Project Instant Ink の今後の貢献を期待する」(ワコム井出社長)
赤入れや指示入れもリモートで実行する時代へ
「描いていてちょっと不思議な感覚。あれ? これローカルマシン? って聞いちゃったぐらい自然。聞いたら、何百キロも先とつながっているとか。びっくりした」(カラー小林監督)
「赤入れや指示入れもリモートで行うことが多くなってくる?」(ワコム井出社長)
「編集スタジオに詰まってやるというスタイルから、リモートで高精細な映像を低遅延でみえるというのが必要になってくるだろう」(カラー鈴木氏)
「ディレクターはそうなるとだいぶストレスが減るだろう。アメリカで制作して、日本から指示を出すというようなこともできるだろう」(カラー小林監督)
「やっぱりみんな“絵描き”の人たちの集まりだから、キーボードで打つ文字よりも、直筆でダイレクトに作画にアクセスして指示を出したほうがわかりやすいかもしれない」(カラー小林監督)
NTTドコモの5G、まるでローカルマシンで動いてる感覚
「大きなデータ、たとえば3Dモデリングしたものに動きをつけるレンダリングとか、絵を出す処理とかも、時間がかかってしまっている。そこをいかに考え方を変えて早く出力するかのアイデアを集めている」(カラー鈴木氏)
「そこで具体的に感じたのは、NTTドコモの5Gを使ってやってみると、大容量・低遅延はものすごく可能性を感じた。めちゃめちゃ早い」(カラー鈴木氏)
「もうほとんどローカルマシンで作業してるような感覚」(カラー小林監督)
「ワコムをはじめ、クリエーターの制作環境をいかに向上させるかという考えの人たちといっしょに仕事をするのはとても幸せなこと」(カラー鈴木氏)
「この作品はワコムといっしょにつくってきたという感覚がある。ベースインフラなので、これからもいいデバイスをどんどん出してほしい」(カラー小林監督)
―――そんなカラー制作陣からの期待に、ワコムはどう応えていくか。最後にワコム井出社長は、こう意気込んだ。
「これからワコムがワンチームで応援して、支えていきたいです。ありがとうございました!」
◆ワコム Wacom
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