未来を担う若者の育成をめざす教育機関などへの助成を手がける三菱みらい育成財団は、「令和の高等教育に求められる教育プログラムとは」をテーマに、第1回シンポジウムをオンラインで開催。

同シンポジウムは、教職員支援機構 荒瀬克己 理事長、三菱みらい育成財団 平野信行 理事長、同 藤田潔 常務理事、三菱みらい育成財団選考委員長・東京大学・慶應義塾大学 鈴木博 教授、全国普通科高等学校長会 笹のぶえ 事務局長、カタリバ 今村久実 代表理事、大阪大学 藤修一 副学長らが登壇。

同財団が2年間の助成プロジェクトを通じてみえてきた Good Practice のポイントや、子どもたち・若者たちの「心のエンジン」に火をつけるための重要なポイントを共有。パネルディスカッションでは、「令和の高等教育に求められる教育プログラム」をテーマに語り合った。

10年間で100億円を拠出、22世紀を創る人材育成をサポート

三菱みらい育成財団は、次世代の人材育成に向け、文部科学省の2022年度学習指導要領改訂でも「主体的で対話的な深い学び」「社会に開かれた教育課程」の推進が記されているなか、これからのVUCA時代の社会で、生徒が主体的に学ぼうとする意欲を醸成し行動につなげていくことが将来社会人として「自立」するために非常に重要な原動力になると考え、教育プログラムへの助成を行っている。

三菱グループは、創業150周年をむかえ、「22世紀を創る人材育成」を目的に同財団を2019年に設立。同財団が10年間で100億円を拠出し、助成先である教育関係者が、自ら開発した教育プログラムを継続的に実施・改善することで、次世代の教育プログラムとして定着させていく活動をサポートしている。

「自ら問い、考え、行動できるような若者を育てる」

今回の三菱みらい育成財団 第1回シンポジウムでは、「令和の高校教育に求められる教育プログラムとは」をテーマに、助成先への訪問、成果報告会の視察、担当者交流会の開催など、積極的に行ってきた活動を通じて、見えてきた現場の課題、そしてグッドプラクティスを教育関係者や学生などと共有し、今後の高校教育のヒントになることをめざして実施。

自ら問い、考え、行動できる若者を育てる~当財団理事長・平野信行シンポジウム開催にあたり当財団 平野信行 理事長は冒頭でこう語った。

「わたしたちは100年に一度といわれる大変革期を迎えようとしています。地球温暖化、格差拡大にともなう社会の分断、米中対立、そして昨年来、世界を襲うコロナ禍といった、わたしたちの持続可能性を脅かす深刻な問題が生じています」

「こうした複雑で困難な課題は、従来の延長線上にあるような考え方では対処できません。日本ではいまだに親も子も、有名大学に入り、大企業に就職するという画一的な発想から抜け出せていないのではないか」

「その結果、高校は大学入試に必要な知識を与えるだけの予備校的な存在となり、大学に合格した途端に目標を失う学生も多いです。悩みながらも、柔軟に物事を吸収し、人格を形成していく10代後半の世代の教育がそんなのでいいのか」

「一人ひとりの個性と可能性を引き出して、自ら問い、考え、行動できるような若者を育てるための教育を目指して、わたしたちの財団はスタートしました」

「生徒を主語にした高等学校教育へ」

職員支援機構 荒瀬克己 理事長は、「生徒を主語にした高等学校教育へ」と題して基調講演。今回の改訂学習指導要領について「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」に着目し解説。

自立した学習者を育てるために、教職員が学び合う学校にしていくことが重要とし、改訂学習指導要領に記載された「生徒ひとりひとりが『自分のよさや可能性を認識する』『あらゆる他社を価値のある存在として尊重する』『多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越える』『豊かな人生を切り拓く』『持続可能な社会の創り手となる』」などを達成できるように、各学校で組織的かつ計画的に組み立てた教育課程が求められていると伝えた。

また「自分の良さを認識するためにはどういった伝え方をすれば、生徒が素直に受け入れられるか」という質問に荒瀬 理事長はこう伝えた。

「探求という学びの場で非常に大事になってくるのは、その生徒の学習ノートです。自分の取り組みを書いていくなかで、生徒自身が気づいたことや、疑問に思ったことを文字にさせておく」

「それを先生が折に触れて『どうしてこう考えたの?』とか『この考えおもしろいね。もう少し説明して』といった生徒と先生のやり取りが、生徒の自己肯定感を支えていくと思います」(荒瀬 理事長)

「『心のエンジン』の着火点は2つある」

第1部の後半プログラムでは、三菱みらい育成財団 藤田潔 常務理事が「グッドプラクティス~生徒の変容につながる実践のポイント~」について講演。

同財団がなぜ「高校生の心のエンジンを駆動させる教育プログラム」に助成を行うか、そして助成先の高校の成果発表会を視察した結果、『Good Practice』のポイントについて伝えた。

「当財団がさまざまな事例をヒヤリングしてみて分かったことは『心のエンジン』の着火点が二つあった点です。一つ目は本人が持つ『興味・関心』。知的探究型のケースでよくみられるものです」

「もう一つの着火点として『行動・実践』ということが挙げられました。自分の興味・関心よりも、まずは地域課題解決型のフィールドワークを通じて、さまざまな大人から色々な話を聞けることが、駆動の着火点ではないかと考えています」

「いずれにしても、本人が興味・関心を持つことで火が付くこともあれば、行動・実践することで火が付くこともありますが、自分が『納得する』あるいは大人に『認められる』という経験が、この2つの着火点をつないで、エンジンンが駆動し続けるのではないかと考えています」

同財団では、これらの視察から見えてきたポイントを、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが可視化し、今春にも発表するという。

助成先の高等学校の現場に三菱グループの若手社員を

パネルディスカッション、数年先輩存在が「心のエンジン」に火を付ける重要な役割

そして第2部では「令和の高校教育に求められるもの」というテーマでパネルディスカッションを開催。

参加者からの質問で「三菱グループの若手社員の活用は考えていますか」という質問に、三菱みらい育成財団 藤田 常務理事は「いままさに三菱みらい育成財団の助成先の高等学校の現場に、三菱グループの若手社員が、探求学習分野にどう関わればいいかなどを検討しています」と伝えた。

また、モデレーターの鈴木博 教授は、三菱グループ若手社員たちの起用について、こう持論を述べる。

「こども達にとって大人に認められるということは非常に重要で、25年以上、探究的な学びを指導してきた立場からいうと、1年上、2年上、4年上、8年上、16年上、32年上の先輩を生徒たちに見せないといけない」

「32年先の先輩だけをみせても、偉すぎちゃってリアルな探求心が芽生えない。むしろ、1年、2年、4年先を行く先輩世代が、すごく高校生の『心のエンジン』に火をつけてるなって思います」(鈴木 教授)

―――三菱グループが、22世紀を創る人材育成を目的に発足した、三菱みらい育成財団。

同財団は、10年間で100億円を拠出し、助成先である教育関係者が自ら開発した教育プログラムを継続的に実施・改善することで、次世代の教育プログラムとして定着させていく活動をサポート中。

今回のシンポジウム関連では、助成事業カテゴリー1「高校生の心のエンジンを駆動させる教育プログラム」で、2021年11月現在、高校・高専105校に助成を行っている。

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