過酷だった猛暑日連続の夏がやっと過ぎたと思ったら、こんどは急激な冷え込み。

四季を生きる日本人のうれしいことでもあり、体調を崩すリスクもある―――。

空気が乾燥し冷え込むと、リスクが増えるのがインフルエンザや風邪などの感染症。

風邪の原因の7~9割がウィルスといわれ、これらには特効薬がないことから、重症化を防ぐ予防策として免疫を整えることが一番の近道といわれている。

栄養を意識した食事やサプリで免疫力をアップ

では、免疫力を高めるためにはなにが大事か―――それは、「睡眠」「運動」「食事」の3つ。

なかでも睡眠不足や睡眠リズムの乱れが免疫に悪影響を及ぼすといった研究結果が発表されるなど、睡眠の質と免疫の関係性に注目が集まっているなか、実は日本人はOECD加盟国のなかでも最も睡眠時間が短い国。

睡眠の質や睡眠時間を今以上に高めることは、個人の努力ではなかなか難しいことから、いますぐに自分の力で変えられる習慣として、食生活の改善に取り組みたい。

外食志向の人であっても食事の選び方や、日常生活にサプリを取り入れるなど、少し栄養を意識した生活を送ることで、ウィルスに負けない健康体を手に入れられる。

そこで今回は、予防医療・栄養コンサルタント細川モモ氏監修「健康的な身体づくりにかかせない3大栄養素や、効果的な摂取方法」をチェック。

腸内環境を整え免疫力を高めよう

まず知っておきたいのは、免疫システムに関わる免疫細胞の約7割が腸に生息し、腸内で細菌やウィルスなど病原体と戦っていること。

体内でウイルスや細菌と戦う免疫細胞の材料となる栄養を吸収し、生成するのも腸の役割。これが、腸が身体の最大免疫機関といわれるゆえん。

腸の健康は免疫力にダイレクトに影響し、睡眠や運動はもちろん、食生活の改善で腸の健康を保つことが免疫力を高める最大のポイントになる。

そこで、免疫とそれを支える腸内環境に大きく影響を与える3つの栄養素は―――そう3大栄養素「ビタミンD」「亜鉛」「マグネシウム」だ。

健康維持や体調管理に欠かせない「亜鉛」

亜鉛は、体内でつくることができない「必須微量ミネラル」で、体内に約2~4g存在し、歯、骨、肝臓、腎臓、筋肉に多く含まれる。

200種以上の酵素の構成や酵素反応の活性化、ホルモンの合成や分泌の調整、DNA合成、タンパク質合成、免疫反応の調節などに作用し、身体の成長と維持に必要な栄養素。

亜鉛は体内に入り込んだ異物、ウィルス、細菌などを駆除してくれる免疫細胞(自然免疫、獲得免疫)が、正常に成長し、機能するようになるまでをサポートしてくれる免疫力アップに欠かせないミネラル。

また、活性酸素を除去する酵素の働きを助け、亜鉛が欠乏することで免疫機能だけでなく抗酸化作用も正常に働かなくなる。

実際にアメリカで行われた実験では、亜鉛配合のトローチをとっている人は、そうでない人に比べて風邪の発症率を36%低下させ、風邪の持続期間を1.03日減らしたことが報告されている。

亜鉛の含有量が多い食材として挙げられるのが、牡蠣やからすみ、牛肉など。1日の摂取推奨量は30〜49歳の男性で11mg、女性で8mgといわれているなか、実際の摂取量は平均して1日に8mgと少なく、先進国で唯一亜鉛欠乏者が10 〜30%もいる。

亜鉛の吸収を高める栄養素として動物性タンパク質、クエン酸、ビタミンCが挙げられるから、適宜サプリなどで補うほか、肉、魚、卵、牛乳、柑橘類などの食べ物といっしょに亜鉛を摂取すると効果的だ。

免疫を調節し、抗ウイルス作用で発症を防ぐ「ビタミンD」

ビタミンDは、カルシウムの吸収促進、骨の成長促進、血中カルシウム濃度を調節する重要な役割のある栄養素で、健康な骨を維持するために欠かせない、脂溶性のビタミン。

殺菌作用を発揮する抗菌ペプチドをつくる働きをし、体内に侵入したウィルスや細菌などに対して必要な免疫機能を促進。

このため風邪やインフルエンザ、気管支炎や肺炎などの感染症の発症、悪化の予防にも関与するといわれている。

また COVID-19 で重症化を起こす要因であったサイトカインストームを減衰させる働きもあるといわれている。

さらに、ビタミンD は腸粘膜を修復する働きがあることから、免疫に多大な影響力をもつ腸にとってもなくてはならないビタミンという存在に。

ビタミンD は、サンマや鮭、アジなど、魚類に比較的多く含まれ、きのこ類、卵、肉類からも摂取できる。

また、ビタミンD は食事だけでなく紫外線を浴びることでも生成され、割合としては食事より日光浴の方が血中濃度に与える影響が大きいという報告もある。

日焼けしない程度の時間に1日15分~30分程度、日光に当たることもおすすめ(住んでいる場所により日照時間に差があることから目安時間に)。

そして、食べ物にも人と同じく、紫外線にあたるとビタミンD が増加するのが、いわしの丸干しや、乾燥きくらげなど。なかでもしいたけは、紫外線にあたるとビタミンD に変わる成分「エルゴステロール」が豊富になり、天日を当てて乾燥した干しシイタケは、生のものに比べビタミンD を多く含んでいる。

こうしたビタミンD も、食物のほかにサプリで補うという手もある。

体内の300種類以上の酵素の働きを助ける「マグネシウム」

マグネシウムは、骨の成長や強化、維持に重要なミネラル。体内に約25g存在し、そのうち50~60%は骨に含まれ、残りは肝臓や筋肉、血液でタンパク質と結合して存在している。

およそ300の酵素の働きを手助けし、カルシウムの作用と深く関わりながら筋収縮を制御したり、血管を拡張させて血圧を下げたり、血小板の凝集を抑え血栓をつくりにくくするといった役目を果たしている。

またすべての細胞内にも含まれ、体内のミネラルバランスの調整にも一役買っている。

そんなマグネシウムは、免疫を調節するビタミンD の活性化に欠かすことができない栄養素。

また、現代人は慢性的な睡眠不足をはじめとする多くのストレスを抱えていますが、それにより活性酸素が体内で増えすぎてしまうと「酸化ストレス」状態になり、免疫機能も含めて身体が内側から蝕まれてしまう。

マグネシウムは、体内で活性酸素を分解する酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)をつくり出すために欠かせない栄養素で、活性酸素の分解を促すことでカラダを酸化ストレスから守っている。

実際に、ビタミンDとマグネシウムを投与されたアメリカ人の COVID-19患者は、酸素療法を必要とするリスクが87%低下し、集中治療サポートを必要とするリスクが85%低下したことが報告されている。

さらに、マグネシウムは便秘薬の成分でもあり、スムーズなお通じにも欠かせない存在に。

こうしたマグネシウムは、ごまやアーモンド、カシューナッツなどの種実類、あおさや青のり、わかめ、とろろ昆布など海藻類、豆腐や納豆などの豆類・大豆加工食品の3カテゴリーに多く含まれている。

複数のミネラルやビタミンを同時に補うことができる食材が多く、昔ながらの日本食では豊富に摂取できるものが多いのに対し、インスタント食品やファストフードを食べる機会の多い現代人には不足しがち。

またカルシウムを多く摂りすぎると、マグネシウムの排泄が増えてしまうから、マグネシウムとカルシウムは1:2の比率でバランス良い摂取を。こうしたバランス性からも、サプリで補うのもひとつの手といえる。

専門家考案、牡蠣の和風チャウダーもおすすめ

“海のミルク”と呼ばれるほど栄養豊富な牡蠣は、亜鉛リッチな食材。

とくに感染症に気をつけたい冬(11〜4月)に旬を迎えることから、おすすめのひと品。

牡蠣に発酵食品である味噌とオリゴ糖を含む豆乳や玉ねぎを加えることで、腸が喜ぶレシピに。

酪酸をつくる食物繊維リッチなきのことポリフェノール豊富な野菜も追加してもいい。

「栄養素は1日の推奨摂取量がそれぞれ決められています。毎日の積み重ねにより健康な身体をつくり上げていくため、定期的に摂取すれば良いものではなく、毎日継続的に摂る事が大切です。また、単一の働きよりも相互作用があるためチームでとることが大切です」(細川モモ氏)

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