千匹のセミがいっせいに鳴いてるような音、不安をあおるような心拍の音、キーンととがった音、ザーッという崩れる音……。
これ、みんな耳鳴りの症状。実は国内には、全人口の15~20%の人たちが耳鳴り(みみなり)に悩まされているという。
こうしたなか、一般社団法人 日本聴覚医学会は、国内初となる「耳鼻診療ガイドライン」(金原出版)を刊行。
「潜在的に300万人を超えるといわれる耳鳴り患者への対応に必携の一冊」という同書の発刊を機に、耳鳴りに悩む患者の現状について報道向け説明会を、7月18日、都内で実施。
同ガイドラインの著者のひとり、神埼晶(慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室 専任講師)医師が、耳鳴に悩む人への診断・治療のトレンドを伝えた。
うつ病などで耳鳴りを難治化させないように
神崎医師はまず、耳鳴りの標準的治療について、教育的カウンセリング、音響療法、認知行動療法を経て、薬物療法や環境音・サウンドジェネレーター(耳鳴り治療器)・人工内耳などを検討していくという。
なかでも重要なのは、カウンセリングと音響療法と神崎医師。耳鳴り患者は、認知制御が低下し、ネットワークスイッチが低下することでネガティブ感情ばかりがでてくると、耳鳴りのことばかりを気にするようになるという。
うつ病などとともに悪循環に陥らないようにカウンセリングし、ホワイトノイズや波の音などの音響療法(最低3か月~)で耳鳴りを気にしないように、緊張しないようにする。うつや不安傾向、情動障害などで耳鳴りは難治化・重症化をきたすともいわれている。
カウンセリングや音響療法を強く推奨
神崎医師は、推奨度1Aレベルの治療法として、教育的カウンセリング、補聴器やサウンドジェネレーター(耳鳴り治療器)の活用、認知行動療法(CBT)を含む心理療法について、「有効性がある」として「強く推奨する」に。
逆に漢方を含む薬物療法(推奨度2C)や鍼・レーザー治療、反復経頭蓋磁気刺激療法などは、エビデンスが少なく効果の証明はできない・弱いという。
―――耳鳴りで悩む人は、「まずしっかりとした専門医に相談を」と神崎医師。日本聴覚医学会は今後、新しい治療法にむけたエビデンス収集のための他施設大規模調査や、国内の認知行動療法の開発とエビデンス集積などに取り組んでいくという。
<耳鳴診療ガイドライン 2019年版>
https://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307371247