リモートワークや在宅勤務で、パソコンやスマートフォンを直視する時間が急増し、いま深刻な課題が浮き彫りに。

それは、われわれの目。眼球の角膜が傷つきやすい、危険な状態にあるという―――。

「現代人の角膜ケア研究室」は、コロナ禍でのリモートワークやおうち時間の増加にともない「過去類をみないほど、目を酷使する生活が1年以上続いている」と伝え、角膜の傷リスクが高まっていることに警鐘を鳴らすべく、現状と対策について説明会を実施。

同説明会には、東邦大学医療センター 大森病院眼科 堀裕一教授と杏林大学医学部 眼科学 山田昌和教授が登壇。

「コロナ禍だからこそ角膜の傷リスクが高まる要因」や、「ニューノーマル時代に目を角膜の傷から守るための正しいアイケア」について、最新の論文データや調査結果を交えながら解説した。

コロナ禍で深刻化する“角膜の傷リスク三重苦”

東邦大学医療センター 大森病院眼科 堀裕一教授は、PC・スマホ時間の急増で「角膜が傷つきやすい危険な状態にある」と説明。

「角膜は細胞がむき出しの状態のため、とても繊細で傷つきやすい」と伝え、繊細な角膜を守る涙とまばたきの重要性を解説。このコロナ禍で「角膜に傷がつくリスク」を高める要因“角膜の傷リスク三重苦”があるという。

◆目の酷使による影響

スマートフォン、パソコン、VDT(Visual Display Terminals)作業に集中すると、瞬きの回数が1/4に減少。長時間VDT作業を継続することで自律神経の交感神経が優位になり、涙が出にくくなる。結果、乾燥により涙の層が崩れ角膜が傷つきやすい状態に。

◆マスクドライアイによる影響

マスクドライアイとは、マスクから漏れる上向きの呼気によって、目の表面が乾いてしまうこと。コロナ禍のいま、マスクを日常的につけている環境にあり、常に目が乾燥しやすい状態に。結果、マスクによって乾燥のリスクが高まり、角膜が傷つきやすい状態に。

◆精神疲労による影響

ストレスや不安感が蓄積されると、自律神経のバランスが崩れ、涙の油層を形成するためのマイボーム線の働きが低下。結果、涙の質が低下し、角膜が傷つきやすい状態に。

加齢や疲れと放置しない、その症状実は角膜の傷が原因かも

堀裕一教授は、「ただの疲れや加齢のせいと放置しがちなよくある症状でも、頻繁に起こったり、長引く場合は、角膜の傷が原因である可能性がある」と伝える。

「角膜の傷は、悪化する前に適切なケアを。また、『角膜の傷リスクチェックリスト』で、“危険層”に分類された人のうち73%が実際に傷がついていた」ということで、そのチェックリストを紹介。角膜の傷リスクを把握し、ケアを心がけることを推奨した。

◆角膜の傷による症状例―――文字がぼやける/痛みを感じる/目が常に渇いてショボショボする/ゴロゴロ感/目がかすむ/寝ても疲れ目が解消しない

点眼薬は“使い方”と“選び方”が重要!

杏林大学医学部 眼科学 教授で、日本角膜学会 理事長 日本コンタクトレンズ学会 理事の山田昌和教授は、「高まる角膜の傷リスクを防ぐアイケア習慣として、点眼薬は涙と目の機能を正常化する役割があり、有効なセルフケア」と解説する。

「ただし、適正回数以上点眼するといった誤った使い方や、自身の目の状態にあっていない商品の選び方は、かえって症状を悪化させる可能性がある」として、点眼薬使用のポイントをこう説明した。

◆使い方:点眼回数は適正範囲内か?

用法用量以上にさしすぎると涙の層が破壊され角膜を傷つける恐れがある。適正回数は一般的に1日5~6回。

◆選び方:目にやさしいものを選んでいるか?

点眼薬に配合されている防腐剤は、角膜に傷がついている人には症状を悪化させる恐れがある。

防腐剤の代表的な成分である塩化ベンザルコニウムは、油を分解する作用があり、涙の油層を破壊し目を乾きやすくする。

本来、防腐剤は菌の混入による製品の汚染を防ぎ、品質を保ち安全に使うことに役立っており、角膜に傷がない状態で使用する分には問題はない。

市販品の約73%が防腐剤入り点眼薬(主要99銘柄)。

1日あたりの点眼回数、4人に1人は適正回数を超える7回以上点眼!

山田昌和教授は、コロナ禍以降に診察した患者について、生活変化の影響により症状が深刻化しているケースが見られ、なかには点眼薬による症状悪化も見られたため、実態把握のために「コロナ禍の点眼薬使用実態調査」を実施。

調査の結果、そもそも点眼適正回数への意識が低いことが明らかになり、症状を感じるたびにさす人も多く見受けられたという。

「角膜の傷リスクの高い人ほど不快症状を感じる頻度が高いため、点眼回数が増え、さしすぎになりやすいことが推測される。また、防腐剤が角膜の傷に与えるリスクは多くの人に認知されていないうえ、角膜の傷リスクが高い人も目にやさしい防腐剤無添加の点眼薬を選べていない」

山田昌和教授はそう伝え、点眼薬でのケアのポイントなどについて続けて解説した。

角膜を守るコツ、点眼薬ケアのポイント

山田昌和教授は、点眼薬の正しい使用方法や選び方、三重苦から角膜を守るために日常生活で取り入れやすいセルフケア方法を紹介。

「コロナ禍では日常的なマスク着用による乾燥、不安やストレスによる精神疲労で涙の量と質が低下するなど、わたしたちの目は過去1番といっていいほど傷つくリスクに脅かされ、セルフケアで角膜を守ることが非常に重要」

「しかし間違ったケア方法や認識によって、かえって症状を悪化させてしまっている可能性もある。ニューノーマル時代は正しいアイケア習慣を身に着けて、自ら目を守ること。そして、セルフケアでも改善されない場合は、早期の眼科受診を」と伝え、最後に点眼薬でのケアのポイントをこう解説した。

◆点眼薬の用法・容量を守る

症状が軽いうちにさすことでさし過ぎを防ぐ。また、さすタイミングを決めて回数を守ることも有効。適切なタイミングは、起床後、お昼休み、3時のおやつ時、夕食前。

1滴で十分効果的であるので、一度に何滴もささない。

◆適切な点眼薬を選ぶ

角膜に傷があると思われる場合は、角膜にやさしい防腐剤無添加のものを選ぶ。

角膜修復効果があるものを選ぶのもおすすめ。

(東邦大学医療センター 大森病院眼科 堀裕一教授/杏林大学医学部 眼科学 山田昌和教授)

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