スマートシティや MaaS といった研究分野でこれまで、人流データを活用してクルマの移動や人の滞在などが分析されてきた。

でも、歩行者の移動にフォーカスした人流データ分析は、ほとんど行われてこなかった。

その理由は、人々の移動をとらえ、分析するために十分なレベルの人流データが存在しなかったから……。

人流データを活用し、歩行者の動きにフォーカスした共同研究へ

発表会場の冒頭でそう伝えたのは、パイオニア製カーナビに地図データを提供してきたインクリメントPをルーツとするESG(環境 社会 ガバナンス)メタバースカンパニー―――ジオテクノロジーズ。

このジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長CEO と 東京大学 空間情報科学研究センター 柴崎亮介 教授は2月3日、都内で共同研究 締結発表会を開き、両者(社)が保有する高精度な人流データを活用した、歩行者の動きにフォーカスした共同研究を始動する。

自治体や民間企業に研究結果をオープン共有

ジオテクノロジーズの人流データは、累計DL数1200万超のM2E(Move to Earn)アプリ「トリマ」のユーザーから取得。モバイルGPSの取得ピッチの細かい人流データということから、歩行者の分析に適している。

このトリマは、歩数だけでなく移動距離に応じてマイルが貯まり、通勤や通学、仕事など日常的に移動が多い人たちに支持されているアプリ。貯まったマイルは現金、Amazonギフト券やTポイントに交換できる。

ジオテクノロジーズと東京大学は、スマートシティや MaaS に関連する自治体や民間企業にむけて、今後の研究結果を共有し、連携しながら地域住民の健康増進に貢献していくという。

柴崎教授「災害被害を未然に防ぎ、人々の健康を守る街づくりへ」

「情報がますます重要になっていくなかで、情報そのものを人間や社会に有効に役立てるためには、人の行動やその背景にある意図、人の感じ方や行動変容のメカニズム、人々が情報から何をどう抽出、注目するのか、背景知識との関連などを理解し、その中にいかにセンシング技術、シミュレーション技術、情報サービス生成技術を活かしていくのかを研究する必要があります。

今回、ジオテクノロジーズの人流データを活用することで、人々の移動手段を分析して、次に何が起こるのか予測することができれば、行動変容を促し、災害による被害を未然に防ぐことや、人々の健康を守るための街づくりなどへ活用が期待されると思います」

杉原代表「予測可能な世界の実現に向けて」

「長年の地図メジャーとしての経験と実績をもつ当社には、1日に10億件以上の人流ログデータが集まります。

この高精度な人流データを活用し、歩行者にフォーカスした分析を行うことで、地図づくりだけでなく、スマートシティの実現やさまざまなサービス開発と、人々の生活と健康を守る街づくりに貢献することができると考えています。

この考えは、ミッションである「地球を喜びで満たそう」という考えにも合致し、今回われわれが東京大学 柴崎教授と共同研究を始めることにした理由は、まさにここにあります。

本共同研究が、われわれのビジョンである「予測可能な世界の実現」に向けて、役立てると信じています」

共同研究の第一歩、「よく歩く街ランキング」を発表

ジオテクノロジーズと東京大学 空間情報科学研究センターの共同研究はすでに始まっている。

記者発表会ではその最初の研究結果「よく歩く街ランキング」も公表。1都3県では、神奈川県逗子市が1位であることを明かした。

今回のデータ集計は、人流データから歩行者の移動距離を抽出し、一人当たりの平均歩行距離として1都3県で集計。

今回、「よく歩く街ランキング」として上位20の自治体を並べたところ、平日・週末ともに神奈川県逗子市が1位に。

また東京23区は、平日はトップ20に入らないものの、週末に一気に多数ランクインした。

両者(社)は今後、各地域についてより深い人流分析を行い、その背景や理由を人流データから追究していくという。

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