ここは埼玉県越谷市。すぐ西に国道4号、東に東武伊勢崎線(スカイツリーライン)、その間を元荒川がゆったりと蛇行するなかにある集落―――越谷市南荻島出津地区。

元荒川の右岸に宮内庁越谷鴨場や越谷梅林公園の緑が広がり、鳥の声と電車の足音が聞こえてくるこの越谷市南荻島出津地区には、「国内で最も成功している自治会館」がある。

―――ここは、誰もが気軽にふらっと立ち寄ってゆったり過ごせる開かれた集会所。地域の方も散歩でふらっと訪れた人も癒される空間をめざしています。ピザ窯でピザを焼いてカヌーができる最高の自治会館―――。

……それが、越谷市南荻島出津自治会館2「みずべのアトリエ」

この地で分譲開発を担った中央グリーン開発(ポラスグループ)などが、戸建分譲地の開発要件にある自治会館(集会所)を、新しい64世帯だけのものせず、地域全体のゆるやかなつながりで自然と育む「まちのリビング」として計画し、自治会・行政・専門家と協議を重ねながら、住民参加型で新しいコミュニティ拠点を実現させたのが、出津自治会館2「みずべのアトリエ」。

安全な川辺へのアクセスを確保するため、市や県と協議を重ね、河川敷へのアプローチ階段も設置され、町の小さなお祭りやコミュニティイベントでは、こうして元荒川の川面や河川敷を使って、滑り台やカヌー遊びなども楽しめる。

「河川敷全体が暮らしに取り込まれるように」

2020年にはこの出津自治会館2「みずべのアトリエ」がグッドデザイン賞を受賞し、「ささやかでありながら、地域におけるポジティブなインパクトが大きな、たいへん秀逸な計画である」と評価された。

「独自性は、自治会館と公園(といっても大きくはない)の配置につきる。たいていはこうした施設は地域の活動の中心であることから、配置的にも中心になることが多いが、それを川岸によせ、むしろ河川敷への結節点のように扱うことで、河川敷全体が暮らしに取り込まれるようになっている。

公園と河川敷のアクセスの連続性を担保することは、手続き的にも難易度が高いことが想像され、ささやかなアイデアのなかにも関係者の大きな努力がうかがえる」(審査委員の評価)

元荒川カヌーは大人気、近隣の大学生も参画し4周年イベント

この日は越谷市南荻島 出津自治会館2「みずべのアトリエ」4周年イベント。

南荻島まちづくりサポーターが主催し、南荻島出津自治会が協力する無料カヌー体験(要予約)は、全4回とも満員。

この南荻島まちづくりサポーターは、埼玉県職員や子育て世代、アクティブシニア、現役大学生、大学教員、中学生など、区域を越えた人たち30人以上で構成され、自治会の担い手不足を解消。

そんなサポーターたちがつくった土手の滑り台に子どもたちがおおはしゃぎし、午後には甘酒・綿あめ・射的・凧つくり・焼きマシュマロ・焼き芋・ビール&ジュース販売などが行われ、自治区域の枠を越え、隣接区域にキャンパスを構える文教大学の学生も参加し、水辺のにぎわいを呼んだ。

新住民64世帯全員が自治会に加入、2階の利用数は年々増加

南荻島出津自治会館2「みずべのアトリエ」から、利用者を限定しないことで広がる地域コミュニティ。

1階はフリー開放で誰もがふらっと立ち寄れる集会所として定着し、2階の利用数は年々増加し、その1/3が自治会外からの利用という。

2階は、フラダンス、ピラテス、ヨガ、スマホ教室のほか、お茶会、ママ会、大学授業、就活面接練習、大学ゼミ、県の研修、テレワークなど、さまざまな利用スタイルで年間予約数は500件を超えている。

新住民64世帯全員が自治会に加入し、未加入課題をも解決した南荻島出津自治会。

南荻島出津自治会館2「みずべのアトリエ」を運営する南荻島まちづくりサポーター 石野剛史 代表は、さらに「この場所でいろいろと企画し、水辺コミュニティのにぎわいと可能性を探っていきたい」というから、自治会運営の近未来を描く今後の「みずべのアトリエ」の動きに、注目だ。

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