狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、人類史上5番目の新しい社会「Society 5.0」。政府主導の日本版 Society 5.0 へむけて国内も動きをみせ始めるなか、教育の現場や人材育成分野はいま、どんな課題を抱え、どこへ向かっているか―――。

東京・神田で11月7日、未来人材を育むための教育のあり方を考える「幼小教育創会議」が開かれ、サン(A.L.C.貝塚学院運営)佐野順平 執行役員、キャリアフィールド 都築裕一 代表取締役社長、STEAM 学習振興会 杉浦治 理事・事務局長らが登壇。幼小教育にかかわる3者が、幼保教育の現状と近未来について語り合った。

まず、日本版 Society 5.0 へむけて共通する課題は、教育の立ち遅れ。society 5.0 実現の核となる AI と、その基礎となる数学や情報科学などに関する研究開発と教育が、アメリカや中国などと比べ、遅れをとり、大きな差をつけられている。さらに超高齢社会と人材不足で、幼少期からの人材育成にも暗雲が立ち込めているのが、現状―――。

「いまの常識にとらわれた教育をしないこと」サン 佐野順平 執行役員

「幼保無償化のスタートについては、とくに経営的に難しくなったということはない。認可にとってはすべて無償になったと思いますし、われわれのほか類似施設にとっても、認可外保育園として無償化の対象として受け入れられているので、経営的にダメージはないのでは」

「また、A.L.C.貝塚学院では、PTAをなくすなど、働く親たちをサポートしたいというスタンスから、共働きの家庭が多い。認可外保育施設でも家庭環境や就労条件によるが、月3万7000円まで無償となるため、多くの家庭が対象となり無償化の範囲でほぼカバーできてしまう」

「われわれとしては恩恵を受けられたという感覚はある。ただ、専業主婦(夫)の家庭の割合が多い認可外の保育施設では、専業主婦(夫)家庭は補助がでないため負担が大きくなる傾向があり、なかなか難しい状況になっているのではないかと感じている」

「幼稚園と認可保育園ではどの家庭も平等に補助が受けられるが、認可外保育施設では家庭状況によって差が出てしまっている。また、認可施設に入れなかった待機児童が、認可外の保育施設に入ると家庭によっては負担増になるかもしれない。A.L.C.貝塚学院では、PTA活動などがなく、延長保育も充実し、親の負担が少なくしっかり働けるということで、共働きの家庭に選ばれている」

「スタッフ採用について、幼稚園類似施設の強みは、保育士免許のない人も採用できる点があげられる。一般採用して、後から資格をとっていただくというような、人材を確保しやすいという認可外ならではのメリットがある。ただ、資格のある人は、認可施設にいく傾向があるため、認可外のほうが人材を採用しやすいということはない」

「最後に伝えたいのは、これから活躍する子どもたちに、いまの常識にとらわれた教育をしないこと。次の新しい世界をつくっていく人として、大きく受け入れていくということが大事だと思う」(サン 佐野順平 執行役員)

「保育業界のポジティブな情報を発信し、保育士を増やそう」キャリアフィールド 都築裕一 社長

また、キャリアフィールド 都築裕一 社長はまず、教育現場の人材不足についてこう語る。

「いま、保育士養成学校だけでは保育士を充足できない状況にある。資格はないけれど、保育施設で補助として働きながら学校に通い、そこから資格を取って、非正規から正社員に転換するというケースもある」

「われわれは保育専門の求人メディアを日本で初めて立ち上げた会社。いま業界が直面してる一番の課題は、人材。ブラックだとか給料が安いとかいわれているが、全国で5万ほどの施設があるから、そういわれるところもあるけど、実際はみんなが考えているほど安くはないし、初任給が月25万円のところもある」

「A.L.C.貝塚学院のような認可外施設では資格要求がないが、幼稚園や保育園では資格が足かせになって人材確保がむずかしい。資格を取る方は年間で5万5000人。そのうち2万5000人しか保育士にならない。しかも最近では養成校を出た学生が保育士にならない」

「それはなぜかというと、メディアなどのネガティブな情報で親が反対するケースなどが原因のひとつ。また6割ちかくは実習先の現場での教育体制に失望して、気が変わってしまうなどの課題がある。まずはこうした点を改善させる必要がある」

「今後は、保育業界のいい情報、ポジティブな情報をより広く発信し、保育士を目指そうという人を一人でも増やしていきたい」(キャリアフィールド 都築裕一 社長)
 

「クリエイティビティやコラボラティブを学ぶ場を」STEAM学習振興会 杉浦治 理事

さらに、幼稚園・小学校低学年むけプログラミング教室を手がける STEAM学習振興会 杉浦治 理事・事務局長は、プログラミングの育成こう語っていた。

「プログラミング教育は何かというと、プログラミング的思考を通じてクリエイティビティやコラボラティブを学ぶこと。コラボラティブは、みんなでコラボして考え方が違う人たちとチームでひとつの仕事・プロジェクトを推進していくこと」

「われわれはことし8月、チームラボが提供するプログラミング学習教材を活用し、従来のプログラミング教室とは一線を画す共創型プログラミング教室『あそぶ!天才プログラミングの学校』をスタートさせた」

「ここでは、単にプログラミングを学ぶだけでなく、子どもたち自らが描いたキャラクター「ピープル」を動かし、クラスの仲間とのグループ学習を通じて、AI時代に必要とされる問題解決力、創造力、人と協力して物事を進める協働力を育むことができる」

「この『あそぶ!天才プログラミングの学校』のように、クリエイティブな教育観や先生たちを支えていく教材やカリキュラムを提供していきたい。特にクリエイティビティであるとか、英語であるとか。将来は英語でプログラミングを教えていくことも考えている」(STEAM学習振興会 杉浦治 理事・事務局長)

―――このトークセッションのあと、実際に子どもたちが「あそぶ!天才プログラミング」を体験。子どもたち自身が描いた絵を、自分たちでつくったプログラムで動かして、遊びながらプログラミングを学んでいった。

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