10月の2023卒の内定式が終わり、2024卒の学生も就職活動を意識し始める人も多いなか、コロナ禍3年目に、Z世代の就活にはさまざまな課題が浮かび上がり、面接で学生時代に力を入れたことの話で脚色する「盛りガクチカ」や、入社後もしくは入社直前に企業側から一方的に配属先を決められる「配属ガチャ」などが話題に。

これらは、企業と学生の間のミスマッチ、内定辞退や早期退職の増加につながることが懸念される。これからの新卒採用で、Z世代の就活生との関わり方や情報発信の方法など、企業にはどのような工夫が必要か―――。

こうした課題が浮き彫りになるなか、新卒採用マーケティング・プラットフォームを提供するインタツアーは、10月4日に「ミスマッチを生まないための新たな手法『リレーションシップ採用』とは」と題してオンラインセミナーを開催。

このセミナーではまず、Z世代の大学2・4年生(25卒・23卒)と社会人2年目(21卒)を対象に行った「就職活動における学生および社会人の実態調査」の結果を発表。

その後、Googleで人材開発、組織開発等に従事したプロノイア・グループ ピョートル・フェリクス・グジバチ 代表取締役がゲスト登壇し、「慣例の新卒採用が好ましくない理由」について講演した。

またインタツアー作馬誠大 代表取締役社長とピョートル代表がトークセッションし、コロナネイティブ学生の新卒採用において、企業に求められる学生との関わり方や採用手法について掘り下げた。

就職活動の学生・社会人の調査結果を発表

最初にインタツアー作馬代表から、大学2年生(就職活動は活動中~活動していない25卒の大学生2年生)と大学4年生(就職活動は終了もしくは活動中の23卒の大学生4年生)と社会人2年目(社会人2年目の21卒の会社員)を対象に行った「就職活動における学生および社会人の実態調査」の結果について解説。

コロナ禍のZ世代の就活生が抱えている課題や、働くことに対する意識などの調査結果を受け、新卒採用の新たな手法「リレーション採用」を説明した。

◆面接で話に脚色をしてしまうことについて大学4年生の41.5%、社会人2年目の43.0%がそう思う・どちらかと言えばそう思うと回答

◆企業側は自社をよく言うことが多く、信用しにくいことについて大学4年生の60.5%、社会人2年目の58.1%がそう思う・どちらかと言えばそう思うと回答

◆大学4年生で内定に「満足」と回答したのは3年時に活動開始した人87.6%に対し、4年時に活動開始した人は69.0%

◆社会人2年目で内定に「満足」と回答したのは3年時に活動開始した人65.4%に対し、4年時に活動開始した人は50.0%と、3年時に活動を開始した人ほど満足度が高い傾向

◆大学2年生以前から企業のことを知る機会があれば就職活動に役立つかについて、大学2年生67.5%、大学4年生70.5%、社会人2年目69.4%が、そう思う・どちらかと言えばそう思うと回答各世代、同程度に企業のことを知る機会があれば就職活動に役立つと考える層がいることが分かった

◆「働く」ことについて、イメージが持てていないかについて、大学2年生の55.7%がそう思う・どちらかと言えばそう思うと回答

新たな採用手法「リレーション採用」とは

この調査結果で、大学1・2年生の時に企業・社会に繋がる機会が少ないこと、働くイメージや企業のことがよく分からない状態、つまり自己理解・企業理解の不足が課題であることが分かった。

これらは満足度の低い就活・採用につながる。このような課題を受け、インタツアーは「リレーション採用」という概念を掲げてサービスを展開中。

「リレーション採用」は早いタイミングで学生と企業の間に生まれた接点から長期的な“つながり”を通して入社意欲を醸成し、より本質的な相互理解を促す採用手法。

企業は学生に対し、時間をかけて、働くことや社会・会社を知る機会を提供し、対話を重ねることでエンゲージメントの高いつながりを育むことができる。

大学1・2年生からの関係維持によって、企業と学生が本音で向き合う時間をつくり、相互の理解不足による内定辞退や、ミスマッチによる早期退職のリスクを軽減できる。

採用のパラダイムシフト

続いて、Googleで人材開発、組織開発等に従事したプロノイア・グループピョートル・フェリクス・グジバチ代表取締役が登壇。「慣例の新卒採用が好ましくない理由」に関して説明した。

「会社と個人の接点となる「採用」のパラダイムシフトを説明する前に、なぜ今働いているのかを考えていただきたいです。仕事は収入を得る手段、遊び、成長機会、自己実現のためのものでもあると思います。

10年~20年で世代が変わりますが、生き方や働き方のパラダイムは世代によって大きく変化します。われわれの現時点の働き方に大きく影響を与えている3つのパラダイムをご紹介します。

1930年代―――産業革命・集約労働:とにかく効率化を優先する。自分たちの仕事が社会に与える影響などを深く考えることなく手を動かし、せっせと働いて家計を支えることが美徳

1980年代―――大量消費・大量生産:裏側で誰が苦労しているかは考えない。楽しいもの、美しいもの、かっこいいものを自分の周りに集めることが美徳

2020年代―――社会価値起点:裏で誰が苦労しているか、その仕組みがどう回っているかが大事。現実にあえて目を向けて、その解決に向き合うことが美徳

……世代ごとに仕事や家族の優先順位や生き方、娯楽のスタイル、学び方は完全に違いますし、もちろん採用の違いも見えてきます。仕事を通して自己実現をすることは望ましい使命です。

まずは自己認識をすることが大事で、自分が何を大切にしていくか、どのような働き方が望ましいのか、自分が何を信じているのかを見極めた上で、自己開示し、自己表現で自分にしかない価値を表現しながら、それを世界にもたらしていくのが自己実現までの流れです。

また、経済や会社の働き方の形は完全に新しくなってきました。例えば、ものづくりではなくプラットフォームによる仕組みづくり、利他主義な世界、オープンな組織などは新しい形式として会社の形になってきていますが、いまだに採用は古い形式で行われています」(ピョートル代表)

個人のキャリアと業務パフォーマンスの両立

「個人のキャリア(TAKE)と組織の求める業務パフォーマンス(GIVE)を両立させることが大事です。リレーション(関係と関係性)という、どのような人間関係を構築して会社に入るか、役割分担をどのようにして会社に入るかは非常に大事です。

コロナ前だけではなく現在も会社の意図(Their Intention)はありますが、ワークフォースに流されている若者は自分の意図(My Intention)を強くしてきています。

若者の生き方、働き方、価値観、信念、期待がはっきりしていますが、それらに対して会社がまだ準備できていない状態です」(ピョートル代表)

採用の再定義

「採用は根本的にマーケティングです。どのような人を探しているか、組織の中にどのようなイノベーターが必要なのか特定した後で、SNSを駆使しながら、世界のタレントネットワークや新しいタレントのコミュニティをいかにつくっていくかがポイントです。

新卒採用も中途採用も同じですが、できるだけコミュニティのユーザーを多くし、ユーザーとともに新しい考え方、価値観、期待を理解しながら採用につながる機会をつくっていくことが大事です。

正社員でも副業でもフリーランサーでもさまざまな形でコミュニティと関われると思いますので、意図を持って「採用」という言葉を使って、採用の本質的な意味を見極めていただきたいです」(ピョートル代表)

学生は社会との接点が少ないのか

続いて、ピョートル代表と作馬代表が「これからの新卒採用と就職活動のあり方」についてトークセッション。

作馬代表:学生は社会や会社との接点が少ないため、会社との距離感がつかみにくいのではないかという課題が浮かび上がりました。ピョートルさんは比較的意識の高い学生との接点が多いと思いますが、一般的な学生についてどのような印象がありますでしょうか。

ピョートル代表:一般的な学生は多様ですが、3つのパターンがあると考えています。1つ目は、自己認識が低いことです。日本の学生は自己認識が低い傾向にあります。EU、アメリカ、アジアの大学生は教育制度の中で自己認識や自己開示を大切にしている国が多く、自分が何者か、何を大切にし、何を正しいと思えるか、何を期待しているかなどを表現していく中で、だいたい10歳の時にアイデンティティが構築され始めます。日本の大学生の皆さんに、まずは自分が何者であるのか、何のために生きているのか、何のために働いているのかを考えていただきたいです。2つ目は、社会や会社の業界、専門領域への理解が不足していることです。様々な会社の選考や興味のある領域によって学ぶ機会があるので、自分の周りで経済がどう回っているか、それによって自分の採用機会がどのような影響を受けるのかをまず知り、自分が何者でどのような価値観を持っているかを見極めた上で、会社や専門領域に向き合うべきです。3つ目は、自分の周りに機会があふれていることに気づいていないことです。人気な会社に皆が流されていますが、実際によく見れば自分に合った職場は人気な会社よりも多いです。中小企業でも「スモール・ジャイアンツ」と呼ばれる面白い会社もあります。様々な生き方の選択肢がありますが、それに気づいていません。

作馬代表:ピョートルさんに発表いただいた自己認識や自己開示をまず自分の中で持ち、それを持つためには周りの人々との関係性の中で自分がどこに置かれているのか、何を大事にしたいのかなどで距離感を測っていくことが大事ですね。

新卒一括採用は意味がないのか

作馬代表:調査でも意見として挙がっていましたが、会社も学生もお互いに本音を言わずに自分を偽って見せ、マッチングが行われているのが現状です。ピョートルさんは海外の様々な企業の採用や組織の支援をされている中で、現在の企業が行っている新卒採用の手法についてどのようにお考えでしょうか。

ピョートル代表:マクロ経済の仕組みから見ると、新卒一括採用は意味があると思います。マクロのレベルで何百~何千人を同じタイミングで採用して同じ研修を行うの、1930年代の産業革命のパラダイムを通じてみれば、それは非常に意味があるかもしれません。しかし、多様性や複雑性が増すとわれわれの産業の形が変わっていきますし、無くなっていく中で0から1の新しい価値を生み出す人を集めるとしたら、同じタイミングで学生に同じリクルートスーツを着てもらい、同じ面接を通じて採用していくだけでは、通用しなくなってきました。タイミングがあり、その中で意思決定をしなければならないという個人にとってのメリットもありますが、そのメリットを乗り越えてさらに自己認識を深めて、経済、業界、会社などを深く知った上で、それに合わせて適切な形で会社と接していくことが大事です。できるだけ早い段階で社会との接点をいかに増やしていくかがポイントです。その接点がマネタイズされるようなアルバイトでも良いです。知るというのは、まず一つ目のステップだと思います。

作馬代表:新卒一括採用は意味がないというよりは、タイミングや企業のステージ、採用の目的に応じて採用の手法を変えていく必要がありますね。今ままでは新卒一括採用しかありませんでしたが、今後は新たな選択肢として様々なトライ&エラーを繰り返しながら自社が求めることや、あるいは学生にとってどういうところが良いのかなど、自己と他者を知った上で判断していくことが大事だと思います。

ミスマッチが少ない採用活動とは

作馬代表:学生が会社と良い距離感を保つことができ、ミスマッチが起きにくい新卒採用はどのようなものだとお考えでしょうか。

ピョートル代表:大学生側は仕事を通じて収入を得るということを企業に入る前に経験することが大事です。その次に特定の企業に入り、特定の企業文化や領域、あるいは特定の職務で自分が輝けるかどうかの確認も重要です。産業心理学者のジョン・ワナウス氏が1970年に提唱した採用理論「RJP(RealisticJobPreview)理論」をご紹介します。RJPは「現実的な仕事情報の事前開示」という意味で、企業が行う採用活動において求職者に対して開示する情報のことを指します。候補者として入る会社の業務や役割を事前に知っておくことによって、次の4つの効果が得られるとされています。

1 セルフ・スクリーニング効果:候補者として入ろうしている会社やそこで行う業務が向いているかどうかの判断ができます。

2 ワクチン効果:入社後のショックを軽減させます。期待していたこととまったく異なるということはなく、自分の仮説を確認できたり確かめたりすることもできます。

3 役割明確化効果:入社後に具体的に何を求められていて、どういう期待をされ、どういう風に評価をされるのかを知った上で入社するため、自分の役割や期待を明確にすることができます。

4 コミットメント効果:セルフ・スクリーニングをし、ある程度のワクチン効果を通じて自分が求められているものを知った上で入社すると候補者側のコミットメントが増します。

作馬代表:特に新卒採用活動、就職活動においては、ピョートルさんがおっしゃっていた役割明確化効果とコミットメント効果をイメージして会社に入るのはなかなか難しいと思います。それによって入った後にショックを受けて辞めてしまう層が一定数いるのはずっと変わらないが現状かと思います。一方で仕事の体験を通じてこれらを把握するのは物理的に難しいこともあるので、学生の想像力を働かせて仮説を立てられる環境を整えていくことも企業の対応として大事だと思います。

ピョートル代表:補足すると採用はマーケティング・PRであり、情報が適切でなければ逆効果を招いてしまいます。例えば採用ページなどで自社を大きく見せると、実際の入社後に候補者がギャップを感じ、早期退職につながることもあります。

作馬代表:大学生は社会や会社について知る時間や考える時間を取っておくことが大事ですね。3年生になっていきなり始めるのではなく早ければ早いほど良いですね。

新しい新卒採用サービス「インタツアー」

インタツアー(https://intetour.jp/)は、学生と企業がインタビューやリスナーという手法で学年問わず接点を持てる新しい新卒採用サービス。

選考ではない関係性のなかで、企業と学生が出会い、コミュニケーションし、そこからアウトプットされる各種のコンテンツ(感想・レビュー・動画など)は、SNSなどを通じて多くの学生に配信される。

また、接点をもった学生に対しても継続的な情報発信によってつながり続けていくのが特徴。

インタビューからはじまるリレーション採用プラットフォームとして、「インタビュー・コンテンツ・SNS発信で母集団を形成」「企業の魅力を学生の状況に応じて最適なタイミングで発信し志望度醸成・歩留まり改善」「集まった学生の志望度を独自ツールで可視化」といった採用マーケティング各種機能を提供し、新卒採用を支援している。

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