人材不足、高齢化、機械化の遅れによる非効率な業務体制といった多くの課題を抱えている製造・物流業界。こうした社会的課題を解決するべく、BPO(業務委託)事業を手掛ける綜合キャリアオプションが「人×ソリューション」をテーマとした3つのサービスをリリースした。

作業者と管理者をARでつなぐ「ShareSight」

1つ目は、ARグラスを活用した「ShareSight」サービス。ARグラス(以下、ARG)をかけた作業者の視界を、PCやタブレットなどを使って管理者と共有できるシステムで、ARGとともにそれを使用する作業者の派遣も同時に行えるのが同社の強みだ。具体的には、ARGを通して共有された作業者の視界に、管理者が文字や図形をリアルタイムで書き入れて遠隔指示をしたり、作業マニュアルの動画を視界の中で再生させたり、といった使い方が可能だ。

ShareSightの活用シーンは幅広い。物流倉庫で仕分けをする際、荷物に貼られた識別コードで配送エリア等を判断するが、ARGを装着した作業者の視界にそれらのコードが映ると、AIが自動で識別して仕分けを的確に指示してくれる。すでに導入している企業のなかには、仕分けミスの発生が導入前より半減した例もあるという。また、音声入力機能、十数か国の言語に対応した自動翻訳機能も搭載。日本語でのコミュニケーションが難しい外国人労働者への指示も円滑に行うことが可能だ。

人とロボットが協力し合う「SC CAPION」

2つ目のサービスが、ロボットを活用した「SC CAPION」。本来、工場や倉庫に勤務する作業者は、組み立てやピッキングなど判断を必要とする業務に従事するべきだが、実際には多くの部品や荷物を搬送しなければならず、時間のロスと労働力の分散が課題になっている。同社はそこに着目し、「人とロボットがそれぞれ得意な作業をする」という概念のもと、繰り返し発生する搬送作業をロボットに、組み立てや荷物の積み込みは人が担うことを目的としたサービスだ。

同社は上海のロボットメーカーKeenonロボティクスと、京都のロボットメーカーKeiganの代理店として、主に飲食店などで導入されている配膳ロボットを物流・製造の現場に導入することを提案。これらのロボットは小回りが利くのが特徴で、工場や倉庫のような広くて入り組んだ場所で真価を発揮する。100キロを超える大きい物品であればフォークリフトなどが向いているが、「機械に積み込むほどではないが人力では負担が大きい」という数十キロ程度の部品を運搬するにはロボットが便利だ。料理をこぼさず運べる配膳ロボットなら、わずかな衝撃も避けたい半導体などの精密機器も安心して運搬できる。

人材採用にかかる負担を大幅減「ヒトルク」

3つ目のサービスは、独自に開発した採用システム「ヒトルク」。同社の持つ人材管理のノウハウを活用した一元支援サービスで、派遣労働者の多い物流・製造現場において、煩雑になりがちな人材採用や事務処理を一括で支援する。

ヒトルクは、同社が契約している200社超の派遣会社に一斉発注できる独自システムを採用しており、導入すれば最短1週間で数百名規模の人材採用が可能。派遣会社ごとに契約を結び、それぞれ異なる契約事項やフォーマットで事務処理を行う手間がなくなり、採用工数を大幅に減らしながら採用人数を増大させることができる。

AIによるシフト作成、人員充足率レポート作成、勤怠と紐づけた請求書発行などの業務はすべて自動化。また各現場の発注先や金額をダッシュボードにして可視化し、本部がリアルタイムで把握することができるため、外注比率の管理等も適正に行うことができる。繁忙期・閑散期の人材採用に柔軟に対応できる点も大きな特徴だ。

綜合キャリアオプションの神保光路郎副社長は「製造・物流業界ともに大手企業がフォーカスされがちだが、その大手企業に紐づく多数の中小企業が業界を支えている。我々のサービスは大手から中小まで導入しやすいよう設計しており、今後も総合人材会社ならではの知見を活かして社会的課題の解決をしていきたい」と語る。同社の取り組みが、製造・物流業界に山積する深刻な課題を解決する一助になることを期待したい。

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