自分が死んだら、いま使ってるログインパスワードや、パソコンやスマートフォンなどに保存されたデータ、インターネットサービスのアカウントなどのデジタル遺品が、残された人たちを困らせたりしないか―――。
超高齢化社会のまっただなかにいる日本で、こうしたデジタル終活も、もはや他人事ではない。
―――そんないま、エヌエヌ生命保険が興味深い調査結果を公表した。
中小企業経営者の夫婦を対象に調査
エヌエヌ生命保険は、11月22日「いい夫婦の日」を前に、全国の既婚の男性中小企業経営者 250名と、中小企業経営者を夫に持つ妻 250名を対象に、「デジタル終活」に関する意識を調査し、結果を公表。
結果をまとめるとこうだ。
1)「デジタル終活を知っている」25.6%、「デジタル終活で何をすべきか知っている」のは11.4%、「既にデジタル終活をしている」のは3.0%のみ
2) 自分の持っている「スマートフォン」に、配偶者に内容を見られたくないデータ等が保存されている夫、および妻は32.8%、「パソコン・タブレット」においては夫18.8%、妻9.6%
3)配偶者に最も見られたくないデジタルデータは、夫も妻も「ショートメッセージアプリ(LINEなど)」(夫9.6%、妻14.8%)
4)配偶者に秘密にしていることがある夫47.6%、妻32.0%
5)配偶者よりも先に亡くなりたいと思う夫58.8%、妻31.6%
6)もし、配偶者より先に亡くなったら、夫が妻にしてほしいこと1位は「遺産の整理」(44.0%)、妻が夫にしてほしいこと1位は「自立した生活」(44.4%)
7)「終活」をしようと思う42.4%、既に「終活」をしている5.4%
8)夫婦どちらかが亡くなった後の将来について、配偶者と普段から話し合いをしている22.2%。もし、配偶者に万一があった場合、その後自分に何をしてほしいか知っている18.0%
9)自分に万一があった場合、経営する会社をその後どうすべきか、妻に伝えている夫27.6%、夫に万一があった場合、夫の会社をその後どうすべきか、夫に確認している妻25.2%
―――以下は、エヌエヌ生命保険がまとめた各項目の調査結果と考察だ。
(1)「デジタル終活を知っている」25.6%、「デジタル終活で何をすべきか知っている」のは11.4%、「既にデジタル終活をしている」のは3.0%のみ
(1)「デジタル終活を知っている」25.6%、「デジタル終活で何をすべきか知っている」のは11.4%、「既にデジタル終活をしている」のは3.0%のみ
経営者と経営者の妻各250名に、「デジタル終活」を知っているか聞いたところ、「はい」と回答したのは全体で25.6%でした。
また、「デジタル終活」で何をすべきか知っているか聞いたところ、「はい」と回答したのが全体では11.4%でした。
25.6%の人が「デジタル終活」を知っていると回答したものの、何をすべきかまで知っているのはその半数以下だということが分かりました。
さらに、既に「デジタル終活」をしているか聞いたところ、「はい」と回答したのは全体でわずか3.0%でした。
(2)自分の持っている「スマートフォン」に、配偶者に内容を見られたくないデータ等が保存されている夫、および妻は32.8%、「パソコン・タブレット」においては夫18.8%、妻9.6%
経営者と経営者の妻各250名に、配偶者に内容を見られたくないデータ等が保存されているデジタル機器(スマートフォン、パソコン・タブレット)を聞いたところ、最も多かった回答は「ない」で、夫55.2%、妻60.8%でした。
その一方で、配偶者に見られたくないデータ等を保存しているデジタル機器を「スマートフォン」と回答したのは夫、妻とも32.8%でした。
また、配偶者に見られたくないデータ等を保存しているデジタル機器を「パソコン・タブレット」と回答したのは夫18.8%、妻9.6%でした。
(3)配偶者に最も見られたくないデジタルデータは、夫も妻も「ショートメッセージアプリ(LINEなど)」(夫9.6%、妻14.8%)
プライベートのデジタル機器(スマートフォン、パソコン・タブレット)を持っている経営者249名と経営者の妻243名に、その中にある、配偶者に最も見られたくないデジタルデータは何か(1つだけ)を聞いたところ、夫、妻とも「何もない」が最も多く、夫57.8%、妻52.3%でした。
次いで多かったのは、夫、妻とも「ショートメッセージアプリ(LINEなど)」で、夫9.6%、妻14.8%でした。
(4)配偶者に秘密にしていることがある夫47.6%、妻32.0%
経営者と経営者の妻各250名に、配偶者に秘密にしていることがあるか聞いたところ、「はい」と回答したのは、夫47.6%、妻32.0%と、夫の方が15.6ポイント多い結果となり、夫の方が配偶者に秘密にしていることがある人が多いことが分かりました。
(5)配偶者よりも先に亡くなりたいと思う夫58.8%、妻31.6%
経営者と経営者の妻各250名に、配偶者よりも先に亡くなりたいと思うか聞いたところ、「はい」と回答したのは、夫58.8%、妻31.6%と、夫の方が27.2ポイント多い結果となり、夫の方が妻より先に亡くなりたいと思っている人が多いことが分かりました。
(6)もし、配偶者より先に亡くなったら、夫が妻にしてほしいこと1位は「遺産の整理」(44.0%)、妻が夫にしてほしいこと1位は「自立した生活」(44.4%)
経営者と経営者の妻各250名に、もし、配偶者より先に亡くなったら、配偶者にしてほしいことは何か聞いたところ、夫が妻にしてほしいこと1位は「遺産(金銭価値のあるもの)の整理」(44.0%)、妻が夫にしてほしいこと1位は「自立した生活」(44.4%)でした。
妻が夫にしてほしいこと5位「デジタル遺品(※)の整理」(22.8%)は、夫の場合は8位で20.0%でした。
(7)「終活」をしようと思う42.4%、既に「終活」をしている5.4%
経営者と経営者の妻各250名に、「終活」をしようと思うか聞いたところ、「はい」と回答したのは全体で42.4%でした。
また、既に「終活」をしているか聞いたところ、「はい」と回答したのは全体で5.4%でした。
(8)夫婦どちらかが亡くなった後の将来について、配偶者と普段から話し合いをしている22.2%。もし、配偶者に万一があった場合、その後自分に何をしてほしいか知っている18.0%
経営者と経営者の妻各250名に、夫婦どちらかが亡くなった後の将来について、配偶者と普段から話し合いをしているか聞いたところ、「はい」と回答したのは全体で22.2%でした。
また、配偶者に万一があった場合、その後あなたに何をしてほしいか知っているか聞いたところ、「はい」と回答したのは全体で18.0%でした。
さらに、配偶者と普段から話し合いをしているかの問いに「はい」と回答した人(111名)で、配偶者に万一があった場合、その後あなたに何をしてほしいか知っていると回答したのは58.6%(65名)でした。
一方、配偶者と普段から話し合いをしているかの問いに「いいえ」と回答した人(325名)で、配偶者に万一があった場合、その後あなたに何をしてほしいか知っていると回答したのは6.8%(22名)でした。
夫婦どちらかが亡くなった後の将来について、配偶者と普段から話し合いをしている人の方が、そうでない人よりも配偶者に万一があった場合、その後何をしてほしいか知っていると回答した割合が圧倒的に多いことも分かりました。
(9)自分に万一があった場合、経営する会社をその後どうすべきか、妻に伝えている夫27.6%、夫に万一があった場合、夫の会社をその後どうすべきか、夫に確認している妻25.2%
経営者である夫250名に、自分に万一があった場合、経営する会社をその後どうすべきか、妻に伝えているか聞いたところ、「はい」と回答したのは27.6%でした。
また、経営者の妻250名に、夫に万一があった場合、夫の会社をその後どうすべきか、夫に確認しているか聞いたところ、「はい」と回答したのは25.2%でした。
夫に万一があった場合に、夫が経営する会社について、夫婦で共有している人は3割弱しかいないということが分かりました。
伊勢田篤史 弁護士 が考察・解説
「故人のスマートフォンやパソコン・タブレットのログインパスワードが分からず、デジタル機器内にアクセスできない場合、会社の業務で必要なデータやネットバンキング等のサービスにアクセスできず、会社の事業活動に支障が生じる恐れがあります。
また、葬儀で必要な遺影写真や連絡先等のデータ、故人の財産に関する情報(ネット証券等の口座情報)にアクセスできず、遺族の事務負担が増大する恐れもあります。
そのため、上記のトラブルを予防することができる「デジタル終活」は、中小企業経営者にとって、必要不可欠な生前対策といえるでしょう。
中小企業経営者が「デジタル終活」としてやるべきことは、業務で使用しているデジタル機器のログインパスワードの共有です。
生前から共有しておく方法もありますが、エンディングノートやスマートフォンの「スペアキー」等を活用し、万一の際に、ログインパスワードを家族等に伝える仕組みを作ることも考えられます。
あわせて、ネットバンキング等の業務で使用しているサービスのIDやアカウントについても、万一の際に、共有できる仕組みを作っておくと良いでしょう。
一方で、本調査では、「見られたくないデジタルデータ」があると回答されている方が全体の3分の1程おり、ログインパスワードを生前から共有したくないという方も多いように思われます。
「見られたくないデジタルデータ」がある場合には、エンディングノート等で「中身を見ずに処分してほしい」とご自身の意思を明確に伝えるとともに、万一の際に遺族が必要とするデータ(遺影となる写真データ、友人知人の連絡先、ネット証券口座の情報等)を遺族と共有できるような対策をしておくと良いでしょう。
「社長である夫(あるいは父親)が突然亡くなったら?」というワーストケースを想定し、何をどうすべきかを、夫婦または家族で普段から話し合っておくことは重要です。
私が監修として参加している、中小企業経営者の妻に特化した情報サイト「つぐのわ」では、経営者の妻特有の疑問や不安に対応し、実践的なアドバイスや有益な情報を提供しています。ぜひ、本調査や「つぐのわ」を活用し、将来の不安を少しでも軽減していただけたらと願っています」(伊勢田篤史 弁護士)
「デジタル終活」のアドバイス
その1)スマートフォンやパソコン・タブレットのログインパスワードを共有しておきましょう
その2)見られたくないデータがある場合には、死後に家族にとって必要なデータをエンディングノート等に記載したうえで、
「中身は見ないでほしい」と意思表示しておきましょう
その3)とくに、中小企業経営者においては、ネットバンキングのID、パスワード等を共有しておいたほうが良いでしょう
経営者の妻のための情報サイト「つぐのわ」
経営者の妻のための情報サイト「つぐのわ」は、全国9,500名以上の中小企業経営者の妻が登録する事業承継情報サイト。
緊急事業承継監査協会の伊勢田篤史 弁護士 監修のもと、現経営者の突然の経営離脱・相続発生時における事前準備を促すことで、中小企業の円滑な事業承継を支援している。