実はいま、店頭で服を着せて展示させるマネキンも、環境に配慮した進化を遂げている。
従来のマネキンよりも二酸化炭素削減に貢献し SDGs に対応したマネキンを手がけるトーマネ(東京都中央区)は、茨城県常陸大宮市にある無形文化財「西ノ内和紙」を採用した和紙マネキン「Waltz」(ワルツ)を、6月の「環境月間」、6月5日の「環境の日」に先がけ、この5月から受注生産をスタートさせた。
トーマネの和紙マネキン「Waltz」(ワルツ)は、従来のFRP(強化プラスチック)を素材とした同社製品と比較し、約80%減の軽量化を実現。いまなぜ和紙マネキンが注目されるのか。
トーマネの和紙マネキン「Waltz」(ワルツ)のアドバンテージ
◆ナチュラルな素材―――茨城県常陸大宮市にある無形文化財「西ノ内和紙」(那須楮 100%)を素材として開発した製品。
◆従来製品との違い―――和紙を素材とすることにより、重量を(同社比)80%減の軽量化に成功。
◆労働環境への配慮―――軽量化により、輸送コスト・組み立てに関する重労働・労働時間の削減にも貢献。製造の過程で有機溶剤を使用せず、研磨の必要性もないため粉塵も発生しない。
◆リサイクル―――成形した「Waltz」は、再び和紙に戻すことができる。
◆地域貢献―――「Waltz」は「西ノ内和紙」を素材として使うことで、「西ノ内和紙」の需要を生み出し、認知を拡大することで、無形文化財を後世に残すためのきっかけや、地域を盛り上げることができる。
有機溶剤を不使用なため、作業者の労働環境を改善
現状のマネキン人形の多くは、ガラス繊維とポリエステル樹脂の複合素材である FRP(強化プラスチック)でつくられている。
廃棄方法として、金属部分はマテリアルリサイクルとして、FRP部分はセメント製造時に燃料・原料として循環している。
しかし、製造工程で有機溶剤の使用は不可欠。有機溶剤は揮発性が高く、蒸気になると作業者の呼吸を通じて体内に吸収されやすく、油脂に溶ける性質もあるため、皮膚からも吸収されやすいという特質がある。
有機溶剤を取り扱う職場で就業する作業者にとっては、中毒性やシックハウス症候群などの疾病を引き起こす弊害もある。
「Waltz」の製造過程では、和紙の他ナチュラルなものを基本材料とし、有機溶剤の使用はいっさいなし。作業者は安全な労働環境のなかで製造が可能に。
超軽量&脱プラスチックで他製品への応用や異業種への展開も
またリサイクル観点では、成形した和紙造形を再び和紙に戻すことが可能。
和紙に戻すことができるため、従来の FRP を素材としたマネキンの廃棄方法とは違い、可燃物として廃棄できる。
―――トーマネは現在、「Waltz」の製造には手漉き和紙という供給とのバランスも調整する必要があるため、受注生産で対応。今後は、量産体制を整え、「Waltz」を増産していく構え。
また同社では、和紙造形に着目し、この造形技術において特許を取得。同社技術と型があれば、さまざまな形の造形制作が可能なため、マネキン人形に限らず、さまざまな形の製品を開発していくという。
さらに「Waltz」を普及させることで、無形文化財「西ノ内和紙」の雇用・文化の継承を支援していくという。